第26話 遠征
『フラード。お帰り』
『ああ、ただいま。急に飛び出してしまって済まないな。
少し確かめたい事があったものでな』
『確かめたい事?』
『うむ。まあ、一応成果はないわけではないが、何とも……。
いや、今はこの話は後にしよう。まずはキラーアント達を労ってやってくれ』
『ああ。そうしよう』
俺はフラードが連れて行ったキラーアント達……
全て"ハイキラーアント"という上位の個体に進化している。
に、報酬として魔石をそれぞれの個体に与えた。
ハイキラーアント達は大喜びで魔石を受け取り、巣に戻っていった。
『さて、アスよ。こちらも話したいことがあるが……
その前に、この氷柱玉になったスノースライムは何だ?』
『マロ?』
『それはスマート……。今はシャープ・アイシクルスライムだ。
進化したんだよ。フラードがいない間に』
『そうか。……スノースライムが進化し、
アスのレベルもかなり上がっていることから、そちらも何かあったようだの』
『ああ。まあ、少し厄介な事がな』
俺はフラードがいない間に起こったスノースライムの襲来、
キングスノーマンの事などをフラードに話す。
『そうか。何とも面倒なことがあったのだな。
とはいえ、無事で何よりだ』
『ああ、まあシャープのおかげもあってな。
次はフラードの方で、何をしていたのか教えてくれ』
『うむ。私は……最近ようやく、私の魔力を一つ捉えることができてな』
『え?……ということは、見つけたのか?』
『うむ。見つけはしたのだが……』
フラードはそこで歯切れが悪くなる。どうしたのだろうか?
『フラード。何か言いにくいことがあるのか?』
『……実はな。私の魔力を掴んだまでは良いのだが、
そこが……人間達が行き来するダンジョンのようなのだ』
『……人間、か』
人間。俺はとりあえず人間に出会うのを避けて山に入った。
恐らく俺達は人間に見つかれば、普通に魔物として狙われるだろう。
『でも、フラードの一部がそこにあるんだよな』
『……』
フラードが俺の顔を見つめている。
……その顔はどこか不安そうな顔に見えた。
『心配するなって。俺も行くよ。
フラードの分体探しを手伝うって、洞窟でも約束しただろ?』
『……!そう、じゃな。……ありがとう』
その後、フラードに冬の寒さをどうにかする方法がないか尋ねてみた。
が、今のところ対処方法はないらしい。
しかし、方法がないわけではないらしいので、次の冬に期待しよう。
それから数日後。
『アス様。お気をツケテ、下さいマセ』
『ああ、マザー。大丈夫だって。
フラードもいるし、シャープもいるし』
『『『オ気ヲツケテー!!』』』
俺達はマザー始めキラーアント達に見送られていた。
フラードの分体の一つを取り戻すための遠征だ。
『マザーよ。地上の建物の事は任せたぞ』
『ハイ。アス様、フラード様の代わりニお守リ致シマス』
『マロの力ヲ当テにシテくれて構ワヌマロ』
『そうだな。シャープにも期待してるぞ』
地上の家のことはキラーアント達に管理を任せている。
まだまだ寒いだろうが、頑張ってほしい。
魔石をある程度なら食べても良いと言ってあるし、
根性のある奴がきっと管理してくれるだろう。
さあ出発、と思ったところで念話で呼び止められる。
『アス様。我を置イテ行かレルおツモリカ』
『スーパーホーンじゃないか!?まだ冬眠してるんじゃ……』
『既ニ一部の者ハ目覚め始メテおりマス。
聞くトコロ我ラが眠ッテいた時、アス様が死闘を繰り広げラレタトカ。
その戦イの場ニ居ルコトが出来ナカッタこと、我の一生ノ不覚デありマス。
故に、此度はセメテ我だけでもお供ニ加エテクダされッ!』
そう言ってスーパーホーンが角(というか頭?)を下げる。
『アス。こやつはこう言っておるが、どうする?』
『……ここまで言われちゃ、連れて行かないわけにもいかないだろ』
スーパーホーンがそれを聞いて目を輝かせる。
ああでも、一応釘は刺しておかないとな。
『でも、一人で無理せず、俺かフラードかシャープ……
ああ、この氷柱がビッシリ生えてるスノースライムね。
誰でもいいから最低限誰かと一緒にいること。
これはスーパーホーンだけでなく俺やシャープにも言えることだぞ?
フラードは……もしかしたら一人でも平気かもしれないけど』
『む。そんな事はない。味方は多いに越したことはない』
『でも、今回は人間がいるダンジョンに入るんだから
なるべく目立たないように少数精鋭で行こうって話になったじゃん』
『そう、だな。……キラーアント達には少し悪いが』
『そうだな。マザー。キラーアント達にはよく言っといてくれ』
『ハイ。もちろんデス』
『……よし、じゃあ今度こそ行くか』
『うむ』
『マロ』
『ハッ!』
そうして俺達は、マザーアント達に見送られながら出発した。
とは言っても、ダンジョンに着くまではフラードがキラーアント達と
一緒に掘った地下通路を進んでいくだけだが。
地下通路を進むまでの間にメンバーの確認でもしようかな。
まず、俺。
補正まで入れるとステータスはほとんどが約1万。
速さだけは1万5千を超える。フラードのステータスを始めて見た時
化け物だなあと思ったけど、俺も案外そうなりつつあるのかもしれない。
フラードは変化なし。
まあ、流石にあそこから急激に強くなられても、
正直これ以上強くなってどうするっていうか……。
というか、分裂してる今は弱体化してるしな。
シャープはレベルが17にまで上がっている。
スノースライム大量駆除と、その魔石によるレベルアップが効いている。
戦力としても申し分ないだろう。
スーパーホーンはレベル15と一番低い。
まあ、冬眠しててスノースライムとの戦いにも参加できていないしな。
ただ、魔法を始めステータスは高いので足手纏いということもないだろう。
因みに食料として、シャープが魔石を限界まで"保管"でストックしている。
向こうで食料が確保できなかった時に頼ることになるだろう。
俺は仲間達の顔を今一度見て、フラードの分体を見つけることと、
無事に帰ることの二つの決意を胸にダンジョンへの道を踏みしめていった。




