第31話 クリスタルケイブ攻略!
……うぐぐ。ぜ、全身が痛い。
ゲホッ。ゲホッ。ひどい砂ぼこりだ……。
けど、少し頭が冷えたよ……。
辺りを見渡すと、ボロボロになっていた
スーパーホーンが近くに転がっていた。
スーパーホーンを起こしてやり、もう一度治癒魔法をかける。
そうしている間に砂ぼこりが無くなり、視界が戻ってくる。
そこには、全身がヒビ割れ、所々消し飛び、
片膝を付いているものの未だ健在のミスリルゴーレムがいた。
鑑定するとHPもMPも殆どが空っぽになっている。
何らかの方法でMPをHPに回したのだろうか。
しかし……あの身体ではもはや動くことはできないだろう。
俺達はフラードと、幾つか氷柱が折れたらしく再生中の
シャープと合流し、ミスリルゴーレムを再び見据える。
『……勝負アリだ』
俺はミスリルゴーレムに念話を伝える。
『お前は膝を付いたが、俺達はまだ立っている』
「……」
ゴーレムが静かに頷いた。何だか潔い。
俺は"シャイニーレイ"を。スーパーホーンは"鎌鼬"を。
シャープは「氷柱弾」を。フラードは"ダークジャベリン"を。
各々の攻撃をミスリルゴーレムに一斉に放った。
そして、ついにミスリルゴーレムは倒れ、沈黙した。
その姿は、ゴーレムなのに何故だか満足気にしているようにも見えた。
ミスリルゴーレムを倒したことにより、レベルが上がる。
【条件を満たしました。レベルが26から32に上昇しました】
……終わった、か。
俺は思わず、息をついた。
……イテテ。突進かましたところがズキズキする。
俺は自身の身体に治癒魔法をかける。
【条件を満たしました。
スキル「治癒魔法:LV2」が「治癒魔法:LV3」に上昇しました】
……ふう。スキルのレベルアップも含めて、得るものは大きかったな。
シャープとスーパーホーンが殴り飛ばされた瞬間は、本当にヒヤッとしたが。
ふと、シャープとスーパーホーンを見ると、
二体とも、光に包まれ始めていた。
これは……。
『……進化か』
フラードが呟く。そうだ、これは進化だ。
ミスリルゴーレムとの戦いは、シャープ達のレベルも大幅に上げたようだ。
光の繭に包まれ、魔力の性質その物が変容していく。
そして、やがて光の中から新たな魔物が誕生する。
スーパーホーンは、"ハイパーホーン"という
強く黒光りする一回り大きなカブトムシになった。
シャープは、"グレッシャースライム"という魔物になった。
氷柱が無くなり、氷の塊のようになった。かなりデカい。
『ふむう。二体とも相当強くなったのう』
フラードも感心している。俺も同感だ。
ハイパーホーンはBランクで、グレッシャースライムはAランク。
特にグレッシャースライムになったシャープだ。
Aランクの魔物の強さは先ほど
ミスリルゴーレムでも嫌というほど味わった。
それが味方になったのだから、相応に心強い。
因みに羽バンドはもはや体内に取り込まれてしまった。
それでも装備判定になっているようだが……うーむ、なんかなぁ。
その後、シャープ……ええと、グレッシャーか。
グレッシャーに預けていた魔石で食事休憩を行うことにした。
その後、ミスリルゴーレムの残骸であるミスリル鉱石と
特大の魔石をグレッシャーに保管してもらった。
お土産として申し分ないだろう。
どうもグレッシャーに進化したことで
また保管の容量が増えたらしい。グレッシャー金庫いけるな。
なんて思いつつも、行動を再開した。
激戦ですっかりボロボロになった主の間を後にし、
ダンジョンの最奥部に辿り着く。
フラードの話では、ここにフラードの分体があるという……。
…………なるほど。ほんのわずかだけだけど、感じるぞ。
『この、真下か』
『うむ。その通りだ』
『……掘らなきゃいけない感じか?』
『そうだな』
『マジか』
というわけで床を掘る作業を開始した。
俺は蹄で。ハイパーホーンは角で。フラードは尻尾で。
なんとグレッシャースライムはドロリと液状になって
床に広がると、床が音を立て、煙を上げながら溶けだした。
そしてあっと言う間に地面に窪みが出来ていく。
な、なんだよその特技。……え?酸性の毒?
……気を付けよう。俺も溶かされかねないな、アレは。
それからしばらく地面を掘り続けると、
やがて地面が崩落し、俺達は下に落下した。
『おっと。危ない危ない』
俺とフラードは落ち着いて上手く着地する。
スーパーホーンは羽を広げて飛行することで事無きを得るが……
グレッシャーはベチャリと音を立てながら地下に落ちた。
……グレッシャー。普段の生活の時は、何かと不便そうだな……。
それはさておき、辺りを見渡す。
暗視と龍眼のおかげでそれなりに見える。
そして、目的のものを発見する。
ああ……何だか、懐かしいようにも思えるな。
『むむ。……こういうふうになっていたのか……。
自分で見るのは、正直不快だ』
フラードはそう言って顔をしかめる。
まあ、確かに自分のこういう姿を見るのは気分良くないだろうな。
『フーム。これは、カナリ強力な封印デスな』
『マロ~』
グレッシャー達も驚いているようだ。
俺も初めて見た時は驚いた。まあ今回は二回目だから多少は慣れたが。
俺は封龍陣と、それに突き刺さっている剣。
そして、陣の中心で固まって動かないもう一つのフラードを見据える。
俺は剣に近付き、蹄を当てる。
……相変わらずこの剣は強力な力を感じる。
今の俺でも冷や汗が流れそうなほどだ。
剣に魔力を通し、剣が引き抜かれるイメージする。
二回目ということもあり、魔力的には幾分余裕がある。
やがて、大きな音と共に剣が抜けて、転がり落ちる。
封龍陣が色を失い、粉々に砕け散った。
そして、封じられていたものが、動き出す。
『……う、ん。……こ、ここは?』
『ここはダンジョンの地下深くだ。私よ』
『おお。私の分体ではないか。
封印されていたのによく抜け出せたな?』
『うむ。色々あってな。話すと少し長くなってしまう』
『なるほど』
うーん。同一人物がお互いに会話を交わしているのは
中々にシュールだな。そう思いながらその光景を見守っていると、
二匹のフラードがくっついて、光に包まれていく。
そして、二匹のフラードの姿がくっついていく。
光の中から一回り大きくなり、頭と尻尾が二本になったフラードが現れる。
そして、片方の頭がこちらを向きながら念話を飛ばす。
『……なるほど、全て理解した。
お主が、アスと言うのだな。そして、ハイパーホーンに
グレッシャースライムか。まずは、私と最初の私……ええい、
フラードを助けてくれたことに礼を言う。ありがとう』
『いや。礼なんかいいよ。
俺も普段フラードには色々助けてもらってるしな。
それより二体目の方も、フラードでいいのか?』
『うむ。それで構わぬ。
そもそも、今の私は同じ意志が二つあるだけなのでな。
どちらもフラードであり、アスの友であることに変わりはない』
『そうか。分かった』
こうして、危ない場面もあったものの、俺達はダンジョン潜入の目的……。
二体目のフラードの解放に成功したのだった。




