第25話 冬の騒動の終わり
俺はキングスノーマンの能力を見て、別な意味で驚いた。
……あまりにも、弱すぎる。
レベルはたったの2。そのせいもあるのか、
ステータスが俺が洞窟で戦ったホワイトドラゴン以下。
ホワイトドラゴン。アイツは俺の中で一つ、強さの目安になっている。
そのホワイトドラゴンより弱いのだから、正直俺は唖然とした。
あえて言えば、この程度で良かったという安堵もあるが、
それ以上に拍子抜けという考えが湧く。
キングスノーマンの攻撃はハッキリ言って遅い。
物理攻撃は単調だし、魔法もスーパーホーンの方が遥かに高威力だ。
何よりも圧倒的に、速さが足りない。
正直龍眼に頼らなくてもこれくらいなら余裕で対処できる。
キングスノーマンの攻撃は全てかわし、
魔法もちょっと光の防御魔法を展開すればアッサリ防げてしまう。
痺れを切らしたのか、周りの雪をかき集めて
スノースライムやアイススライムを生成していく。
とはいえ、生まれたてはレベル1だ。
数も家の時と比べれば少ない。踏み付けるだけで一撃だ。
コロンッ。
ん?……これは、魔石か。
生成されたスノースライム達を倒すと魔石が
崩れた雪の身体から零れ落ちてくる。
鑑定をかけると、従属を生成する度キングスノーマンの魔力が減っている。
なるほど……。
俺はあえてキングスノーマンに攻撃せず、
距離を取りワザと魔法を外したりする。
ただし、生成された雑魚だけはキッチリと狩っていく。
攻撃をかわしたり、防いだりしながらも雑魚を狩り、
出てきた魔石をそのまま丸呑み。
喉に少しつっかえるが流石に立ち止まる程の
余裕があるわけではないので仕方ない。
【条件を満たしました。レベルが9から10に上昇しました】
レベルが上がった。雪だるまレベリングである。
個人的には魔石が入った魔物を生成する方が悪いと思う。
雑魚だけを徹底的に狙い、魔石をかじり、
直接攻撃は全て避ける。魔法にうっかり被弾したこともあったが
正直スーパーホーンの風魔法の方が痛いので気にならない。
そもそも俺は水魔法には"水耐性"のスキルのおかげでダメージが薄いしな。
イライラが募ったキングスノーマンが叫んだ。
『ヌウウ!チョコマカト!何故当タラヌ!
我ガ従属バカリ狙ウ臆病者ノ分際デ!!』
攻撃避けるだけで魔石食い放題とか、誰だってそうすると思う。
一応キングスノーマンの魔力枯渇を狙うこともできるが、
MP自動回復のせいであまり現実的ではなさそうだ。
それからしばらくスノースライム達だけを狙い撃ちにした。
そして気が付くと、何と周りに雪が無くなって
山の土の素肌が剥き出しになっていた。
いつの間にか雪もほぼチラつく程度になっていた。
辺りには残骸となったスノースライム達と、
俺がかじった跡のある魔石の破片が転がっていた。
そしてこのやりとりでついでにレベルがもう一つ上がった。やったね。
キングスノーマンが苦し紛れに腕を振るう。
従属生成で魔力も結構消耗していて、
魔法を使う余裕もあまりないからだろう。
……どうやら一度スノースライムにした残骸から
スノースライムを生成するのはできないらしいな。
少々名残惜しいような気もするが、そろそろ退場してもらうか。
キングスノーマンの攻撃をかわし、"光の束縛"で全身を縛り付ける。
それなりに魔力を込めているので、すぐには引き剥がせないだろう。
キングスノーマンが振り払おうともがいているが、そうはさせない。
俺は"シャイニーレイ"でキングスノーマンのいる地面を薙ぎ払う。
キングスノーマンは地面に窪みができたために
バランスを崩してそのまま転倒してしまった。
俺はその瞬間を狙って一気に接近し、頭部を踏み付ける。
流石に少し堅いな。起き上がられないように胴体を脚で抑えつつ、
頭部に何度も"ライトバレット"を撃ち込み、さらに脚で踏み付ける。
それを繰り返しているうちにキングスノーマンは
うめき声を上げながら頭部を粉砕された。
とはいえ、それでも砕けた雪が元に戻ろうと集まり出したので
ライトバレットで撃ち抜いて粉々にしたらやっと動かなくなった。
そして、頭部が無くなったことで胴体も抵抗力を失った。
【条件を満たしました。レベルが11から14に上昇しました】
ふむ。流石にスノースライムとかよりは多い、けど。
多分ホワイトドラゴンの時の方がレベル上がったんじゃないかな……。
後半、殆どなぶり殺しだし。そう思っていたら、
キングスノーマンの崩れた胴体から大きめの魔石がゴトリと零れ落ちた。
……うーむ、さすがにこれはデカいな。
……よし、食べよう。これくらいは報酬として良いよね。
むしゃむしゃ、ごくり。
ふう、冷たい。雪の中に埋もれてただけあるわ。
【条件を満たしました。レベルが14から20に上昇しました】
おー。まあまあでしたね。
うーん、単にレベルを上げるだけなら魔石を食べるのが手っ取り早いのかな。
ともかく、これで恐らくスノースライム大量発生の問題は解決するだろう。
俺は辺りに散っていたスノースライムの食べかけの魔石を全て回収し、
それを食べて一息ついた後、自宅に戻ることにした。
道中でスノースライムを狩りながら帰っていたら
土の槍を地面から生やしてスノースライムを貫ぬいていた
ヤマヒメにすれ違い、笑顔で
「おお~もう終わったのか~ご苦労様じゃー!」と大きめの声で言われた。
やってることと表情が一致してないので怖いです。
特に笑顔で地面から槍を生やして無双しているところとか。
俺は適当に会釈してその場をそそくさと速足で去った。
しょうがないじゃん、アレ怖いもん。
その後、自宅に戻るとシャープが出迎えてくれた。
……倒したスノースライムの魔石を食べながら。
まあ、シャープも今回は頑張ってたし、それくらいはいいだろうと思う。
人一倍働いたらこれくらいの手当というか、役得がないとね。
だから俺にも食わせろ。……え?やだ?
……。
危ない危ない。もう少しでシャープと殺してでも奪い取るになるところだった。
……そうだ、それより家の中に飛び散ったシャープの氷柱弾を片付けないと。
シャープに氷柱弾の処分ができないか尋ねると、取り込んで消化してくれた。
ちょっと散らかったり所々破損したけど、まあ何とかなるだろう。
その後ヤマヒメがやってきてお礼代わりに
ヤマヒメが狩ったというスノースライムの魔石の半分を譲ってくれた。
くれるというので貰ったが……また魔石が増えた……。
俺が魔石の保管場所に困っているのを分かってて持ってきてるだろアイツ。
俺に魔石渡す時、めっちゃ笑いを堪えてたもん。
あの顔は流石に少し腹立つぞ。
ついでにシャープの事を紹介しといた。
見た目はトゲトゲのスノースライムだしね。
うっかり倒されたりしないようによく話を通しておく。
後日、俺が魔石の収納場所に困っていると、
シャープが「任せろ」というので、どうするのかと思っていると、
身体がみるみる大きくなり、魔石を全て丸ごと取り込んでしまった。
……えっ。
一瞬呆けてしまったが、シャープがその後体内から
魔石を次々吐き出していく光景を見て、少し冷静になる。
シャープ曰く、ユニークスキルの"保管"で
シャープの体内の一部に魔石を保管したらしい。
しかしやはり魔石の量が多かったらしく、大半が吐き出されてしまった。
いやでも、四分の三くらいは減ったかな?
……とにかく、まだ当分は魔石の保管場所が必要になりそうだ。
次点で、寒さ対策。ぶっちゃけ寒い。
自宅も所詮壁一枚程度なので山の寒気は正直堪える。
何か方法はないものかと考えていると、
冬前に穴を掘って出かけて行ったフラードが、帰って来た。
丁度いいので、方法がないか相談してみよう。
そう思い、俺はフラードを出迎えた。




