自民党ウシジマくん
「で、俺が呼ばれたってこと」
首相官邸にカウカウファイナンス社長丑嶋が呼ばれた。
巨躯に短髪、短い髭の男はもつ全てを見透かすような眼光は、修羅場をいくつも超えて来た人間のそれである。
「そうや、CIAに金いきなり返しても無視されるし大統領はキチやから何も話伝わっとらん。あんたが債権をCIAから買い取り、自民党から回収するかたちで、あくまで裏金でなく借金やったという形に収めるんや」
カウカウファイナンス社長・丑嶋馨は低い、どすの聞いた声で手短に答える。
「うちは利息高いよ」
遡ること数日前、今日も高市早苗は一日を公邸で過ごしていた。
「自民党の過去の行いが破防法の適用対象に・・・!?くそ、なんとかせなあかん」
1994年10月に米紙『ニューヨーク・タイムズ』によって、CIAから自民党に資金が渡されていたことが報道された。さらに、2006年7月、米国務省の歴史外交文書諮問委員会が公式に刊行している外交史料集 『合衆国の外交(Foreign Relations of the United States:通称 FRUS)』 第29巻第2部にも公式文書として記載された。そのときはたいして話題にならなかったが、今頃になって話題になっていた。
55年体制構築時に吉田茂門下、つまり吉田学校の面々がCIAから裏金を貰い、ポダムこと読売新聞の正力松太郎らにもポカポンこと朝日新聞の緒方竹虎もCIAから金を貰っていた。今更追及されても困る。
「社民党かてKGBから貰ってたんちゃうか・・!しかしあんな弱小政党道連れにしても何の得もない。そうや、あくまで借金ってことにして今から返せばええんちゃうか?」
自民党お抱えの暴力団経由で、いま最も回収の実力がある金融屋を探し、カウカウファイナンスに白羽の矢が立った。
丑嶋社長は高市首相の命を受けて、過去に自民党にCIAから世論工作や選挙活動に使う金の所在を江崎、高田の両名に命じ洗い出した。
江崎は自民党内部の書類から金銭に関するメモを洗い出した。高田はアメリカにわたり、CIAの工作員を逆に買収して金額の帳尻を確認した。カウカウファイナンスはハイエースで永田町自民党本部の玄関に乗り付け、幹事長へ面会を要求した。すでに首相官邸から警備に話は通っている。
「7.4 × 10の443乗ドル。返して」
自民党幹事長鈴木俊一はしりもちをついた。
「あるわけないだろうそんな天文学的な金額!なんて言いがかりだ!」
無量大数が10の68乗、宇宙にある原子の総数がおおよそ10の80乗である。
丑嶋は表情を全く変えずに説明した。
「言いがかりじゃねえよ。1958年5月22日に200万ドル、アメリカから自民党への債権を俺が買った。利息はトゴ(10日で5割)。今日にいたるまで24,849日、つまり10日単位で2,484回利子が付いたらそうなる。返せ」
丑嶋は444桁の数字が並んだ借用書を見せた。紙片の大半が数字で真っ黒に埋まり、遠目には何かの模様に見えた。
「借りたもんは返さないといかんでしょう。貰ったままにしてたほうが都合悪いんじゃないの」
「せめて円建てにしてくれ、日銀をぶん回せば日本円をジンバブエドルにできる」
「だめだ、ドルの借金なんだからドル建てだ。ちょっとでも円高にして借金返すんだな」
「まて、俺たちも借金を返してくれないから困ってるんだ。もっといい回収先がある」
「どこ」
牛嶋は徒歩で首相官邸に戻って来た。
高市早苗の夫である山本拓が車椅子ながら手料理で牛嶋らをもてなした。
「例の件、回収してきたから」
「ああ、ウシジマはん!」
高石早苗はしなやかな右腕をウシジマの巨躯に絡みつかせてしなだれかかった。
「よくやってくれたでウシジマはん!これで自民党は完全クリーン、破防法の適用を免れそうやわ!」
丑嶋はフン、と短く鼻息で答えた。
「あんた、クビだから」
「え」
「自民党総本部の建物と、自民党の全議席をカウカウファイナンスで買い取ることで成立した。それでも足りねえから、まだ回収にいかなくちゃなんねえ」
「ど、どこへ」
「ペンタゴン」
米国の対外有償軍事援助(FMS)は60年代から始まった枠組みであり、日本が防衛費を使って米国からクソみてえに兵器を買わされる仕組みである。DSCAのHistorical Sales Bookによると、1950〜2024年度累計で、実施済み移転額は、日本が約696億円。納期無限、後出し増額可能、前払い、という米国からすると破格の条件でこのみかじめ料を飲ませていた。しかも、ここ数年、見返りのはずの兵器すら5年以上遅延、1兆円ぶんが納入されていなかった。もちろん、各国の財務管理の省庁がブチ切れており、なんなら米国国内からも同盟国との関係悪化の火種になると批判されていた。そうこうしているうちに型落ちになり、兵器としての意味をなさなくなる。丑嶋はこれを回収に出向くことにした。
自民党総本部の看板はカウカウファイナンス永田町支店とすっかり書き換えられた。その執務室で、部下に指示を送っていた。
「江崎、各国と連絡とれ」
日本だけでなく、台湾、韓国、オーストラリア、サウジアラビアが米国へFMSを支払わされていた。各国が長年煮え湯を飲まされていたこのみかじめ料の回収のため、協力を誓った。日本同様、闇金が政権から債権を買い取り、永田町に集結した。各国の丑嶋社長そっくりのガタイのいい男たちが集まった。
「台湾は遠そうで近いぜ」
「軍事政権時代の回収だな」
「終わったら、バーベキューだから」
「日本のが暑いな」
「高田、航空券予約しとけ。F-35と長官のガラおさえにいくぞ」
丑嶋社長率いるカウカウ・カルテルはワシントンとペンタゴンに回収を仕掛けに行った。利息はトゴ(10日で5割)である。(了)
ザ・ドラえもんズ的な丑嶋社長の登場シーンを考えたけど諦めた。




