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2 女神のカタログギフト


 ――目覚めよ。


 声がする。

 ふわふわで、ぽわんぽわんな気分。

 私は雲みたいなものに寝転がり、天に召された気分でいた。


 ……いや、召されたよな。

 右でもない左でもない、なら下だ!

 みたいなアホの浅知恵で腹這いになったら、トラックの野郎もヘッスラかましてきて、無事逝った。

 なのに、なぜ、まだ意識がある?

 奇跡的に助かった?

 今、病院のベッドの上かな!?


「目覚めよ、片霧かたぎり椎菜しいな


「んぅ……」


 大仰な物言いの医者だなコラ、助けていただいてあざっしたぁとか思いながら体を起こす。

 すると、そこにいたのは、白衣は白衣でも医者ではなかった。

 翼を生やしたパツキン巨乳美女。

 THE女神。

 するってえと、なんですかい?

 やっぱアッシは死んだんでやすか無念。


「シーナよ、貴様に転生の機会を与えよう」


 女神氏はおごそかにそう言った。


「うん。なんで?」


 私は何かこう、引っかかるものを感じて食い気味に問い返した。

 真っ直ぐ目を見る。

 すると、女神の瞳が微妙に泳いだ。


「貴様は……神々の采配の無謬性の欠落により、あえなく非業の死を遂げた」


「もっと簡単に言えそう? あ、私の目を見て、ね」


「えっと、女神のその、手違いでその……」


「うん」


「………………」


 女神氏は脂汗だらっだら。

 おまけに、目をぎゅんぎゅんに泳がせている。

 そして、開き直る感じでてへっ、とか言いながらぺろっ、と舌出しウィンク。


「私の手違いでうっかり殺しちゃったっ! ごっめーん!」


 前かがみになった胸がぷるん、と揺れた。

 気づけば、私の右手は女神の鼻にめり込んでいた。

 恵体がきりもみしながらぶっ倒れる。


「目ッ覚めよじゃねえよカスコラァ! 舐めてんのかヴオイ!? てめえのせいで二度と目覚めらんなくなっちゃったじゃねえかオオオッ!? どうすんだワリャア!」


 すごいな。

 温厚で知られる私をここまでキレさせたのはお前が初めてだカスの女神コラァ。


「あふん!? ぼ、暴力はやめ――」


「ならトラックはアリなんか!? トラックアリで殴るのナシなんかアアン? じゃ私のトラック出せよ! 手頃な坂とセットでよォ!」


 チクショーめェ。

 やけにホーミングしてくると思ったら、はなから確定で殺しに来てたんか。

 じゃ、上に跳んでも死んでたな。

 そもそも私にトラックを飛び越える脚力なんざねえがよ。

 フーッ、フーッ。


「30発くらい殴ったら落ち着いてきた。今度からイラっとすることがあったら我慢せずに手近な女神を殴っか」


「や、やめてよぉ……」


 女神はいつの間にか私と同い年くらいの女の子になっていた。

 私よりツルペタだ。


「殴ると若返るんか、女神……」


「うう。舐められたくなくて大人のフリしてましたぁ、うう……」


「そっかそっか。うっかり殺した人間を大人の女神オーラで押し切ろうとしてたのか、このクズは。それで貴様とか機会を与えるとか舐めたクチ叩いてやがったか」


 もう一発ゲンコツくれてやった。

 ダメージが通っている感じは……ないな。

 腹立つ。


「大変申し訳ありません! ご寛恕ください!」


 女神は翼で滑空からのスライディング土下座で私の足に額をこすりつけてくる。

 今度は勢いで押し切ろうってか?

 ちゃんと説明しろ。


「なんで私を殺したの?」


「逃走中の指名手配犯に天罰下そうとしてロックオンをミスっちゃいました!」


「転生とか言ってたし、もうコレ元の世界には戻れないってことであってる?」


「はい。あってます。すみません!」


「どうしてくれんのさ? たしかに、私ゃどこにでもいる普通のJKで、華もなけりゃ浮いた話もねえ、面白みもねえ女の子だったよ? でも、人並みに人生ってやつがあったんだよチキショー」


「本当にすいませんでした!」


「……顔、上げな」


 土下座させたままじゃ話もできやしない。

 私は腕組みして、あぐらをかいた。

 涙目の女神を見ると、まあ少し殴りすぎたかなという気にもなってきた。

 終わった話だ。

 仕方ねえ。

 変えられるのは未来だけだ。


「転生できるならヨシ……とは言わないけど、まあ、できないよりはねえ」


「はい。転生特典もお付けします!」


 どうぞお受け取りくださいと冊子を差し出された。

 開いてみれば、スキル一覧とか、魔法がどうのとか、伝説の武器だとか、後ろのほうのページには家具や化粧品、ハムの詰め合わせみたいなものまで載っている。


「ええっと……カタログギフト?」


「はい。転生特典用です!」


「この中から選べと?」


「はい! どれでもお好きなものを差し上げます!」


「なあオイ」


「は、はい……!」


 私は胡乱な目で問うた。


「これ1回ぽっきりじゃねえよな?」


「1回ぽっきりですけど?」


「ですけど、じゃねよ」


「ひゃい」


 死んだお詫びにハムとかもらってどうするんだよ。

 狂ってんのか、お前。


「毎日贈れ、私にカタログギフトを。それが誠意ってものだろ」


 私は女神の華奢な肩に腕を回して、艶やかなほっぺをペチペチした。

 あぁん?


「毎日はちょっと……。月に1度でどうでしょうか」


「毎日」


「じゃ、じゃあ、週イチで」


「毎日な? はい決定」


「で、でも……」


「わからねえ耳だな。あんたの頭蓋骨パカッと開けて中身と直接商談してやろうか?」


「ひぃう……。わかりましたぁ」


 腕ノコギリで頭頂部をギコギコすると、女神はようやく折れた。

 被害者と交渉しようとすんなアホ。


「で、でも、本来1回ぽっきりの特典を毎日なんて、ほかの転生者の方々と釣り合いがとれません」


 ほかの転生者ってなんだ?

 ほかにも手違いでぶっ殺しちゃったのか、このアホは。


「代わりと言ってはなんですが、魔物とか見かけたら倒してくれません? これからシーナさんがいく異世界には魔王復活の予兆が出ているのです。その眷属たる魔物は見過ごせないんですよ」


 すごい世界に転生させようとしてるな……。


「まあ、そのくらいの交換条件なら飲まないでもないよ」


 怒りすぎて疲れた……。

 もうさっさと転生させてくれ。


「それでは、シーナさん。二度目の人生を存分に楽しんできてくださいね!」


 ばいばーい、と女神が手を振る。

 やっぱ腹立つな。

 もう一発殴っとくか、と拳を握ろうとしたところで、私は真っ白になって何もわからなくなった。


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