15 迎えの馬車
「今日のカタログギフトは召喚獣特集かー!」
ベッドにごろんして私は脚を組んだ。
カタログギフトはランダムで送られてくる。
スキルや魔法を幅広く網羅したもの。
武器しか載っていないもの。
異世界の伝説的食材を集めたもの。
異世界ファッション特集などなど。
私は夜10時半には寝る派だけど、どんなカタログギフトが届くか気になるから、異世界に来てからは夜更かし気味だった。
「おい、ニャンコ猿。あんたより役立ちそうなペット、いっぱい載ってんべ。この竜、騎乗して空飛べるってよ!」
窓辺で星空を眺めている小さな背中に私は声を投げかけた。
アルニャンがムササビみたいに飛んでくる。
なお、すぐ落ちた模様。
ぼすん!
「ボクが四ツ脚広げてもお空はちっとも飛べないニャ。でも、飛べるそいつはボクのように可愛く盗みはできないニャ」
「みんな違って、みんないいってか?」
「ボクこそが至高ニャ!」
あざとく転んで上目遣いに、ニャー。
あっは。
「ろくでもないけど可愛いねえアルニャンは!」
「ごろごろニャー!」
城塞都市リトマスの宿屋通り。
異世界10日目、無事終了。
冒険に出かけて魔物を狩る。
夢のカタログギフト生活目指してGPを稼ぐ日々が続いている。
明日もその予定だ。
カタログギフトのシステムはだいたいわかってきた。
消費できるギフトポイントはカタログ1冊につき10GPまで。
10GPすべて使うと、カタログは消えてなくなる。
3GPだけ使った場合、残り7GPの余地を残したままストックされる。
1GPも使わなかった場合は完全な形で残る。
積ん読だ。
今、3冊積んでいる。
所持GPは30。
カタログギフトが私の力の源だ。
積めるだけ積んどこう。
GPももっと稼がないとな。
「アルニャァーン! おやスゥゥゥゥゥハァアアアアア!」
「んニャア吸わないでほしいニャ……」
そして、翌朝。
私はいつものように魔物狩りをすべく冒険者ギルドに向かった。
依頼料で装備を揃えたから私もすっかり冒険者って出で立ちだ。
でも、メイン武器はその都度とっかえひっかえにしている。
だから、未だに丸腰だった。
そろそろコレってものが欲しいな。
ま、また今度考えよう。
「アルニャンはよく無装備で町歩けるね。うっわぁ……」
「露出狂みたいに言わないでほしいニャ。ボクは毛皮が最上級コートなのニャ!」
「暑いでしょ? 脱がせてあげよっか」
「ニャァ……」
存在感の薄い妖精としゃべっているせいで、すれ違う人が、独り言言うヤベエ奴を見る目で通り過ぎていく。
黒髪だから余計心象が悪いらしい。
こんな私でも冒険者としては認められるようになってきた。
ドエリザベスとかいう巨漢をノックアウトしたり、初依頼でハッピイグリザルを討伐したり、とそのへんが評価されているっぽい。
冒険者ギルドに到着。
今日も冒険者たちが畏怖するような目でチラチラこっちを見つめている。
「リズさん、おっはー。今日は人が少ないですね」
「あ、シーナさん。おはようございます。アルシーフェさんも」
受付嬢のリズが笑顔を添えつつ、アルニャンの頭をなでた。
「おいしそうな依頼あります?」
「今やシーナさんはこの町のトップ冒険者ですからね、名指しの依頼がたくさん届いていますよ。やれドラゴンを倒せとか、やれ伝説の魔物を仕留めてこいとか」
「あはは……。ほどよいやつでオナシャス」
ひとつ笑ってからリズは私の後ろを手で示した。
「でも、今日はもっと重要な依頼があるようですね」
振り返ると、そこには光の化身のごときイケメンがいた。
どこの国の王子様!? って感じのご尊顔。
振り返ってこんなのいたら、私は死ぬまで振り返り続ける病気にかかるぞ!?
あれよ。
ウサギ目当てに切り株と睨めっこする農夫みたいな感じで。
「シーナさん、君を迎えに来た」
光の王子ルシウス君はにっこり笑ってそう言った。
きゃああー、と受付嬢どもが騒ぐ。
うるせえちょっと黙ってろ。
今、私のラブコメが始まりそうな予感なんだよ。
「僕と一緒に来てくれ、シーナさん」
「う、うん。どこまでも!」
「君に領主直々の依頼があるんだ」
「……おんお」
変な声が口から出た。
受付嬢たちが仕事に戻った。
木っ端冒険者たちだけが「領主案件かよ。シーナさん、すげえ」とかリアクションしてくれている。
ラブはなし。
ただのコメディーか、チッ。
でも、領主邸への道中、狭い車内でルシウス君と相席できた。
この馬車、リトマスを3周くらいしないかなー。
世界3周でももちろん可。




