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閑話 女王蟻の視点

 私はマザーアント。


 キラーアントと呼ばれる大蟻の魔物を纏める女王蟻。


 今年も、冬の時期が近付いて来ていた。

 だというのにも関わらず、今年は食料の集まりが非常に悪かった。


 外に出ている我が子の報告によれば、

 近くの街にいる人間達が山狩りをしたらしい。


 そのおかげで、山に棲む生き物が減ってしまったという。


 むむ。困りましたね。

 最近、どこかのカブトムシ一族の巣に繋がったらしく

 そこで命懸けの食糧回収作戦を決行したりもしていますが……。


 このままでは、食料の欠乏で越冬ができない。

 いえ、それどころか私だけならともかく、子供達はその前に餓死してしまう。


 何か、良い手段はないものでしょうか……。



************************************



 最近、思案に暮れていたせいか食事が喉を通らなくなりました。


 子供達も日々衰弱していくものが増えていきます。


 このままでは……。


 悩んでいたある日、突然巣から大きな音が響きました。


 私はその瞬間、女王蟻として理解してしまいました。


 数百匹ほどの我が子が、一瞬で死に絶えたということが。


 私は背筋が冷えました。何故?どうして?何が起こったのか?


 理解も追いつきませんが、子供達が報告と防衛のために集まってきます。


 私は弱っている者や卵を奥の部屋に運ぶように命じました。


 やがて、一頭の馬とその上に乗る蛇。そしてカブトムシが部屋に現れました。


 ああ。カブトムシ一族が、ついに報復に来たのですか。


 しかし、馬と蛇は…何者?報告には上がってはいませんが。


 ……いや、魔力を抑えていますが分かります。


 彼らは強い。


 これでは、私の護衛である、

 二匹のロイヤルガードナーアントでも、恐らく……。


 そうでなくても、ただでさえ既に多くの子供達が弱っています。


 どうにかして、彼らとの戦いを避けなければ。


 私がどうなろうと、子供達だけでも……。


 私は彼らの要求を可能な限り飲みましょう。

 

 私の首を出せというならくれてやります。

 

 さあ。何とでも言うといいです。

 

 ………。


 馬は、優しい方でした。


 私達が食料不足でカブトムシを襲撃したことを伝えると、

 ご友人だという蛇の方が出ていかれて、

 少ししてから私達のための食糧を用意してくれました。


 何故見ず知らずの私達のためにそこまでするのでしょうか?

 

 私達を配下にしたいと馬の方は仰ります。


 ここまで厚遇してくれるというのなら、それも悪くない話かもしれません。


 対価は、私達では太刀打ちできない敵の排除。

 

 悪い話ではありません。

 

 馬の方だけでも恐らく私達は殺せます。

 

 そんな相手の庇護下に入れるのなら美味しい話です。


 第一、普通ならこの女王の間に

 このレベルの敵が来たというのは……もう、手遅れですから。


 しかし、話をよく聞くと、

 彼らは馬の方より蛇の方の方が強いと仰るのです。


 魔力を殆ど感じさせないので、私は気付きませんでしたが……。


 恐らく、相当魔力の操作に手慣れた手練れなのでしょう。


 食料を運ぶ子供達の報告によると

 蛇の方は、馬の方に助け出されたという話をしたそうです。


 その恩に報いたいので、馬の方と共にいるとのことです。


 なるほど、子供達は……

 どうやら直接獲物を狩った蛇の方の方が

 偉いと思っている者ばかりのようです。


 しかし、念話で獲物を狩るよう伝えたのは馬の方。


 念話を使える私だからこそ分かることなので、

 そのことに対して子供達を叱っても仕様がありません。


 ここは、蛇の方の意志を汲み入れましょう。


 子供達には馬の方を敬うように伝えました。


 子供達は渋々、といった感じで、

 蛇の方が用意してくださった獲物から魔石を剥いで、馬の方に納めます。


 そうだ、私の秘蔵の魔石も納めましょう。


 それくらいの誠意は見せなくては。


 子供達に、彼らが上だという事をハッキリ理解させるのです。


 改めて、こちらから馬の方に忠誠を誓いました。


 馬の方は、少し困った表情をして収めた魔石を半分返してきました。


 むむむ。馬の方は魔石は御嫌いなのでしょうか。


 え?違う?数を活かした労働力に期待している?


 ああ。なるほど。


 よろしいでしょう。私も精一杯子供を産みます。


 馬の方が求めているのは、労働力と情報網だと言います。


 なるほど。その二点であれば、

 確かに我々キラーアントは最も得意とするところ。


 私が気合を入れていると、

 馬の方が、子供達やカブトムシ一族の者を一匹ずつ一列に並ばせます。


 はて?何をされるのでしょうか。


 すると、自身の前に積まれた魔石を一つずつ、

 子供達に渡し始めました。


 ええ!?


 驚いてしまいました。


 魔石は基本的に、魔物からしか取れない貴重な魔力源。


 キラーアントの場合は、王族でしか食すことはありません。


 馬の方は私にも魔石をくださいました。


 部下になったお祝いで、子供達にも振る舞ったと言っています。


 子供達の馬の方の評価が爆上がりしています。


 く、こんな方法で子供達の信認(ハート)を得るとは。


 馬の方、恐ろしい方……!


 ………。


 私は今、カブトムシ達のリーダーと対話しています。


 スーパーホーンという種族だそうです。


 聞いたことがありませんが、

 魔物には稀に特別な個体が誕生することもあります。

 馬の方や蛇の方も含めて、恐らくその類でしょう。


 カブトムシ一族とは不戦及び同盟協定を結びました。


 え?何の同盟ですかって?


 決まっています。


 馬の方に仕えることになった者達の同盟です。


 名前はまだありません。


 ああ、どうしてそういう話になったのかというと、

 何と、カブトムシの一族も馬の方の配下になったのです。


 カブトムシは脆弱な昆虫の魔物では、

 クワガタと並んでかなり強力な魔物です。


 彼らと同盟を組めたのは、旨味が大きいです。


 それ以上に、馬の方と蛇の方と好を結べたことの方が大きいですが。


 ともあれ、これからはカブトムシの一族とは味方です。


 キラーアントは女王に絶対服従なので、

 私がそう判断すれば子供達もその辺りはそこそこ割り切ります。


 むしろ、カブトムシ一族と馬の方々の後ろ盾の方が強力です。


 カブトムシの方々は飛行能力があるので、

 私の子供達と連携すれば、情報網がさらに広がることでしょう。


 ふふふ。馬の方を驚かせる情報を掴みましょう。

 そう誓い、スーパーホーンと前脚で握手しました。


 食糧難を救ってくれた馬の方と蛇の方には、

 私の一生を賭してでも報いなければ。


 はい。ご命令ですか?何なりとお申し付けくださいませ。


 え?念話の指導?


 ……。


 私の最初のお仕事は、

 カブトムシの方々に念話の使い方を伝授することでした。


 いえ、不満はありません。


 まずは、小さなことからコツコツと、です。


 そのうち、成果が認められれば、

 大役を任せられるに違いありません。


 私はマザーアント。


 女王蟻。ですが、それはキラーアントこと蟻族だけの話。


 私達と、カブトムシ一族を纏めている

 本当の王は、美しい色合いをしている馬の方。


 少し脅しが子供達に怖がられたりしますが、

 本当はとてもお優しい方なのです。


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