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天子のグルメ散歩  作者: South
1/1

#1 守矢家の晩御飯

この物語は幻想郷に住まう天人、比那名居天子にとって本来不必要な食を通して様々な住民、妖怪、神らと親睦を深める日常物語である…


「ふんっ…何よ…衣玖のやつ、いつもいつも…私が悪いみたいに…」

彼女は今作の主人公比那名居天子である。

長く綺麗な蒼空の様な色の髪を揺らして要石に乗って移動をしている彼女は頬を膨らませてそうぼやく。

唯一無二の信頼できる相方永江衣玖と喧嘩をしたのだ。事の発端は家に飾っている鳩時計が時間になっても鳴かず、叩いて直すという原始的な方法を試したら壊れてしまってそれを衣玖にこっ酷く叱られたのが事の発端である。

彼女が今向かっているのは博麗神社。

この幻想郷における妖怪退治のプロフェッショナル博麗霊夢という巫女が管理している神社で鬱憤を晴らそうという魂胆なのだ。

「ふふん♪ やっと見えてきた!」

そう言い要石から体を乗り出し目的地に舞い降りる。

「遊びに来てやったわ!」と、勢いよく扉をぶち開け中に入る。しかし、探せど探せど目的の人物の姿は見当たらない…

「ん〜…いないじゃないのよ…全く、折角この私が遊びに来てやったというのに〜」と、言い不貞腐れた様に縁側に向かい、風はまだ少しひんやりするが暖かい陽気に包まれ日向ぼっこをする。そうしてると、先ほど壊した扉の方から

「こんにちはぁ〜霊夢さんいますか〜?分社のお掃除に来ましたよぉ〜♪」と、いう若い女性の声がする。

天子はその声の主を知ってか知らずか一目散にそちらに駆けだし

「違う!ここは博麗神社!あんたはさっさと妖怪の山へ帰りなさい!」と、本来ならそうツッコミを入れるはずのここの主に代わってツッコミを入れる。

「あはは〜まぁ〜まぁ〜って、あれ?天子さんでしたか、こんにちは〜霊夢さんいますか?」

と、朗らかな笑みを浮かべる彼女は妖怪の山というところで博麗とは異なる守矢という神社の神の一柱を務めている東風谷早苗だ。

蒼空の髪の色をした天子と比較して彼女は爽やかな若葉を彷彿とさせる様な綺麗な緑色の髪をしている。

「残念だけど留守みたいよ?」

「そうですか、それは残念ですね天子さんは何か霊夢さんに用があってきたんですか?」

と、言いつつ壊れた戸を踏まないよう注意しながら中に入るとそう問いかける。

「私は暇潰し!貴女は?」

「昨夜作った煮物が余っちゃって、それでお裾分けしに来たんですが…留守ならもう一回出直して来ようかな…あ、天子さん良ければ消化手伝ってくれませんか?」

「そういえば前回もそんな理由でここに来てなかったっけ?」

そう、確か数日前もそんな理由で同じ常套句を述べここに来ていたはずなのだ。

「あれ〜そうでしたっけ?でも、まぁ〜先ずは胃袋を掴まなくてはですからね!」

と、ガッツポーズを決めやけに気合の入った表情をしている。

「霊夢を落として土地を奪う魂胆?」

「えぇ?!そ、そんなつもりはありませんよ!」

と、わたわたと慌てふためく

「まぁ〜折角だしご相伴に預かろうかしら?幻想郷に来て煮物なんて食べてなかったからな…久々に良いかも」と、帽子のつばをぐいっと下げる

「はい、でしたら一度守矢に帰りましょうか、あ、ひとつお願いがあるんですが良いですか?」

「ん?何?」

「もし良かったらなんですが要石!あれでよく移動してるじゃないですか?良ければ私も乗せてほしいな〜なんて」

「そんな事ならお安い御用よ、じゃ〜行くわよ、しっかり捕まってね〜」

と、外に出て乗ってきた要石を再び浮かせ2人を乗せふよふよと浮かび飛行する。

「わ〜凄い、壁とかないですし乗ってるだけで良いのってらくちんですね〜」

「ふふん、まぁ〜ね、それに多分要石は幻想郷にある乗り物の内だと一番早く移動する事も出来るのよ」

と、無い胸を張る。

「でも、文さんやエイリアンさんのUFOには負けますよね?」

「う…あ、あれは別枠よ、そもそも未確認なんだから乗り物としての運用かわからないでしょう?」

「ふふ、そうですね」と、唇に指を当てて微笑む

そうこうしていると目的の神社に着く。

「ありがとうございました、やっぱり楽しい時間は早く終わっちゃいますね〜」

「そう?まぁ〜ご相伴に預かる代金って事でここはひとつ」と、ニシシと笑う

(ガラガラ)

「ただいま戻りました〜」

「お邪魔します〜」

「ん?客か?ようこそいらっしゃい」

と、目の前にはこの神社の主神である八坂神奈子がまるで幼子を誘拐するかのような持ち方でもう1人の神の守矢諏訪子を抱えていた。

「おぉ、天人のわがまま娘さんじゃないかよく来たな」

「ふっふっふ…ここに立ち入る事ができたという事はお主も我と同じ血の流れを継ぐものか…(ペチッ)あぅ!い、痛い!っていうか、いい加減におろして〜」と、二つの意味で痛い発言をした諏訪子は軽くおでこをはたかれ宙に浮いた手足をジタバタさせている。

「相変わらず仲良しねあんたら…」

「ふふん?羨ましいだろ〜」と、諏訪子を下ろし早苗とともに抱き寄せニヤニヤしている。

「ふん、別に」と、つーんと顔を背けて強がって見せる。

「あはは、相変わらずだな〜まぁ〜中へ入れ、飯食っていくんだろ?」

「え〜、そういう事で来たんだけどお邪魔じゃないかしら?」

「そんな事はないさ、ゆっくりしていくといい」と、言い案内される。和室に机、座布団、そして木製の和棚となんともさっぱりとした部屋だ。

「では、私は作ってきますね!神奈子様お茶お願いできますか?

「あ〜客人はちゃんともてなさないとな」

と、言い棚からお盆に乗った急須と湯飲みを取り出し、もう一つ円筒状の物体を取り出してそれから伸びた線を壁に差し込んでいる。

「見た事ないけどなにそれ?」

「あ〜これか?これは電気ポットって言ってな、元々外の世界に存在してたものを河童に作って貰ったんだ、外の世界から来たなら知ってると思ったんだが」

「いえ、初めてみるわ?そもそもなにに使うものなの?」

「ふっふ〜聞いて驚け、なんと火を使わずともお湯を沸かす事が出来るのだよ」

「へぇ〜…」

「しょぼいリアクションだな?!」

「いや、だってそもそも天界だとお湯すら必要ないし…」

「うぐっ…いいんだよ!俗世ではかなり需要あるし?!」

「そ、そう…」

「神奈子〜少しどん引きしてるよ〜その子〜…ごめんね〜うちの神奈子が〜」

「諏訪子ぉ…最近なんか冷たくないか?」

「神奈子がいつもそんなんだからでしょ?全く…そう言えば家の人に夕飯食べていくってちゃんと連絡はしたの?」

「あ〜…いや、してない…」

と、衣玖と喧嘩した事が原因で飛び出てきた為その事を思い出しまた腹がたつ。

「そう、その様子的にまた永江さんと喧嘩でもしたの?」

「いや、でも今回は衣玖が悪い、私はなにも悪くね〜」

と、いいまた頬を膨らます

「そっか、まぁ〜なんで喧嘩したのかはわからないけど、あまり苦労かけちゃダメだよ?」

「ふん…(そんな事わかってるもん…)」と、確かに時計の状態を悪化させたのは自分だというのはわかってるし、衣玖の言ってる事も最もだと思った。しかし、どうしてもあの時計は直したかったという想いは本当なのである。

「ご飯の用意出来ましたよ〜諏訪子様運ぶのお手伝いお願いします〜」と、ひょろっと襖の間から顔を出し早苗がそう言う。

「は〜い!」と、いいパタパタと台所に向かう諏訪子に対して早苗は天子のそばに行き

「色々事情はあるかもですが、まずは食べましょう!それで英気を養ってから考えましょう?それでもダメなら私やみんなも一緒に考えてあげます」

と、朗らかな笑みを天子に向ける。

「…ありがと…」少し照れくさくなりそっぽを向く

「はい、お困りの時はいつでも守矢神社へ!です」と、元気よく言い台所に戻っていく

「早苗の言う通りだな、うまい飯食って頭に栄養送ればきっと仲直りのいい方法浮かぶさ」

と、単純なのか豪快なのかよくわからない返しをする神奈子。

「…そうよね、うまいご飯もそんな事考えて食べてたら不味くなるわよね」天子としてもこう言った考えは好きなので賛同する。

「お待たせしました〜」そう言い早苗はお盆に乗せられた料理を卓に並べていく。

主食はつやつやほかほかの白米でその脇には野沢菜ときゅうりの浅漬けが小鉢に乗せられ茶碗には豆腐となめこの味噌汁。そして、皮がこんがりパリッと焼け食欲の湧く香りが漂う焼鮭、そして今回ここに来た理由の筍と椎茸、そして乱切りの人参と味が染み込んでそうな里芋が入った煮物が次々に並べられていく。

「ザ・和食って感じね、なんか凄く懐かしいし美味しそう…」

「ふふ、たんと召し上がってください、筍は妹紅さんから多く頂いて、アク抜きしたのを良かったら帰りに持って行きますか?」

「いいの?!」

「勿論です、さぁ〜それでは食べましょうか」

「それでは。頂きます」と、神奈子が最初に言い続くように早苗、天子、諏訪子も

「「「いただきます」」」

まずは一口、味噌汁を頂く。味噌の芳醇な香りが口いっぱいに広がりちゅるんっと、口に入ったなめこはトロッとしつつも、しっかりとした歯ごたえ。豆腐を箸で掬い口に運ぶと絹ごしのようで大豆本来の持つ甘みとともに舌触りを楽しむ。

「美味しい…」

「本当ですか、それは良かったです、おかわりもまだまだあるので必要でしたら言ってくださいね」

「うん」

さて、次は煮物にいくか、と箸を伸ばす。

先ずは人参を口に運びつゆの味と特有の甘さを感じた後に筍の先の部分をぱくりと食べる。噛みしめる度にプツプツっと口の中で切れていく筍の感覚を味わいながら香りを楽しむ。穂先から少し離れているだろう部分もぱくりと食べる。こちらの方が歯ごたえがあってこっちの方が私は好みかも〜なんて思いながら幸せな気分に浸る。

今度はご飯も口に運び少ししょっぱくなった口をご飯の優しい味で柔和させる。焼き鮭の事を忘れていたとばかり白米が残っている内にお箸でほろほろとほぐして食べやすいサイズにしてご飯に乗せ一緒に食べる。

あ〜この組み合わせ懐かしいな〜…食べるのは単なる娯楽でしかない天子にとって幻想郷でまたこんな不思議な懐かしい気持ちになるとは思ってもいなかったのである。

口が乾かない内にまた各種を味わい堪能しそして最後にはおかわりした白米にお茶を注ぎ残った漬物と一緒に食べて終わる。

「(にこにこ〜)」

「お?顔がたるんでるぞ?ずいぶん上機嫌みたいだな、美味いだろ?早苗の作るご飯は」と、神奈子は胸を張って言う。

「うん、本当に美味しかった、やっぱりいいな〜こういうの…早苗うちに嫁に来ない?」なんて、冗談がとばせる程に元気を貰っていた。

「早苗はあげないよ!っていうか女の子同士はダメでしょ!」と、諏訪子は最後の一口を食べきってからそういう。

「むぅ〜小姑がいる限りは無理か〜」

「もう…でも、またいらしてください、そうしたらまた別の旬に合わせた美味しいものを作ってあげます、今度は永江さんも一緒に…ですかね?」

「…うん!ありがとう、元気出たよ、それじゃ〜長居してこれ以上迷惑かけるといけないし…あと、そろそろ心配するだろうしもう帰るね」

「わかりました、では筍用意してきますから少しだけ待っててください」

と、いい台所に向かった。

「鳩時計、今度持って来い、きっと河童の技術なら直せるから」と、事の発端であった出来事にそう言ってくれ守矢の3人は玄関まで天子を見送り筍を手渡す。

「答えは見つかりましたか?」と、早苗は天子に問いかける。

「うん、お陰様でばっちり!これ持って衣玖に謝りに行くわ、晩御飯ごちそうさまでした、それでもってありがとね、その、また良かったら要石に乗せてあげるから」と、照れくさそうにほおを人差し指でかいて笑顔でそう伝え踵を返すと

「総領娘様!」と、宙から声が聞こえ降りてくる。

細身でスレンダーな体をし短い髪を汗で額に張り付かせた女性が天子に駆け寄る。

「あぁ、衣玖」

「もう、どこへ行ってるかと思ったら…守矢の皆様総領娘様がご迷惑をおかけしてしまってすいません」

と、頭を下げ天子の代わりに謝る。

「そんな事は全くないぞ?なぁ?」

「はい、誘ったのは私からですし手作りのご飯を美味しいって言ってもらえたのは嬉しかったですから。」

「そうそう、また来なよ〜永江さんも是非」

「ありがとうございます、それでは失礼します」

と言い天子は要石に乗り、衣玖は宙を浮き天界にむかう。その道中に

「衣玖、ごめんね、でも、あの時計を直そうとしたのは本当だから…でも、河童が直してくれるって守矢の人が言ってたから直るよ!大丈夫だからね?」

「もう気にしてません、私の方こそごめんなさい…それと、それ…なんですか?」と、天子が持ってるものを見てそういう。

「ん?アク抜き済みの筍だよ、衣玖好きでしょ?」

「え?まぁ〜…どちらかというと好きですがなんでですか?」

「そりゃ〜もちドリルに似てるからね!」

「…天子様?前言の謝罪は撤回しても良いですか?」

「え〜ごめんって〜怒んないでって〜」と、言い衣玖に抱きつきながらも仲良く天界に戻っていく…

何時ものように喧嘩して何時ものように仲直りするこの2人…そして、河童の手によって直された鳩時計は無事元どおりになって、定時になる度に

(ポロッポーポロッポー)と、少し魔改造された鳩が出てくる様になったとさ。


〜#1完〜


おまけに

初投稿で目も当てられないほど悲惨さになっていないことを願います…もし、少しでも良かったと思ったりした方がいて下さればいいな〜なんて…次回はどのキャラを出して欲しい!とか、ありませたら是非意見を、そしてアドバイスや誤字脱字の指摘などを等お願いしますm(__)m

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