2. 変態うさぎ HU
アントニオ猪木のものまねは
アゴだすだけじゃないんだ
赤いタオル忘れるな!
死んでいく
深海に沈んでいくように
ぼこぼこと暗くなり
やがて
ぱっと光がさして
天使でも迎いにくるんだろうか
「わたし……、死んだんかい!」
こんなときでもツッコミをする
なんてあわれな私
およよよ、
涙よりも
右手のスイングが先にでるなんて
「死んでも、死にきれないっちゅーに!」
「んじゃ、神様でもなってみる?」
「だれがツッコミ神じゃ、ぼけ」
「もうすでに神様だったか、そりゃいい」
「って、私誰と会話しているの?」
暗い、暗い、そんな海底
迎えにきたのは
パトラッシュたちを連れていった
可愛げのある天使たちじゃなくって……
「俺はくるるぎだ。渋い男だぜ」
うさぎのぬいぐるみを被った
半裸の変態だった!
「ぎゃー、助けておまわりさん!
うさぎの痴漢がいます!」
「なんだよ、せっかく迎えにきたのに」
「いやー、
こんなお迎えいやー!
まだ、地獄のほうがましだわ」
「おいおい、俺がいつ天使っていった」
「じゃあ、あんたは……」
視界がすっと明るくなると、
そこはさっきまでいた場所だった。
男は折れた電柱に腰をかけると
パンツの中から煙草を取り出した。
「うさぎだ」
「嘘つけ!
変態おっさんだろ!
略して、変態!」
「おいおい、まだアラサーだぜ
変態おっさんじゃない。
変態おにいさんだ」
「うっせ!
てか、私を踏むな!」
電柱の下敷きになっている
私の死体を、
変態が踏みつけていた。
「すまない、
お詫びに煙草を吸わせてあげよう」
「いらないんですけど!
それに私はまだ高校生ですし」
「死人に学生なんてねぇぜ」
「悲しいこと言わないで!」
あぁもう、
なによ、なんなのよ
電柱にツッコミして死んで
あわれな女子高生だってのに、
どうしてイケメン天使ぐらいこないのよ!
これがセレブだったら、
天国でもVIP待遇だったでしょうに、
サラリーマン家庭の女子高生には
変態がお似合いですか!
くそ死後の世界、
こんちくしょう、
心霊写真になって
テレビデビューしてやるんだから
「あのさ、はやく煙草吸ってくんない?」
「黙れ変態!
てか、煙草なんて勝手に吸いなさいよ」
「それがよぉ、吸えねぇから困ってんだろ」
「はぁ?」
「このうさぎのさぁ、
クチあるじゃん
空気吸う分には問題ねぇけどよぉ、
煙草吸うには距離がたんねぇよの」
どうやらぬいぐるみの生地が分厚いらしく
煙草を吸うことが困難らしい。
「だからよぉ、
煙草吸ったら、
そんで、このクチの部分に
吐いてくんない?」
「吐くって、それ……」
右手がうずく
「ファーストキスはうさぎかっ!」
悲しい恋愛経験と一緒に
さよなら変態、
うさぎは空の星になりました。
ひとこと
「お父さん、お父さん、ラ王がくる~」