1.ツッコミ少女
ギャグです。
おそらくギャグです。
たぶんギャグです。
ギャグじゃないかもです
今日もツッコミをしてしまった。
静かな教室、誰もが黙っているのに
みんななぜか、むずむずとしている
むずむずとしている
むずむずとしていた
原因はただ一つ
それは、教壇に立つ先生だった
「あもー、鎌倉幕府はー、いい国つくろうで有名でぇ」
が喋るしょうもない話しにじゃない
「いい国つくっても、結局なくなったわけでぇ」
あきらかにずれてるカツラに
「先生!」
気付けば立ちあがっていた。
どん!と机を大きく叩いて
まるでドラマでみる弁護士みたいに
「かっ、かっ……」
喉から〝か〟がとびでる
手には汗をかき
視線は泳いでいるのに
ずれてるカツラが、どうして目に入る
「かっ、かっ、かっ」
それだけは言っちゃだめってわかっているのに
わかっているのに
どうしても〝か〟ばっかりが出てくる
これを言ったらお終いなのに……
先生はクセなのか眼鏡を指でおさえながら
「うーん? 鎌倉幕府がどうしたぁ?」
と、とんちんかんなことを言う
このくそティーチャー
あんたのカツラがずれてるせいで
私が苦しんでるってのに……
眼鏡を触るクセがあるなら
カツラを触って直しなさいよ
クラスの視線が集まる
言うのか……、言うのかと
みんな興味津々に目を輝かせる
はぁ……もうだめだ、もう言ってしまう――
「先生! カツラずれてるんですけど!」
右手のスイングと同時に、その言葉を発してしまった
だが、そのとき右手のスイングがまさに神風を引き起こした
ドン!
暴風が教室を駆け抜ける
その風はみごとに先生を捉え
カツラを浮かした
宙を舞うカツラ
くるくると
くるくると舞い
そして、重力に逆らうこともなく
先生の頭へ――ジャストフィット!
ポンッ
カツラが直った……
「あぁ、すまんなぁ。なんちゅっとたんか聞えんかったんだが」
「あっ、いえ、鎌倉幕府、いい国ですね」
教室中で拍手が巻き起こった
そして、休み時間、私はこう呼ばれた
〝ツッコミ神〟
と――
「って、なにがツッコミ神だっちゅーに!」
一人帰りながら電柱に愚痴をはく。
「なにがツッコミ神じゃ!
私だって、ツッコミたいわけじゃないっちゅーに
あんなこと言いたいわけないのに
これは病気じゃ!
ツッコミの神じゃなくて
ツッコミという悪魔にとりつかれている!」
その間もぼんぼんと電柱にツッコミをする私、
右手がはれ上がってもかまうことはない
「ツッコミ、なんじゃそれ、ぼけ、このやろう」
サンドバックを殴るように
ツッコミを続ける私
けしてこれはパンチじゃない、
ツッコミ
そう、ツッコミなんだ
裏拳でもない
ツッコミだ!
そのとき嫌な音がした
ピキピキ
ピキバキ
「えっ、なに?」
見上げれば、なにか倒れてきていた
「これは……」
そして私は最後のツッコミをする
「電柱、壊したんかい!」
まさにそれは、命をかけたツッコミだった。
ひとこと
「ラ王食べたいです」