第7話 クロノス様の想い
やっとこの日がきた。
今日から俺の婚約者もこの学校に通う。
俺はこの学校の3年生で王子でもあるため、生徒代表として挨拶をする。
「この学校で皆さんと学べることを嬉しく思います。」
挨拶をするため、壇上に上がると、婚約者のミーア嬢はすぐに見つかった。
耳の色と髪色は同色となるため、黒髪は珍しい。
色とりどりのパステルカラーのなかに黒髪を見つけ、嬉しくなる気持ちをなんとかおさえる。
ここでおさえられないと、しっぽがゆらゆらと動いてしまうため、堪える。
速くその口から鈴のように可愛らしい声を聞きたい。
その耳の手触りを確かめたい。
俺の名前を呼んで微笑んで欲しい。
緩みそうな顔をなんとか堪える。
俺の婚約者となってから、彼女は王妃教育を受け、忙しい日々を送っていた。俺も王子としての公務や入学などでなかなか会えなかった。
だが、彼女が入学し、同じ時を過ごすことができる。
この事が嬉しくてしょうがない。
彼女を婚約者にする話は彼女が生まれて間もないころからされていた。
黒猫は珍しく、あり得ないほど魔力が高いことに加え、彼女の家柄も申し分なく、年も近いとなれば考えられるだろう。
だか、周囲がうるさいから黙らせるために婚約したわけではない。
俺は彼女に惹かれ婚約した。
彼女に出会ったのは俺が10歳の時だ。彼女はまだ8歳であったが、賢く誇りを胸に行動していることがうかがえた。
どこかの貴族の子どもの誕生日お茶会で 見かけた彼女は、周囲の視線を集めながらも堂々と振る舞っていた。
俺は輝く黒髪に黒猫の耳としっぽに釘付けになった。あの全てを飲み込みそうな黒髪や耳の手触りはどうだろうか、あの虚勢がなくなったらどんな表情をするのか…そして、彼女が微笑む時は側にいたい…そう思っていた。
彼女が周囲の視線を受けるなかには、男からのものももちろんある。そう考えると、胸がズキズキと痛みだす。
これが恋だと自覚するのにさほど時間はいらなかった。
あれから婚約はしたももの、お互い忙しくなかなか会えない日々が続いた。
彼女に恋してから6年、ゆっくりと過ごしたことのない彼女への想いは募るばかり。
この学校生活の中で彼女に近づき、親しくなりたいと思う。
読んでくださりありがとうございますm(。_。)m
次回は3月2日16時更新予定です(*´∀`)
犬飼 蘭U^ェ^U