咳の味
掲載日:2026/06/21
セミの産声が耳に光って
どうしやうもなくまぶしい
夏の前夜にはお祭りがあったけれど
キツネ小僧が雨で濡れたはらいせに
濡れたはらいせに、こわしてしまったらしい
あったやうでなかったお祭りの夜に
ぼくののどはとうにふくれあがって
とじこもった部屋の中はそこらぢう
そこらぢうクモ糸で満たし合っている
クモは床でねむっていて、どうやら息はないやうだ
くるったやうに泣きはじめて
とまらない、とまらないよおだなんて
弱音吐きの咳が、夜の真中にひびく
咳の味が、真中のさみしさをわからせて




