サヨナラの後で僕は…
一昨日始めたばかりの初心者です。
簡単な短編を描きたくて始めました。
物語のラストシーン風に書いてみました。
もし時間がある時に読んでもらえると嬉しいです。
「ここまで一緒に歩いてきたね。」
僕の隣で彼女は振り返る、それに釣られそっと後ろに振り向いた。
真っ直ぐに伸びる灰色のアスファルト、その先は白くかすんでいて本当に長い距離を歩いてきたことを実感する。
「そうだね、随分長かったね。」
僕も返すように微笑む。
途端に強めの風が吹き付け、彼女の腰まで届く黒髪がはらりと背中を舞う。それを左手で抑えギュッと目をつぶった。
風が止んだ後、恐る恐る、ゆっくりと瞼を開く。
太陽に照らされ白く際立たせる肌の中に、その美しい髪と同じ色、すぅーと透き通った黒い瞳が僕がを捉えて放さない。
目が合った。まるで体が呪縛されたかのように動かない、同時にドクンと跳ねる鼓動。しかしそれが何なのか僕には分からなかった、ただ心拍数と顔の熱が上昇するだけで…
「どうしたの?そんなに見つめて。」
「あ、いや、その…なんでもない。」
思った以上に長い時間目が合っていたらしく、何とか弁解しようと手をパタパタと振る。
「なーに?」彼女が目を細める。
すると、頬の熱がさらに上昇するのを感じた。そして…
「綺麗だね。」
と答える。
それを聞いて少し驚いたような様子を見せ、
「ありがとう、嬉しい。」
と微笑んだ。
その瞬間、二人を包むように光の粒が舞い始めた。
「なんだこれ。」
光が溢れ、まるで天国を思わせる幻想的な風景に僕は、ハッと目を見開く。
…そっか、もう着いたんだ。
彼女が小さく呟き、周りを見渡す。その様子は、まるでこれを知っているかのようにどこか冷静だった。
「着いたって、どこに?」
彼女は僕の少し後ろに歩き出し、
「ここがゴールだよ。」
と彼女が指をさす。
指示通り視線を落とす。
「え、なんだ、これ。」
手が透けて地面のグレーが目に入った。
「ねぇ、私と一緒で楽しかった?」
彼女は少し声色を高めて僕に問う、その声は震えていて、どこか無理やり絞り出すようで。
顔を上げる、目元に涙を浮かべた彼女が微笑んでいた。
「私はね、とっても、とぉーっても楽しかったよ!」
「ちょっと待って、一体どういうこと?」
僕は思わず語尾を強めた。
それでも、彼女は構わず叫ぶ。
「実はね私、あなたのことが!…」
その瞬間強い風が吹き付ける。まるでその言葉を妨害するように。
「え…」
何を伝えようとしたのか、何を叫んだのか、僕はその口元を見て悟った。
ニコッとピースサイン、零れる大粒の涙、僕を包み込むフラッシュバック、そして―――
『ありがとう、サヨナラ。』
――――――――
窓から差し込む光、ふわりと触るカーテン、真っ白な天井。
僕は目を覚ました。
すると、健人!と突然飛びかかるように抱きついてきたのは紛れもない、僕の母だった。
「え?母さん?どうしたの?」
そう聞いても、やつれた顔をしながら縋るように泣いていた。
スゥーと音を立てて開いた扉から二人の男が入ってきた。一人はスポーツ刈りの長身でもう一人は眼鏡をかけた痩せ型の男。見た感じ二人共、高校生のようだ。
目が合う、しばらくして何かに気づくように駆け寄る。
「おい、目、覚めたんか!」
「痛いところは?ないか?」
全く訳が分からないまま、数十分、このどんちゃん騒ぎを収めたのは真っ白な白衣を着た威厳のある先生だった。
一週間前僕は、自転車で登校中、車に跳ねられた。幸い病院からそう遠くない場所での事故のため一命は取り留めたものの今日まで、意識を取り戻さなかったらしい。と先生から説明された。
しばらくして、僕は一人の病室から外を眺めていた。
いくつものビルが立ち、窓の外からは車の騒音が聞こえる。
あれは一体何だったんだろうか?夢でも見ていたのだろうか。
真っ直ぐな道路、弾む会話、笑い声、あの黒髪の女の子。
目頭が熱い…目元を拭うとなぜか手が濡れていた。それを涙と気づくのに、そう時間はいらなかった。
一粒また一粒、まるで瞼から弾きと出されるように筋を引いて零れた。
「何でだよ…なんで止まんないんだよ。」
拭えども、拭えども、止まらない、彼女のことを思えば思うほど大粒の涙が流れる。
彼女の声が、笑顔が、体温が、頭から離れない。
次第に嗚咽が漏れ、泣き崩れた。
『実はね私、あなたのことが!…』
しばらくして彼女が叫んだ言葉を思い出し、もう一度も窓の外を見る。
涙で洗われた後の空は妙に綺麗で、僕は快晴の空に向かって、
「ありがとう、楽しかったよ。」
と微笑む。そしてこう続けた。
「実はね、僕も君の事が…」
好きだったんだ。
――サヨナラの後で僕は…君に告白をする。
最後まで読んでくださった方、誠にありがとうございます!
今回は初めての投稿ということで、とても緊張しています。
さて今回の話は悲しい恋です!長い道のりを語らいながら歩く。その途中にどんな会話をしながら歩いて来たのかは読者の皆さんの想像におまかせします。ちなみに二人は自分の失敗談や、自分の過去などを話し、楽しみながら歩く姿を想像しながら描きました。
後書きが長々となってしまい申し訳ございません。最後にここまで読んでくださり改めてありがとうございます。
もし再び私の名前を見かけることがありましたらその時は暖かい目で見てもらえると嬉しいです。
では!また次回に!