第20話 新たな日常
ちょっと閑話っぽくなってしまいました。
『……"ライフ"ッ!』
柔らかい光がキラーアントを包む。
キラーアントの痛々しい傷が治癒していく。
なんか、再生しているようにも見えるな。
成功だ。やっと、まともな治癒魔法が発動した。
【条件を満たしました。スキル「治癒魔法:LV1」を獲得しました】
ふうー。やっと、スキルとして成立したか。
これまでの訓練で撃ってたのは、治癒魔法モドキだった。
効果も低いし、消費する魔力も多い。
だから、一匹の怪我を治すのに
何発も撃つ必要があったこともあったな……。
とはいえ、これからはスキルを
磨いていけばいいので、何とかなりそうだな……。
俺はもはや指摘することを諦めた、
白亜の城と化した自宅から、マザーアントの巣に入る。
現在、マザーの巣はスーパーホーン達カブトムシ一族と連携し、
とんでもない勢いで広がっている。
何でも、これから冬が来るから、
その前に次の春のための労働力を養うためだそうだ。
魔力感知を最大にして、ようやく何とかマザーの居る女王の間に辿り着く。
道中で警備のキラーアントとすれ違うが、
俺やフラード、スーパーホーンは顔パスだ。
マザーは今日も卵を産んでいたようだ。
俺は念話で声をかける。
『よお。マザー』
『アラ?アス様でシタカ。先ホド、家の子が
怪我を治シテもらったと喜ンデいまシタヨ。……モシヤ、何か粗相ヲ?』
『いやいや、そんなんじゃないって。
体調管理のチェックと相談だ』
『ハイ。私の体調はカナリ回復シテきましたヨ。
オカゲ様デ……。アア、イケマセンね。
話が逸レテしまうトコロでした。ソレデ、相談とは?』
俺はマザーと念話でやり取りをする。
俺とフラードはあの後キチンと自己紹介して、
マザー達に名前を覚えてもらった。
因みにそのマザーは俺の命令でスーパーホーンや、自分の子供達、
アタックビードルらに念話の指導を任せている。
その甲斐あってか、蟻達もカブトムシ一族とも打ち解けたし、
マザー始め彼らの念話も片言から、
少しずつだが聞き取りやすくなってきている。
『ああ。もちろん冬を越してからでいいんだが、
少し調べてほしい案件があってな』
『我々ニお任せクダサイ。必ズ成果ヲ出してご覧に入レましょう』
俺はマザーに要件を伝える。
一つは、人間達の動き。
この山からそう離れていないところに人間の街が一つある。
さらに、マザー達の食糧不足の原因が人間の行った山での狩猟だと分かった。
このことから、今後も山に人間が来る可能性が高い。
故に、人間の街の監視。これは優先順位が高い。
二つ目は、山のふもとの街道の監視。
これも理由は一つ目とさほど変わらない。
ただ、どんな人間がどれくらい移動しているか、
というのを知るのも恐らく無意味ではあるまいと思い、頼んだ。
三つ目は現状は急ぐ必要はない事だが、
フラードの肉体が封じられている場所探し。
これはキラーアントが、怪しいと目星をつけた場所を探し、
フラードが別の肉体が放っている魔力を逆探知して、
探知できるかどうかで、判断するというものだ。
あまり当てになる情報じゃないが、
どの肉体も何らかの洞窟の中に封じられているらしい、ということ。
ある程度フラード同士が近くに来ることができれば
感知できるようなので、頑張ってほしい。
そもそも、俺達が最初にいた洞窟も、
転移陣が出入り口になっていたため、
結局どこにある洞窟なのかは分からない。
俺達も結局この山に突然来た形だしな。
さて、用件は済んだので、次はスーパーホーンの所だな。
スーパーホーンは、オスの
バトルビートル達と特訓をしていたようだ。
バトルビートルは、オスは一本角があるが、メスには角がない。
代わりにメスは全身を使った強力な突進を仕掛けてくる。
バトルビートルは名前の通り、オスもメスも戦える
バトルジャンキーな一族なのだ。
失礼だが子供が戦闘で死ぬのも、致し方ないような気がする。
とはいえ、さすがにスーパーホーンとバトルビートルでは
能力に差がありすぎるだろう。
俺はスーパーホーンを呼び止めた。
『おーい、スーパーホーン』
『ム。オオ、アス様デあったか。何カ御用デ?』
『いや、どうやら特訓しているみたいだな』
『ハ、我々ハ冬を越せば蜂やクワガタの一族との戦いガあります故』
『なるほど。なあ、俺も参加していいか?』
『アス様も、デスカ?』
『ああ。フラードはここ最近何か集中してるようで動かないし、
そもそも強すぎて相手として向いてないからな』
『分カリ申シタ。半人前ナレド、オ手合ワセさせて頂コウ』
特訓。これにはもちろん意味がある。
スキルを鍛えるのはもちろん、新たなスキルを得たり、検証したりできる。
また、戦闘行為は魔石を食べたり、
生き物を殺すほどではないがレベルが上がることがある。
冬場は恐らく専ら特訓をして過ごすことになるだろうな。
因みに現状、スーパーホーンと
マザーの親衛隊でBランクのロイヤルガードナーアント二匹の
三匹がかりでようやく俺と勝負になると思う。
何故かというと、俺の種族が馬だからなのだろうが、
俺がめちゃくちゃ素早さの値が高いのと、
龍眼による見切りと恐怖付与があるから。
あ、速さに関してはもちろんスーパーホーン達と比較してね。
フラードより速くなるのは、無理だから。マジで。
最近は"威圧"という、下位の相手に恐怖状態を振りまく
スキルを習得したこともあって、下位の相手には大体恐怖状態にできる。
そうなると、相手の戦意が削がれるので簡単に勝ててしまう。
上位の相手と戦う時がいささか不安だが……。
俺はスーパーホーンの風魔法による"鎌鼬"をかわして
光魔法の新技"光の拘束"で角を絡めとる。
訓練なのでこういった殺してしまう心配のない魔法が良い。
この魔法は、光の縄で相手を縛り付ける魔法だ。
そこそこ強度があるし、魔力の消費も多くない。
フラードの言う通り光魔法は補助系が多いんだなあと感じる魔法でもある。
そのまま動きを封じたスーパーホーンを軽めに蹴り続け、降参させた。
『ムム。アス様と対決スルト、いつも身体ガ竦ンデしまう』
『『『ワカル』』』
『最近ハ、視線を感ジなくても身が硬直スル』
『『『ソレナ』』』
カブトムシ一族がウンウン頷いている。
それは、恐怖の魔眼か威圧のせいです。
対策?心を強く持つしかないと思う。多分。
その後、訓練でできた怪我等を治癒魔法で治して回った。
俺はHP自動回復のスキルがあるので放っておくと回復しているので
基本的に自分にかける必要はない。
一通り傷を治したところで治癒魔法のレベルが上がった。
今回は俺もスーパーホーン達も本体かスキルのレベルが上がったので、
有意義な特訓だと言えるだろう。
【条件を満たしました。
「治癒魔法:LV1」が「治癒魔法:LV2」に上昇しました】




