1 プロローグ
いつもと同じ通学路。
心臓破りと呼ばれる、だるい坂。
夏、真っ盛り。
暑さもだりぃ……。
「……」
私はふと顔を上げた。
坂の上にトラックが1台。
運転手が降りてきて、ダンボール箱を抱えて離れていく。
無人のトラックが逃げ水の向こうで揺れていた。
「……ぁん?」
トラック、――動き出す。
ぬるぬると徐々にスピードを上げて。
あれだ。
サイドブレーキのかけ忘れ。
「あかんやつやん」
このときの私はまだ対岸の火事だった。
気だるげにガニ股で棒立ちし、女子力を捨てて傍観していた。
トラックがぬぅ、とこちらに向きを変えて、ようやくヤベェッとなる。
加速しながら私に向かって突っ込んでくる。
避けようとして私は右に走った。
すると、トラックも右へ。
私は足の裏でズザザァ、と音を立てて反転。
左にガンダする。
すると、トラックも左へ。
まさかのJKホーミング・トラック!?
「あ、――ほいっ!」
びたアアっ!
私はとっさに腹這いになった。
右も左もダメなら下くぐればええやん!
自認IQ3億の天才だから、そう思った。
しかし、そうはさせぬと前輪が2つともパンクした。
車高ががくんと下がり、バンパーがアスファルトをゴリゴリ削りながら火花を散らす。
「あぎゃああああああ……っ!」
くそが。
正解は上だったか。
「きゃあああ!」
もはや私にできることはコレだけ。
人生最期の悲鳴を、あぎゃああ、よりマシなものに差し替える。
コレ。
――あぎょん。
私は死んだ。




