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お気に入り小説6

婚約破棄した元婚約者が復縁を迫ってきますが、元々貴方には興味ありませんわ。

作者: ユミヨシ
掲載日:2026/09/06

「やぁ、久しぶり、愛しのエリーナ。会いたかったよ」


はぁ?わたくしは会いたくないわ。

なんでこの男がさらっと社交界に復帰しているの?


エリーナ・ラファロ伯爵令嬢は、声をかけてきた男に驚いた。


半年間、婚約者だった、キルアルト・イール公爵令息だったからだ。

彼はマリア・シャアル男爵令嬢と不貞を繰り返していた為に、不貞の証拠を突き付けて、婚約破棄に持ち込んだ相手だ。


幸い、母がライデルク公爵家からラファロ伯爵家に嫁いできていたので、その力も借りて、婚約破棄をすることが出来た。


でなければ、キルアルトと、婚約破棄は出来なかっただろう。

キルアルトは婿入りするはずだった。マリアを愛人として連れてくる気だったらしい。


ずっと伯爵家だからと、馬鹿にしてきたキルアルト。


金髪碧眼の彼はものすごい美男だ。

婚約を結んだ当初はあまりの美しさに見とれたものだったが、しかし、キルアルトはエリーナと交流をするどころか、いつも男爵令嬢マリアを連れ歩いていた。

胸が大きく可愛らしい顔立ちのマリア。


茶の髪で地味なエリーナとは大違いで。


わたくしは貴方の婚約者なのよ。

それなのに、いつも男爵令嬢を連れ歩いて、どういうつもり?


と言いたかったが、自分は伯爵家の娘だ。公爵令息に強く注意は出来ない。


でも、その様子にラファロ伯爵夫人の母がブチ切れた。


「うちに婿入りするはずなのに、挨拶も来ない。エリーナとも交流しない。

あんな不良物件、我が伯爵家に必要ありません。婚約破棄致しましょう」


父が慌てたように、


「うちは伯爵家だぞ。イール公爵家に向かって婚約破棄をしていいものか」


母は笑って、


「わたくしの兄だってライデルク公爵よ。兄の力を借りて、婚約破棄に致します。よいですね」


エリーナは思った。

あんな男なんていらない。

半年で愛想も尽きてしまったわ。


婚約破棄の申し出に、イール公爵は受け入れてくれて、慰謝料も払ってくれた。

これで、あの男と縁が切れる。元々、名だけの婚約者、話もあまりしたことがないので、どうでもよかった。


気晴らしの夜会に出かけたエリーナ。

そうしたら背後から声をかけられたのだ。


「やぁ、久しぶり、愛しのエリーナ。会いたかったよ」


えええ?確か、イール公爵は反省させるために、領地に押し込めるって言っていたような。

それなのに、さらっと王宮の夜会に出席している彼って???


あの美しかった金髪を地味な茶髪に変えていたから、声をかけられるまで気が付かなかったわ。


「これはイール公爵令息様。わたくしに何用でしょう」


「婚約を再び結んでいいと思っている」


「はい?」


「私も反省したんだ。マリアなんぞに現を抜かして、君という人間を見ていなかった。だから、これからは君を大切にするよ」


「いえ、もう終わった事ですので」


「何を言うか。私達はこれから始まるんだ」


「確かに交流をろくにしてこなかったのですから、でも、わたくしはこれから始めたくありませんわ」


手を握られた。

いや、もう関わりたくない。


婚約期間中、男爵令嬢と共に夜会に出席していると聞いて、どれだけわたくしが傷付いたと思っているの?

愛とか恋とか関係ないと思っていても、さすがに婚約者のいる身で他の令嬢と夜会に出席するってないわ。


母が新しい相手を釣書を見ながら探してくれている。


それなのに、この男がわざわざ声をかけてくるなんて。


「わたくしは他の方とダンスを踊ります。ごきげんよう」


慌ててキルアルトから離れた。

キルアルトが後ろから着いて来る。


「焼きもちを妬いていたのだろう。男爵令嬢は始末した。だから、安心して婚約を再び結んでもいいのだぞ」


「始末した?」


「父がマリアを始末した。父は相当、怒って、マリアが私を誘惑したのが悪いのだと。ああ、私もマリアの誘惑に乗ってしまって。悪いのはマリアだ。私は誘惑された被害者だ。こうして、反省して君に声をかけてやっているじゃないか。だから、意地を張っていないで、復縁しよう」


「復縁も何も、わたくし達、ろくに交流してこなかったのですから」


「だったら、これから愛を育めばいい」


話が通じない。

それにしてもどうして、金髪を茶髪に変えたのかしら。

じっと視線を髪に向けていると、キルアルトは頷いて、


「父に茶髪に染めろと言われたんだ。どうも、屑の美男をさらって教育する変…辺境騎士団というのがいて、金髪碧眼の美男が好物だと。それを避ける為に茶髪に染めた」


「貴方は屑だと言う自覚があるのですか?」


「失礼だな。私は屑ではない。ただ、連中が屑だと勘違いしたら困るから、茶髪に染めた。

怪しげな連中が近づいて来て声をかけられたが、金髪じゃないとか、髪色が違うから別人だとか、言って去っていったぞ」


はぁ?変…辺境騎士団、なにやっているのよ。髪色を変えただけで、ごまかされるなんて。


この男、屑でしょう。屑。男爵令嬢だけのせいにして、貴方だって喜んで彼女と付き合っていたじゃない。


始末したですって、ああ、こういう男とは関わりたくないわ。


「ともかく、わたくしは貴方と再び婚約を結ぶつもりはありませんわ」


背を向けて、夜会の会場を出た。

気晴らしに来た夜会。

殿方とダンスを踊り、楽しむ予定だった夜会。


せっかく支度をしてきたのに。


母が釣書を眺めて、相手を探してくれてはいるけれども、今宵の夜会で良い相手が見つかるかもしれない。

ちょっとは期待していたのだ。


それなのに。

あの男のせいで台無しになってしまった。


翌日から異変が起きた。


釣書が何通か来ていたのだが、断りの手紙が届けられるようになったのだ。


皆、今回の話はこちらの都合でなかったことにと。


どうしてなんで?


母いわく、


「イール公爵家が圧力をかけているのね。婚約破棄の慰謝料を取り戻したいのかしら。沢山、搾り取ったから。余程、あの馬鹿息子をうちの婿にしたいみたいだわ」


ああ、確かに、顔だけはいいキルアルト。でも、あんな愚かな男、婿に貰いたくはないわ。

イール公爵家だって名前だけは立派だけれども、実際、領地経営は火の車って言われているし。


使用人が、報告に来た。


「薔薇の花束とカードが贈られてきました。キルアルト・イール公爵令息様から」


高そうな深紅の薔薇の花束と、美しいカードが添えられていて、


― 愛しのエリーナ。また、会いたい。君の事が忘れられない。今度、会いに行って構わないだろうか。良い返事を待っている ―


はぁ?どういうことよ。婚約破棄をしたのよ。こちらから。それなのに、また会いたいって。


母にカードを見せたら、母もブチ切れて、


「厳重に兄に頼んで、イール公爵家に抗議して貰うわ。それから、貴方にこれを」


小さな瓶を渡された。


母はエリーナに、


「今度の夜会で、彼が絡んでくるようだったら、この瓶の中身をふりまきなさい。彼に向かって。いいわね」


「この瓶の中身って」


母は答えなかったが、扇を手に意地の悪そうな笑いを浮かべた。


何かの魔法薬?

ともかく、しっかりと薔薇の花束とカードは送り返して、ラファロ伯爵家の名でも抗議をイール公爵家にすることにした。


王宮の図書館に用があって、出かけたら、キルアルトに待ち伏せされていた。

一緒に連れて来た使用人二人が姿を消していて、

キルアルトに買収された???わたくしは今、一人だわ。


「やぁ、冷たいな。薔薇の花、君の為に送ったのに。情熱の深紅の薔薇の花。素敵だろう」


「わたくしは貴方を婚約破棄したのです。もう付き纏わないで」


「こんなに美しい私に付き纏われて、君は照れているんだな」


「照れている?もう、顔も見たくないのに。そういえば、貴方、わたくしに釣書を送ってきた相手に圧力をかけたわね」


「父上に頼んで、圧力をかけてもらった。私が婿入りする家に、釣書を送ってくるだなんてずうずうしい」


「婚約破棄した相手に復縁を迫ってくる貴方のほうこそ、ずうずうしいと思いませんの?」


「私はイール公爵令息だ。君の言葉は感心しないな。もっと私を敬うがいい」


「敬えるような常識ある方なら敬います。でも、貴方は常識も何もないわ。ですから、二度とわたくしには関わらないで下さいませ」


「そうはいかない。いい加減に素直になるがいい」


「なりませんっ」


腕を掴まれた。

母に持たされた瓶を相手に投げつけた。

蓋を外すのは忘れたけれども、ぱぁっと虹色の光が瓶の中から溢れて、


茶に染めていたキルアルトの髪が元の美しい金髪に戻ったのだ。


どこからか、聞こえてきた。


「屑の美男だ。それも極上の金髪碧眼だ」

「なんで見落としていた?前にはいなかったが」

「ともかく、見つけたからには触手でさらって」

「三日三晩の正義の教育だ」


体格の良い男達が現れて、キルアルトを馬車に押し込めた。

キルアルトは悲鳴を上げた。


「誰かっーーー私はイール公爵家のっーーー」


誰も助けに向かわなかった。

皆、やりたい放題のキルアルトにうんざりしていたから。


そのまま、キルアルトは変…辺境騎士団員達に連れ去られた。


金髪碧眼の高位貴族が大好物の変…辺境騎士団。

美しい彼は正義の教育を激しく、時には愛を持って、行われることだろう。



その場に取り残されたエリーナは、助かったと胸を撫で下ろした。


これでやっと、ちゃんとした婚約者を探すことが出来る。

婚約破棄したのに、付き纏ってくる常識のない相手なんて二度と嫌だわ。


今度はきちっと誠意をもって付き合ってくれる人がいい。

エリーナは機嫌よく家路に着くのであった。



新しい婚約者はルード・ベルテ伯爵令息という男性になった。

ルードは母が一押しに押した男性で。


「前の婚約者が不良物件で、彼も婚約破棄をしたそうよ。誠実な男性だって評判だから、貴方にふさわしいと思うの。それに、次男だからうちに婿入りも問題ないわ」


ルードに会ってみることにした。


黒髪碧眼で普通の容姿のルードだったが、とても誠意ある対応をしてくれて。


「貴方が前の婚約者のせいで、傷ついていると聞いております。私も前の婚約者で苦労しました。互いに手に手をとりあって前を向いていきませんか。私が婿入りする形になりますが、ラファロ伯爵家の役に立つためにも、頑張ります」


そう言ってくれた。

やはり、婚約するならこのような誠意ある男性でなくては。

そう強くエリーナは思ったのだ。


そして、現在、エリーナはルードと結婚し、幸せに暮らしている。


一度だけ、手紙が来た。

キルアルトからだ。


汚い字で、


― 私を愛しているなら助けてくれっ。私は変…辺境騎士団にいるっ。どうか、私をっ ―


急いで書いたのか、薄汚れている手紙。

必死に書いたのであろう。


何をどう間違って、わたくしがキルアルトを愛していると勘違いしたのかしら???



ルードに手紙を見せて、


「わたくし、一度も、彼に愛しているって言った覚えもないし、交流もほとんどなかったのよ」


ルードは笑って、


「世の中、常識が解らない人って普通にいますから。この手紙は捨てて忘れましょう」


手紙を捨てて、綺麗さっぱりキルアルトの事は忘れることにした。

今、わたくしはとても幸せ。

これから先も愛するルードと幸せに暮らすわ。

だから、貴方の事はきっぱり忘れます。

もう二度と、会う事もないでしょう。



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髪の毛の色変えたくらいで見誤るとは…と思ったけど、金髪でなければ美形にカウントされないのでは? と思えば顔の作りはそれなりなのかもな〜。髪の色変わると美形度が落ちるくらいならそんなに本物ではないのかも…
イール公爵(屑の元婚約者の父)も変境騎士団に出荷しても良さげ
変…辺境騎士団の四天王様方、金髪碧眼の美形じゃなくて金髪碧眼しか目に入らんのですか? 今回は茶髪だったかもしれませんが、美形でしたよ? いけませんなぁ。ちゃんと顔も見なければ。二度手間だったではありま…
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