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閑話 封龍の決意

 …………一体、どれほどの年月が経っただろうか?


 あの勇者は強かった。しかし、話を聞かない勇者だった。


 龍王は、魔王ではない。何度もそう言ったはずなのだがな……。


 まあ、龍王に勝てるからと言って、あの魔王に勝てるとは思えんが……。


 あの魔王は、歴代最強と言っても過言ではあるまい。


 ……。ああ、いかんな。どうにも。


 龍族を守るために、勇者と戦ったが……無様に敗れてしまった。


 意識を失っていく私が最後に見たのは……。


 ……確か、奴の剣を叩き折ってやったところか?


 私は敗れてしまったが、

 あの剣が使えないなら恐らく、龍族が滅ぶことはあるまい。


 次に意識を取り戻した時、私はどこかもわからぬ密室の中にいた。


 動こうとしたが、身体が動かなかった。


 これは、魔法陣……。……それも、龍を縛ることに特化したものか……。


 それに、あの剣は……。私の懐剣……。

 

 魔法陣の魔力触媒にされているのか!なんということだ……。


 ……いや、それ以前の問題だ。

 私が全力を出せばこの魔法陣を打ち破って、

 強引に脱出することも可能なはずだが……それができないという事は。


 私の体内に感じる魔力の属性。

 七つあった属性が一つしか感じ取ることができない。


 ……おのれ……。龍族を素材としてか見ず、狩ろうとするばかりか……。


 私をこのような……このような

 密室に封じ込め、その上我が力を分割しおったな!!


 勇者……め……。何が、勇ましき者だ。


 ただ力と権力に溺れ、仮初の情愛に振り回され

 同族に踊らされて暴威を振るうだけの存在ではないか。


 そのくせ、私達のことを敵だなんだと叫び、排除しようとしおって。


 奴らには分からんかもしれないがな。


 龍達にも、家族がいる者もいる。友だっている。


 生きるための糧を得るために狩るのは構わない。


 それは自然の摂理だからだ。


 だが人間は違う。遊びで殺し、必要以上に殺し、着飾るために殺し、

 同族を蹴落とすために殺し、自身以外など気にも留めない。


 そのくせ、自分とは違う者や、とりわけ力のある者を

 異質に思い、排除しようとする。自身の弱さを悟らせないために。


 だが、

 知性ある者は、人も魔物も変わらない。


 ただし、魔物の方が人よりもずっと正直だ。


 自然に正直に向き合って生きる魔物や動物達を見ていると、

 人間という種族の生き方が、酷く滑稽に見えてくる。


 ああ。私は龍神様より、神龍という龍達を見守る大役を預かりながら、


 このような名も知らぬ場所に封じられたというのか。

 愚かな勇者の手によって……。


 ……。あれから、何百年たったのだろうか。


 龍王は、まだ生きているのだろうか?


 アキレアや、レッカ。アビスやリンコウや……クライは達者だろうか?


 奴らは、神龍と呼ばれた私にも親しくしてくれたからな。

 

 もし、封印を抜けられたら会いに行きたいものだなあ……。ああ……。



************************************



 余りにも、長い間動けないせいか久しく何も考えていなかった。 

 

 急に物音がしたと思えば、久しく魔力を感じた。


 何事かは分からぬ。だが、これは千載一遇の機会だ。


 何としても、あの魔力を捉えねば。話が通じてくれると良いが。


 私は何とか魔力を練り上げて、"念話"を飛ばした。



『ま、待て!私を置いて行かないでくれっ!』



 おお、相手が私の声に反応してくれた。


 いささか、大袈裟な反応だったがまあ良い。


 どうやら、馬の魔物のようだな。念話が届いたのは良いが……。



 『そこのお馬様よ。私をここから出してくれ』



 果たして、話が通じるのかどうか……。


 …………おお! 馬が目の前まで来たぞ!

 

 後は、どうにかして剣を引き抜かせれば……。

 

 ……むむ。こ奴、私の念話の内容を完全に理解している。


 馬の魔物でありながら、ここまで高い知性を持つとは、珍しい。


 ……何?私に仲間になれ、と?


 ………そうか。 お前もまた、一人……か。


 ああ、そうだな。


 周りとは違う異常な力。それを使おうが使うまいが……。


 ただ、持っているだけで……。


 ………。


 馬は、私の封印を解いてくれた。


 おかげで分かったが、私は分体の一つのようだ。


 本体や他の分体もいずれ発見せねば。


 その前に、私を助けてくれたこ奴に礼をせねばな。


 名前と、龍眼をくれてやろう。 


 龍眼は、アキレア達にも与えたことのない代物だ。


 龍王ぐらいしか、持っておらんからな。是非活用してほしいものだ。


 アス。私を救った馬に与えた名前。


 明日をも知れぬ我が身を救った。それで十分だ。


 アスから、フラードという名を貰った。


 アスもまた、アキレア達のように私に怯えもしない者のようだ。


 眼で見た時知ったが、やはりアスもまた

 同族(じょうしき)とはかけ離れた力を持っているようだ。


 その上、転生者だった。高い知能とステータスを有しているのも、

 大方そこに原因があるのだろう。


 何故、アスは人間ではなく馬に。それも魔物としてこの世界に生を受けた?


 数万年は生き、この世界の事はあらかた知っているつもりだが……。


 アスという存在は、謎に包まれている。


 だが、せめて……。 


 せめて、私はアスに助けられた恩を返さねばなるまい。


 アスが、この過酷で救われない世界でも安らかでいられるように。


 私と同じ苦しみや悲しみを背負わせないために。


 ああ……でも、その前に私の力を取り戻さなければ。


 守れる者も守れなかった、では話にならない。


 もう同じことは繰り返さぬ。


 神龍ヤマタノオロチの名に懸けて。


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