PPAP(Pen-Pineapple-Apple-Pen)がいかに天才的か
ちんちんとかおっぱいって単語が出てくるのでR15です。
最近テレビでやたらと取り上げられている、youtubeにアップされた一本の動画。
古坂大魔王扮するピコ太郎が空気でできたペンとリンゴとパイナップルでシュールな笑いを作り出す本作品は、ジャスティン・ビーバーが発掘したことで有名になったとされている。
私はこの動画をテレビで一目見た瞬間に、天才だと思った。
世の中には、多少勉強や仕事ができたりスポーツが上手いだけで天才と持て囃す者がいるだろう。
私はそういう者にこの動画を見せ、これこそが、リズムネタという感性と才能でしか生まれ得ないはずのものに洗練された気持ち良さとシュールな笑いを同居させる、モノホンの天才の所業であると声を大にして言いたいのだ。
決して便乗ではない。
動画は1分ほどあり、歌いだす前のオカマっぽい振り付けと足捌きや、ペンをリンゴやパイナップルに突き刺しながらニヤニヤするという動作でも既になかなかのシュールな笑いを提供してくれるが、この動画の素晴らしさはつまるところ、ペンパイナッポーアッポーペンというフレーズに殆ど集約されているといって良いだろう。
その為、主にこのペンパイナッポーアッポーペンというフレーズについて分析する。
この動画はペンとアポーとパイナポーという誰でも知っている簡単な単語だけで成り立っているからシンプルで凄い、などと言うことを大袈裟に言いたい訳では無いのだ。もはやそれすら単なる前提条件である。
初めにこの、ペンパイナッポーアッポーペンというフレーズの長さに着目して動画を見てみよう。直前までのチープな電子音楽でいうところの3.5拍分に相当する長さであることが分かるはずだ。
次にペンパイナッポーアッポーペンを音節ごとに区切ってみる。ちなみに音節というのは、母音が一つだけになるような単位のことである。
ペンパイナッポーアッポーペンを音節ごとに区切ると、pen-pine-ap-ple-ap-ple-penで七つに分けられる。これが3.5拍の長さを持っているということはつまり、一つの音節につき0.5拍分になっていることが分かる。
普通、歌詞はこのように音楽に対して音節単位でキリ良く歌われている。つまり、ここまではリズムネタとしての基本である。
ところで突然だがこれを読んでいる人の中に、なんであの動画のタイトルがPPAPなんだろうと思った人はいないだろうか。
かくいう私もその一人である。あの動画はPPAPではなくPPNPAPPであるべきだ。
急に何を言い出すんだこいつは、と思った方もいるだろうがこれは極めて重要な、いわばPPAPの魅力の根幹である。
シンバルの音が鳴った後、古坂大魔王……ピコ太郎がペンパイナッポーアッポーペンと言うその一小節だけバックのチープな電子音楽が止まる。
この音楽が止まった一小節を八つに分けると、ペン・パイ・ナッ・ポー・アッ・ポー・ペン・×となる。
ここで大事なのが破裂音であるPの音である。
ちんちんよりおっぱいのほうが魅力的なのは、Pが付いているからだという言語学者もいる。Pの音は気持ちいいのである。
ここで分かりやすくPで始まる音節を○、他を―で表すと以下のようになる。
○○|―○|―○|○×
分かりやすいように一拍毎に区切ってみた。
この二つのポーが後ろにずれているのが分かるだろうか。○に合わせて手を叩くと分かりやすいかもしれない。
もしかすると楽器をやっていたり、学生時代に音楽の授業を真面目に聞いていた変わり者には、もう何が言いたいのかバレているかもしれない。
普通、手拍子をしてくださいと言われたら、パンパンパンパンと、等間隔に手拍子をするだろう。これを先ほどのように表すと以下のようになる。
○―|○―|○―|○―
これをもしこうしたらどうだろう。
○○|―○|―○|―○
ノリが見違える、いや聞き違えるほど良くなったと思わないだろうか? なかなかロックな手拍子である。
大雑把な説明だが、この効果をシンコペーションといったりする。
改めてペンパイナッポーアッポーペンを見てみよう。
○○|―○|―○|○×
見事にシンコペーションを使った、一つの理想的なリズムなのではないだろうか。最後に表拍のペンでビシッと締めているのも素晴らしい。
なお、実は古坂……ピコ太郎は右手にアップルペン、左手にパイナップルペンを持っていて、視聴者から見ればペン、アップル、パイナップル、ペンの順に並んでいるため、本来ならばペンアッポーパイナッポーペンになるはずにも関わらずピコ太郎はペンパイナッポーアッポーペンと言っている。
まさかピコ太郎側から見たらペン、パイナップル、アップル、ペンだからペンアッポーパイナッポーペンでなくペンパイナッポーアッポーペンと言ってしまった、というケアレスミスをしてしまったのだろうか?
ペンアッポーパイナッポーペンだった場合を考えてみよう。
○―|○○|―○|○×
一応パイナップルペンがシンコペーションになっているが、やはりペンパイナッポーアッポーペンと比べると気持ちのいいリズムとは言い難い。
更に大きな問題として、ペンアッポーの「ンア」の部分がキレの良い発音を極めてしにくいことが挙げられる。nの後の母音はどうしても繋がってしまいやすく、キレの良い発音をしようとするとペナッポーとなってしまう。
つまり、古坂大魔王はペンアッポーパイナッポーペンとなるはずのところ、意図的にこのミス、突っ込みどころを用意した上でペンパイナッポーアッポーペンとしたのではないかと考えられるのだ。
これだけで、この動画が綿密に気持ちよく、面白くなるよう仕組まれていることが分かると思うが、最も恐ろしいのは、このペンパイナッポーアッポーペンというフレーズが、卓越したセンスと試行回数が無ければ決して生まれないものであるということだ。
芸人という職業は過酷である。毎日一日中面白いものを考えなくてはならないので、かえって何が面白いのか分からなくなり精神的な負担が大きいのだ。
Pの音を使ったリズムネタを作ろうと考えたとして、ペンパイナッポーアッポーペンのところまでたどり着くのにどれだけのPがつく単語を頭の中でこねくり回さなければならないのか、想像がつかない。そのうち狂ってとんでもない下ネタに走り出すほうが先かもしれない。
結局私が言いたいのはPPAPが他のリズムネタと同じような単なる一発屋ではなく、今までに類を見ない天才的な完成度を誇るリズムネタであるということだ。
ご清聴ありがとうございました。