黒猫
すらりとした綺麗なねこが夢に出てきた
相変わらず美しい仕草で
優雅に歩き
僕のほうなんて気にも留めずに
陽だまりでうとうとしだした
気まぐれで気難しいねこは
また新しい飼い主を見つけたようすで
綺麗な首輪をしている
近くても遠いところ
僕は其処に座り込んで
息を殺して眺めている
自分で飼い主を見つけるねこ
僕のものにならないなら
いっそ殺してしまおうか
亡骸を優しく撫でながら
皮を剥いで
綺麗な毛皮を首に巻いて
うっとりと眠ろうか
あぁだけど
あの瞳がもう二度と開かれないなんて
甘い鳴き声が二度と聞けないなんて
耐えることが出来るだろうか
世界が
きっと世界が
滅んでしまうのと同じこと
あぁだけど
首を絞める僕の腕に
無数の傷跡を残してくれるだろうか
泪を溜めて
僕を睨むその瞳に
永遠があるだろうか
目を閉じてその一瞬の甘い妄想が僕を惑わす
だけどそのねこは
静に起き上がって
また何処かへいってしまった
慌てて立ち上がった僕は
裸足で追いかけるけれども
壁に上り屋根を渡り
何処にも見えなくなってしまう
降り出した雨の中で
びしょ濡れで裸足の僕は
胸の奥でそっと願う
どうかあのねこが
雨に濡れることなく
棲家へたどり着けますように
どうかまた
巡り合えます様に
どうか
どうか
帰る事無く
ボクノモノニナリマスヨウニ・・・・