3 異世界の森
目を開けると、そこは森だった。
ターコイズ・ブルーの枝葉の切れ間に、月が2つ見えている。
島も飛んでるな。
「なるほど。異世界か」
たぶん朝。
緑の香りに露の冷たい匂いがまじっている。
私は全身くまなくぺたぺた触った。
……。
おっし、私の体だ。
事故の傷とかもない。
「転生つっても元の体でリプレイする感じなのか」
辺境領主家の金髪碧眼令嬢パターンも楽しそうだけど、ま、さすがに赤ちゃんから始めるのはちょっとな。
着ていた高校の夏服は謎の民族衣装に変わっている。
初期装備かな?
ポケットはあるけど、中はカラ。
バッグとかも背負ってない。
持ち物・所持金ゼロからのスタートか。
私は手頃な木を見つけて、根を椅子にした。
「ええっと、……カタログギフト」
そう唱えると、光の粒が集まって冊子が現れる。
目下、私にあるのはこれだけ。
女神のカタログギフトのみ。
これをうまくやり繰りして当座をしのぐべしってこったな。
最初のページをめくると、いろいろ細々としたルールが書かれていた。
私は取説見ないで燃やす派なので、火炎放射器を探した。
なかった。
燃やすのは後にしてやるか。
とりあえず、着目すべきはココだな。
【所持しているギフトポイント:10GP】
ふむふむ。
どーも、このポイントと引き換えにギフトを得られるらしい。
ギフトにはランクがあって、S~Cの4段階に分けられている。
ザっとめくった感じだと――
【S(10GP)】・・・チート能力、伝説級の武器、剣術や魔法の奥義など。
【A(7GP)】・・・強めの武器や魔法、大型家具類、高級ワインなど。
【B(3GP)】・・・弱めの武器や魔法、小型家具、ハムの詰め合わせなど。
【C(1GP)】・・・軽食類、文房具、生活雑貨、ほか。
――こんな感じ。
10GPあるから、Sなら1つ、Bなら3つ選べるわけね。
了解。
「透明化能力。転移魔法……。千里眼に竜殺しの弓、か」
全部魅力的だ。
目移りしちゃうな。
でも、所持ポイントは10GPしかない。
賢い選択をしないとね。
「あっちゃー。ギフトって有効期限あんのか……」
使用回数が制限されているギフトもある。
このへんは食品と同じだ。
賞味期限があって、食べると減っていく。
3個入りの饅頭は3個までしか食べられない。
制限がないと日ごとにチート能力が増えていくから、当然の処置だな。
文句は言うまい。
「よし」
差し当たって、フィジカル面を強化しておこう。
魔物とかいる世界みたいだし、JKホーミング馬車とかも怖い。
何が来ても物理で勝てるようにしておかないとな。
Sランクギフト【女神の加護:肉体強化】。
各種身体能力を10倍化するらしい。
これに決定。
さっそくポチってみた。
……。
超人化したような自覚は……ないな。
スイカくらいの岩があったので持ち上げてみると、おっほ!
発泡スチロールみたいに軽いでやんの!
「りゃ!」
投げたら馬鹿みたいに飛んでった。
普通にジャンプするだけで木より高く飛べる。
トラックも跳んで避けられそう。
有効期限は5日。
ええやん。
【次のカタログギフト受け取りまで:17時間36分22秒】
【次のポイント獲得まで:71時間59分16秒】
おん?
おおん?
……二度見した。
「72時間?」
次のポイントは3日後か。
カタログギフトは毎日届くけど、ポイントが振り込まれるのは3日に1度です、ってか。
実質カタログギフトも3日に1度じゃねえか。
私は木の幹に女神の顔を思い描いてぶん殴った。
どごん。
瑠璃色のカブトムシとかボトボト落ちてくる。
なんというか、してやられた感がある。
それとも、何かGPを稼ぐ方法とかあるのだろうか。
「つか、ここどこだ?」
人気のない森……。
なんで、こんな辺鄙なところがスタート地点?
女神のささやかな仕返しか?
30発殴って滑空土下座までさせたしな。
「……」
うーん、どうだろう?
アホな子だとは思うけど、そんな悪い子には見えなかったんだよなぁ。
仮にも女神だし。
――たすけて。
「?」
今、声が聞こえた気がする。
はっはぁん、って感じ。
ここがスタート地点に選ばれた理由。
その答えがこの近くで助けを求めているわけね。
助けに行くか、行かないか。
もちろん行くに決まっている。
女神主催のイベントだ。
クリア報酬とかもらえるのかもしれない。
私は声のしたほうに足を向けた。




