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第38話 フラードさんのスパイ大作戦 その3

 冒険者になるための試験として、ある依頼を受けてみたフラードさん。


 依頼内容はペットのお世話。どんな生き物なのだろうと思いながら

 フラードは依頼主の家へと向かう。


 依頼主の家の場所を身振り手振りで必死に教えた

 受付の女性の苦労も実ってフラードは迷わずに家まで辿り着けた。



「おーい」



 トン、トン。めっっっっちゃ軽く扉をノックした。

 そうしないと粉砕してしまう恐れがあるからだ。


 少しして、扉が開かれる。女性のようだ。



「はーい。何かご用ですか?」


「ん」



 フラードは女性に依頼書を渡した。

 依頼書にはギルド入団試験の件も含めて子細が書き加えられている。



「ああ、依頼で来たんですね。ありがとうございます」


「ペットのお世話、でいいか?」


「ええ。でも大丈夫かしら……」


「何か、問題でもあるのか?」


「……あの子、気難しい子なんですよね」


「……まぁ、やれるだけやってみよう」


「そうですね。では、どうぞお上がりになってください」



 フラードは女性に案内されて家にお邪魔した。

 この女性は普段仕事で忙しく、中々ペットの相手をできないので

 面倒を見てくれる人がいたらと思い、依頼を出しているらしい。



「この子が私の自慢のペットのスラちゃんです!」


「……スライムではないか」


「はい!可愛いでしょう?」



 フラードにはよく分からない世界だった。

 スライムがうねうねしながらフラードを見つめて(?)いる。


 女性はスライムを抱き上げて、話しかけている。



「スラちゃん、今日はこの方があなたの面倒を見てくれるからね」



 スライムはぶるぶると震えた。

 子供が「いやっいやっ!」と拒絶してるかのような震え方だ。



「す、すみません。スラちゃん、そんなに嫌がらないで……?」


「……どれ、貸してみろ」



 フラードがスライムを抱き上げた。

 と、同時にスライムの震えも限界になり、

 フラードの腕から抜け出そうと暴れ出した。


 因みに暴れている理由はフラードの魔力の濃密さに

 怯えているからであるが、フラードさんはその辺の察しが悪かった。

 魔物は人間よりも魔力に敏感なのだが……。

 


「元気がいいな」


 

 この始末である。スライムが必死にもがいても、抜け出すことができない。

 いくらフラードが人の姿を取っていて弱体化していても

 龍としての余りあるパワーがスライムを強引に抑えつけていたのだ。


 女性は尋常じゃないスライムの暴れように

 目を白黒させているものの、「仕事に出かけなければいけない」

 と、フラードにお世話に関する細かい指示を伝えた後に

 荷物を持って足早に家を去って行ってしまった。


 そしてスライムは脱出を諦めて、

 フラードの腕の中でデローンとしていた。


 フラードはスライムを下ろして、念話で語りかけた。



『私は依頼でお前の世話をしに来た者でフラードと言う。

今日一日、よろしくな』


(!??)



 唐突に理解できる言葉が響き、スライムが狼狽した。

 

 フラードは念話についてスライムに説明し、色々聞いてみる。



『お前は何故ここで暮らしているのだ?』


(むかし。ごしゅじん、ぼくたすけた)


『ほう、あの女がか?』


(まものにおそわれた。くすりをくれた。おれいしたい)


『殊勝な心掛けだのう』


(きみ。にんげんじゃない。なにもの?)


『ふむ、やはり魔物には分かってしまうか。

魔力の質が人間のものとは違うからな……』


 

 人間と魔物では魔力の性質が異なる。

 ただし、それを感じ取れるのは魔力その物とも言える魔物だけだ。



『私の正体は実は龍なのだ』


(りゅう!?ごしゅじん、たべちゃだめ!)



 そう言ってスライムが跳ねて果敢にもフラードに体当たりをかました。

 痛くも何ともないが、微笑ましいのでフラードさんは甘んじて受けた。



『お前はあの女が大好きなんだな』


(うん!いっぱいいっぱいすき!)


『そうか。お前は大切にされてるんだな』


(おいしいごはんくれるし、いっぱいだきしめてくれる!

ごしゅじん、あったかくて、あんしんするの!)


『なら、精一杯守ってやらねばな?』


(うん!)



 いつの間にか篭絡されていたスライムは、

 フラードとしばらくお喋りしたり、ボールを転がして遊んだりして過ごした。

 こうして彼らはマッタリしつつも、気付けばお昼ご飯の時間になった。



『もうこんな時間か。そろそろ食事時だな』


(ごはん!ごはん!)


『まあまて、確かあの女が言っていたな……。

台所にお前の食べ物があるんだったな?』



 フラードは台所に向かう。

 すっかり打ち解けたスライムを肩に乗せて。



『……どれだ?お前の食べ物は』


(んーと。これ!)



 スライムが示したのは、何か文字が書かれた箱だった。



『この箱、何て書いてあるのだろう?』


 

 フラードが疑問を念話で流していると



(んーと。す……ら……ちゃ……ん……の……え……さ。

"すらちゃんのえさ"だって!)

 

『スラちゃん、文字が読めるのか?』


(うーん。むずかしいのはわかんないけど、よめるよ!)


『ほう。……なあ、一つ頼みたいことがあるんだが』


(なーにー?)


『私に文字の読み方を教えてほしい』


(いいよー。でもー、どらごんさんのすがたをみせてくれたらねー!)


『私の姿をか?』


(うん!どらごん、みたことないから、みてみたいの!)


『分かった。いいだろう』


 

 スライムの餌箱を取り、広めの部屋に移動する。


 スライムに箱の中の食べ物を食べさせつつ、

 フラードは一旦服などを脱いでいく。



「服を一々脱ぐのは面倒くさい……な」



 そして一通り脱ぎ終わったフラードは、

 変化を解除して元の姿へと戻る。二本の頭と尻尾を持つ龍の姿だ。



(すごーい!おっきー!)


『はは。お前はさらに小さくなったな』


(あたまがふたつあるねー?)


『『ああ。どちらも私だ』』


(どらごんさんすごい!)



 実際には頭が複数あるドラゴンはさほどいない。

 こうしてスライムの中でドラゴンは

 頭がたくさんあるという偏った知識が刷り込まれた。



『スライムよ、約束通り文字について教えてくれ』


『うーん。わかったー』



 一通り姿を見せ終わったフラードが変化を発動させて

 再び人間の姿に戻る。服なども装備し直した。


 その間に食事を終わらせたスライムに、さあ文字を教わろうと思った矢先

 「ねむーい。おひるねー」と昼寝されてしまった。


 肩透かしを喰らった気分になったが、気を取り直して

 スライムが食い散らかした食事の後片付けを行った。


 その後、目を覚ましたスライムに数時間ほど文字を教わった。

 スライムでも分かる人間語講座なので簡単に覚えれた。


 そして、時刻も夕方になろうかというところで女性が帰ってきた。

 「ただいまー。スラちゃん、ちゃんと良い子にしてたー?」と

 家の入口の方から声が聞こえてくる。



(ごしゅじん、かえってきた!どらごんさんはやくはやく!)


『分かった分かった』



 スライムにせがまれたフラードは

 スライムを抱き上げて女性を出迎えた。



「まあまあ、スラちゃんが大人しそうに抱き上げられてる!」


「そんなに驚くことなのか?」


「ええ。この子、私以外の誰かに抱かれるのを

嫌がって抜けだしたり、暴れ出したりしちゃうんですよ」


「そうなのか?とても良い子だと思うが」


「まあ!そう言っていただけたのは初めてです!」



 フラードは「お前、普段どういう態度をしているんだ?」という目線で

 スライムを見つめた。スライムはぷるぷる震えていた。

 

 

「スラちゃん、楽しそうにぷるぷるしてますねー」



 こっちの飼い主は飼い主で呑気な奴だな。とフラードは思った。

 その後、女性に評定が付けられた依頼書を受け取り、スライムと別れる。



(どらごんさん、またあおー?)


『それができるかは、分からん。すまないな』


(えぇー!やだやだ!)


『……じゃあ、これを私だと思って大事に持っておけ』


(わ!うろこだ!うん、だいじにするね!)



 そうしてフラードはスライムと別れた。


 ……後にスライムは"ドラゴスライム"という

 上位竜に匹敵する力を持つスライムに突然変異を起こすのだが、

 その原因は明らかにされていない。


 その後フラードはギルドに戻り、依頼を達成の報告をした。



「凄いですね!評定が最高評価のSランク評価ですよ!」


「すごいのか」


「はい。依頼主が大満足、という評価を出したわけですからね。

これなら、文句なく入団試験、合格です!おめでとうございます!」



 因みに合格基準はBランク以上の評定を貰う事。

 C以下の評定だと不合格なのだ。


 フラードは受付の女性に待つように言われ、

 何やら女性が色々と準備をしている様を眺めていると、女性が戻ってきた。

 その手には、一枚のカードが握られている。



「こちらが冒険者ギルドのギルドカードとなります。

依頼を達成した時や、身分証明の際にこのカードを提示してください。

冒険者は最初はFランクから始まりますが、

実績を積むことでランクが上がっていきます。

ランクが上がると受けられる依頼も増えますから、頑張ってくださいね」


「ふむ。カード……」



 フラードの神龍眼はこのカードには

 幾つもの魔法陣が仕込まれていることを見抜いていた。


 偽造防止、一部情報秘匿、自動浄化、破損防止等の魔法が

 このカードには仕込まれているのだ。

 

 その後、依頼報酬である銀貨1枚と銅貨5枚を受け取った

 フラードはギルドを後にした。


 寝る場所はどうしようか。人間は宿という仮の寝床に泊まるというのは 

 アスから事前に聞きはしたのだが……。


 面倒だからその辺で寝てもいいかなあ?

 なんて思っているフラードさんであった……。


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