第40話 サンダーバードの群れと新種
すっかり山の寒気も収まった。山にも緑が色付き、
俺の何気に侘しい食事環境も改善され始めた。
バトルビートル達カブトムシ一族も殆どが冬眠から目覚めた。
そう、春が訪れたのだ。まだ肌寒いが少しずつ暖かくなってきている。
『すっかり、春って感じになってきたな』
『マロ~。もう一度冷やしてやるマロ』
『グレッシャー、それはやめよう』
『多少暑くても、平気マロ』
『無理はするなよ……ん?』
龍眼が彼方から近付いてきているものを捉えた。
……翼に稲妻が走っている鳥……?
とりあえずマザーアントのところへ行って聞いてみるか。
マザーの巣は、キラーアント達の活動が活発になってきたことで
じわじわとその規模を大きくしている。
今じゃ女王の間に行くのも一苦労だ。
まぁ、道は分かっているから辿り着けはするけどね。
『おや。アス様ですか。いかがしましたカ?』
『マザー。ちょっと聞きたいことがあってな』
俺は龍眼で見た稲妻が走る鳥について聞いてみた。
『ああ。"サンダーバード"ですネ』
『サンダーバード?』
『はい。春の訪れとともに、群れを率いて移動してくる鳥の魔物デス』
『どこへ行くんだ?』
『サァ、そこまでは流石に分かりマセンが、移動の際に
サンダーバードが落雷を落として地上に被害が出ることがアリますネ』
『……それ、大丈夫なのか?』
『サンダーバードたちは、山には来ないで
人間の街の上をいつも通過していきマス。なので大丈夫デショウ』
『……ならいいんだけど』
『……まぁ、アス様ならサンダーバードだって倒せるかもしれませんヨ?』
『冗談じゃない。相手は飛んでるんだから不利すぎるよ。
飛行手段があるのなら、話は変わってくるかもしれないけどさ』
『そうですネ。確かに私達の中デ飛べるのはカブトムシ一族くらいデスシネ』
『それも長時間は無理だし、あまり高い高度も飛べないからなあ……』
空を飛べる仲間がいた方が良いかもしれんな……。
もしああいう鳥の魔物とかに襲われたら対処が難しそうだ。
その後サンダーバードと後方について来ていた
"スパークコンドル"なる魔物の群れを遠くから見送った。
いやーあの数はダメだわ。軽く数百匹はいるわ。
しかもスパークコンドルCランクだよ。サンダーバードはAランクだし、
あれが街の上を通過して、しかも時折落雷が起こるって
立派な災害だな。人間達は今頃ピリピリしてるんだろうなぁ。
春一番からご苦労様としか言いようがないけど。
まぁ、冒険者とやらが何とかするんだろう。多分。
あ、あの鉄のワイバーン見覚えがあるな。
確かミスリルにボコられてたワイバーンだな。
鑑定すると、あんなんでもBランク何だよなあ。
サンダーバードを発見したらすぐに退却していった。偵察かな。
あのワイバーンが出てるということは、地竜連れてた
あの冒険者達もいるってことなんだろうな。
まぁ、サンダーバード相手は流石に荷が重そうだけどな。
……ん?キラーアント、どうした?
……山賊が大規模な移動を始めた?しかもより山深くに向かって?
そうか、サンダーバードに万一狙われたりしないように
山に籠るつもりか。ちょうどいい、狩り時だな。
フラードが街に行ってた間にも
山賊を討伐してたおかげでレベルは上がっている。
その甲斐あってあと少しでレベルが最大になれるからな。
……いい機会だからやるか。
というわけで、ちょっと行ってくる。
軽いノリで出かけたアス。だが彼は運悪く
スパークコンドルの群れに見つかってしまった。
『ああああ!!スパークコンドル、めっちゃ寄って来るッ!!』
「「「ギャァー!ギャァー!」」」
スパークコンドルは肉食で、魔力の質が高い肉を特に好む。
つまりアスはスパークコンドルにとって格好の獲物だった。
『これ、山賊どころじゃないな!
こいつらをとりあえず倒してこの場は離脱するしかない!』
スパークコンドルを"シャイニーレイ"を飛ばして撃ち抜いて倒す。
雷魔法は広範囲に拡散するようだから"シャイニーウォール"でしっかり防ぐ。
どうやら攻撃手段は魔法か突進ぐらいしかなさそうだな。
シャイニーレイで少しずつ確実に仕留めるか。
シャイニーウォールに隠れてチマチマと数を減らしていると
やがてスパークコンドル達は不満そうに雷魔法を放った後に
サンダーバードを追って去っていった。
『……ふぅー。行ったか』
いやはや、急に数十匹に囲まれたから焦った。
群れから微妙にはぐれた個体達だったっぽいけど
後からも少し来てたから、移動の道中で食料を得る役目だったりするのかな。
サンダーバード達は最初マザーに説明された時は渡り鳥かと思ったけど、
単に季節によって小規模的に移動してるだけだったりするんだろうか?
何にせよ、魔物の生体なんて謎だらけだし……考えるだけ無駄か。
そして残ったのは、数十羽のスパークコンドルの残骸と魔石だった。
これは後でキラーアントに運んでもらうとして……。
小腹が空いたから魔石を食べるか。むしゃり。……電気のピリピリが
何だか炭酸飲料を飲んでいるかのような感覚を思い出すな。
何だか懐かしい気分になりつつも魔石を食べる。そして……。
【条件を満たしました。
レベルが49から50に上昇しました。レベルが最大になりました】
キター!レベル最大だ!それと同時に
進化しなさいコールが頭に強く響くが、とりあえず家に戻ろう。
今ここで進化して万一変なのになったら
フラードとかフラードとかフラードとかにうっかり消されるかもしれない。
……ないとは思うけど。
とりあえず俺は一旦
家に戻ってキラーアント達にスパークコンドルの残骸の確保を頼んだ。
その後、フラード、マザー、ハイパーホーン、
グレッシャースライム、ミスリルら主要メンバーを集めた。
『はい、皆さん。本日はとうとう俺のレベルが最大になりました』
『『おおー!!』』
『ふむ、ということは……進化、か?』
『マロマロー』
『進化、ああそういえばそんなのありましたねー。
自分最後に進化したの400年は前なのですっかり忘れてました!』
『ミスリル……というかドラゴンの寿命の長さはすごいな』
『私なんぞ数万年前から生きとるぞ。
まあ、神龍は老いることはないのだがな』
……だから人間の姿が15歳くらいの少女なのだろうか?
……いや、変化は見た目の調整自由らしいから、関係ないか……。
とりあえず、全員に今から進化する趣旨を伝えた。
みんな興味津々、という感じで俺を見ている。
……ふぅ。さて、三度目の進化は、一体どうなっているのやら。
俺は意を決して進化先を表示した。
【進化先を選択してください】
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【進化ルート】
【ユニコーン】(ランク:A 備考:通常進化)
【ペガサス】(ランク:A 備考:通常進化)
【ペガサス・ネオ】(ランク:A 備考:突然変異)
【現在】
【アクアライトハクニー】(ランク:B)
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ちょっとまて、ネオって何だ。ネオって。
色々と突っ込みたいところだが、グッと堪えて一応、
一通りの魔物の情報を見よう。どれもAランクのようだし。
「ユニコーン」
Aランクの馬型の魔物。魔獣系。
額に大きな角を持つ。この角には強い癒しの魔力が含まれており、
難病への特効薬や解呪の薬として使われる。
角の利用価値の高さから乱獲され、個体数は少ない。
またこの角を介して同族と意思疎通ができるとされている。
性別問わず乙女を好むとされるが理由は解明されていない。
ダメだ、これ。人間に狙われる未来しか見えない。
しかも意思疎通に関しては念話で代用できそうだし。
とりあえず次だな。
「ペガサス」
Aランクの馬型の魔物。魔獣系。
背中に白い翼を生やした白馬の魔物。
プライドが高く、気性も荒い曲者だが自身が認めた相手は
その背に乗せ、空を駆けるとされる。
個体数が少なく、生態的な謎も多い魔物。
おお、飛べる、飛べるぞ!
……ただ、ネオが気になるよなあ。ネオって……。……鑑定。
「ペガサス・ネオ」
Aランクの馬型の魔物。魔獣系。
新種のペガサス。その生態は謎に包まれている。
今度は逆に情報が少ないっ!?……ふーむ。
新種の、ペガサス……か。ペガサスなら飛べることには変わりないはず。
そして今回もまた、突然変異か……。……覚悟を決めるか。
全身が光の繭に包まれていく。
肉体が一度魔力として分解されていく。
それは周囲の魔力をも取り込んで、新たな姿を形成していく。
フラード達が固唾をのんで見守ってくれているのを
内心喜びつつも、進化が終わりを迎える。
魔力で出来た光の繭も吸収され、そこから一匹の魔物が姿を現す。
俺は後ろを振り向いて、その姿を認識して驚いた。
そしてそれは、フラードさえも同様だった。
『……ま、待てアス。な、なんだその魔物は』
『……知らんがな』
ペガサス・ネオ。
それは、全身が白く、背中に翼を生やした馬の魔物。
そこまでは通常のペガサスと同様だった。
しかし……たてがみや尻尾は金色で、翼は鈍く、蒼い光を放っていた。




