第29話 クリスタルケイブにて その3
ふうー。どうにかなったな。
魔物に追われていたのは、なんか人間の女性二人。
二人とも軽装だが武器も持っていたようだし、
なんかまあ魔物を相手にする仕事に就いているんだろう。
ともかく、何があったのかは知らないが彼女らは
特に危害を加えてくることもなかったので一応助けた。
少し怪我をしているようだったので傷を治しておいたし
まあ、自力で帰れるだろう。多分。
そして俺達は今、人間達と相対している。
魔力感知と念話の二つのスキルの効果のおかげで、
人間達の言葉を理解することができた。
どうも言葉にも魔力が籠っているようだ。
って、それは今はいいんだ。
まあ、人間達が言ったのはこういう感じ。
「おい!見ろよ!なんかいるぜ!」
「何だアイツ!おおでけえ虫もいるぜ!」
「あの馬、高く売れそうだな」
「あの蛇も中々……」
まあ、予想通りと言えば予想通りか。
正直ここが一本道で、どうやら先に進んでいたらしい人間と
鉢合わせざるを得なかったからどうしようもないんだが。
因みに試しに一人鑑定するとこんな感じだった。
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名前:ハイス
種族:人間
職業:アクスファイター
状態:普通
LV :9/50
HP :135/135
MP :68/68
攻撃力:124+30
防御力:99+30
魔法力:81
魔防力:84
素早さ:97+10
装備:
E.鉄の斧
E.皮の鎧
E.皮の靴
攻撃系スキル
「全力攻撃:LV2」「斧術:LV2」
魔法系スキル
なし
技能系スキル
「連携:LV3」「暗視:LV2」
耐性系スキル
「苦痛耐性:LV1」「物理耐性:LV1」
称号
「Eランク冒険者」
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ごめん。一言、言ってもいい?
……弱すぎる。
こんなの、どうやって手加減したらいいんだ?
てか、この強さじゃ間違いなくキラーアント一匹にも勝てないだろうなあ。
あ、その弱さを補うために複数人で固まってるのかな。
でも俺達が相手だと、多分意味ないよ。
実際この男が振るった斧はスーパーホーンの胴体に当てても、
簡単に斧の方がひしゃげて、歯の部分は砕けてしまった。
スーパーホーンのユニークスキル「甲殻」による
物理ダメージ軽減効果を考えると、1か2ダメージくらいしか入らなそうだ。
まあ、仲間に手を出したから正当防衛ってことで。
俺は目の前の剣を構えた男に急接近。
"恐怖の魔眼"で動かなくなったところで蹴り飛ばした。
【条件を満たしました。レベルが21から24に上昇しました】
えっ。よわ。……いや、ちょっと待て。
一気にレベルが3も上がったぞ。
蹴り飛ばした剣士の近くにいた槍使いが迫って来たが、
"ライトバレット"で眉間を撃ち抜いたら動かなくなった。
【条件を満たしました。レベルが24から26に上昇しました】
……やはり、人間を倒すと妙にレベルが上がる。
しかし、スーパーホーンやシャープを試しに鑑定してみたが
レベルが劇的に上がっているという感じはなかった。
一体どういうことなのだろう?
疑問には思ったが、残る数人の人間を倒す。
【条件を満たしました。レベルが26から31に上昇しました】
……俺だけ、人間を倒すとレベルが上昇するのだろうか?
理由が全く分からないが……。
……まさかとは思うが、俺が転生者だからってのは。
……流石にないよな?
……それにしても、俺も人間を殺しても何とも思わなくなったな……。
もう少し何か感情の起伏があると思ったのだけど……。
……大分、魔物の感性に引っ張られてきてるのかもしれない。
まあ、いいか。
欲に目が眩んだ残念な人間達を処分した俺達は先に進む。
人間なんて、魔石とかもないし何も得する点がない。
あ、でも俺は倒すとレベルが上がりやすいっぽいけど。
それからしばらく進み、フラードの先導に従って回り道したり、
魔物を倒したりしながら少しずつ奥へと進んでいく。
ゴーレムナイトとかいう埴輪の騎士とか、そういう面白い魔物もいた。
ああいうのって誰かが作ってたりするんだろうか?
そして、俺達はやがて、重厚な扉の前に辿り着く。
『フラード。これは……』
『……間違いない。この先にこのダンジョンの主がいる』
『マロー。やっと少しハ骨ノある奴マロ?』
『如何なる相手デモ粉砕スルのみ』
『……ハハハ、どうやらみんな気合十分みたいだな』
『そうみたいじゃのう。では、行こうか』
『そうだな。みんな、気を引き締めていこう!』
俺達は扉を開く。
扉を開いた先は広い部屋のような形になっていた。
中央に何かが鎮座している。
ゴーレム?しかし、全身が透き通った銀色に輝いている。
『アレが、このダンジョンの主か……』
『あれは、"ミスリルゴーレム"じゃな。
全身がミスリルで構成された頑丈なゴーレムだ』
『相手に不足ないマロ』
『イザ、戦わん!』
俺達が部屋に入ったことを認識したのか、
ミスリルゴーレムが動き出す。その動きは重厚な見た目と違い素早い。
かなりの速度で接近し、攻撃の動作を取ってパンチを放った。
見た目からは想像できない素早さに驚きつつも
スーパーホーンやシャープが慌てて何とかパンチをかわした。
どうやら、
俺が雪山で出会ったキングスノーマンとは、一味違うようだ。
さすがダンジョンの主というところだろう。
だが、こっちにもあの時と違ってフラード達がいる。
俺も強くなった。そう簡単には負ける気はない。
ミスリルゴーレムは俺達が簡単に倒せる相手ではないと
理解したのか、動きが慎重になり始めた。
……さて、じゃあやるか。




