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第28話 クリスタルケイブにて その2

人間視点です。

「はぁ……はぁ……!ま、待って!イリア!」


「はぁー!?待てるわけないでしょ!後ろ見て言ってる!?

私達今魔物に追われてるの見ればわかるでしょォッ!?」


「そ、そうだけどォーッ!」



 ああ……何で、こんなことになっちゃったんだろう……。


 私達はダンジョンの宝物や魔物の素材を手に入れることを生業とする、

 "冒険者"っていう職業をしているの。それで、こっちの私よりも速い足で

 私を置いて行ってるイリアっていう女の人と、

 ギルドの依頼でパーティを組んだのだけど……。


 本来はこの"クリスタルケイブ"っていう

 ダンジョン内にある"魔力結晶"と呼ばれる……

 魔道具……魔力を燃料にして作動する道具のことね。


 その魔道具の燃料の元になる魔力結晶の

 採集依頼でこのダンジョンに来たんだけど……。


 いざ採集に来たら多数の魔物に襲われて、慌てて逃げてきて……

 そして現在に至ります。イリアはシーフという職業で、

 素材採集や斥候、罠の解除といったのが

 主な仕事で戦闘はあまり強くないのよね。


 私はソードファイター。要するに剣士。

 といっても、戦闘面ではイリアよりマシってくらい。

 ギルドには私よりももっと強い人はたくさんいる。


 それは仕方ないのだけれど、ともかく流石にD~Cランクの魔物を

 複数も同時に相手するのは私には無理。

 そんなことができるのはBランク以上の一流の冒険者達くらい。


 魔物にはランクっていう強さの基準があるの。

 

 Fランクは一般人でも倒せる。

 Eランクは武器を持った大人の男性数人で倒せる。

 Dランクは、最低でもEランクの冒険者がパーティを組んでようやく。

 Cランクになると、Dランク冒険者が束にならないといけない。

 Bランク以上は、冒険者の壁と言われるほど難易度が変わってくる。


 まあともかく、Dランクの中の下の私一人なんて

 死にに行くようなもので、こうして逃げているのだけれど。

 

 ただ、イリアはシーフという職業柄足だけは私よりも速い。  


 今にも私を置いて行かんばかりの速度で逃げるイリアに

 抗議をするが、「死にたくなかったら走りなさい!!」と叫ぶばかり。

 イリアも私と同じDランクで、少し実りの良い仕事……

 つまり、魔力結晶採取依頼を共同で受注した今回限りの仲間。


 魔力結晶自体はダンジョンのどこにでもあるっていうから、

 ここまで深層に行く必要もないと思っていたのに……。


 イリアが欲を出したのか、ドンドン奥に進んでいくんだもの。

 私はその道中で強い魔物に会わなかったのが奇跡だと思うわ。

 

 魔法が使える人間は貴重だし、怪我したら基本的に

 薬草から作った簡易の薬か……値段が張るけど、

 ポーションという魔法の薬を使うしかない。


 もっとも、貧乏な私達にポーションなんて、夢の話だけど……。


 逃げながらイリアへの文句やら何やら考えていて、

 何とか魔物を少しは引き離したかな?っていうところで、

 イリアが急に止まった。 

 

 何があったのかと思った時、私は強い寒気を覚えた。


 「逃げろ」と、冒険者の直感が激しく警笛を鳴らす。


 でも、後ろには既に魔物がいる。逃げ場なんてない。

 イリアの顔を見ると、すっかり青ざめて汗をかいていた。

 その汗が走ったから出たのか、冷や汗からくるものなのかは分からなかった。

 

 やがて、私達の直感を揺さぶる存在が姿を見せた。

 それは、四体の魔物だった。


 大型の蛇に全身が凍った針に覆われた不思議な魔物に、

 巨大な昆虫。そして何より目を引くものがあった。


 金と透き通った白が入り混じった色のたてがみと、

 澄んだ水のような青色のボディを持つ馬。


 知っている。私が子供の頃、一度だけ故郷で見たことがある。


 アクアライトハクニー。確か……Bランク……。


 私は血の気を失った。後ろからはCランク級の魔物が迫り、

 今目の前には、分かる魔物ですらBランクの魔物がいることを理解したから。


 Bランクの魔物なんて、Dランクの冒険者が束になっても

 万に一つも勝ち目はない。

 Bランクの魔物というのはCランク以下とは大きく違う。

  

 中位竜と呼ばれる竜種を始めとする、

 猛者達が集うのがBランクの魔物だからだ。


 その強さは、小国の軍隊と互角とも言われる。

 圧倒的なステータスと、多くの種族が所持する魔物特有のユニークスキル。

 それらは人間の能力を大きく超えることが殆ど。 

 それがBランク以上の魔物の特徴で、Bランクが冒険者の壁と言われる由縁。


 私はもうどうしていいか分からなくなってしまった。

 ああ、でもここで死ぬことは決まったかな……。


 イリアをちらりと見ると、生気が抜けたかのように地面に座り込んでいた。

 

 そこにアクアライトハクニーらの魔物が迫ってくる。


 ああ、ここで殺されちゃうんだ。そう思った。


 でも、その瞬間は訪れなかった。


 私の目に入ったのは昆虫と針玉の魔物が

 私達を追っていた魔物達を一方的に屠っていた光景だった。


 あの魔物達は鉄でできたアイアンゴーレムや、

 岩の皮膚を持つロックバードといったCランク級の魔物を相手に

 まるで敵でないかのように一方的に倒していく。

 

 ……まさか、あの魔物全部がBランク級以上の強さ、だというの?


 私がこの光景を理解できずにいると、

 アクアライトハクニーが私達の前にまで来た。


 ……大きい。でも、奇麗な色……。


 ふと気付くと、今までの探索や

 逃げてる間にできた傷が塞がっていることに気付いた。


 体力が回復していっているのが分かる。


 これは……治癒魔法?

 

 この、アクアライトハクニーがやったっていうこと?


 魔物に、そんなことが?

 

 魔物は、確かに知能が高い種族もいるにはいる。

 だけどそれはせいぜい古龍(エンシェントドラゴン)のような、伝説のような存在の魔物くらいだ。


 普通の魔物は人間を見ると襲ってくる。

 襲わないにしても、こうしてわざわざ治癒魔法をかけに来たりはしない。


 私達の疑問をよそに、

 彼らは倒した魔物の魔石や素材を食べた後に奥へと進んでいった。  

 

 私とイリアはこの一連の光景を呆然と見届けることしかできなかった。

 

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