表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

EP6 ◇四者怪談で船が出た?◇


______福山電池との話し合いは、中華飯店の定休日になった。


「ほぉ、この人が噂の臓器売買の闇ブローカーか?」

「ち、違いますよ」

「大将、この男はね、私みたいな美少女を売り飛ばす<組織>の人間だよ」

「シンジケートね」

 母も、福山電池を怪しいと睨んでいたのだ。

 ダン!


「だからぁ~、ボクはシンジケートでも闇ブローカーでもないんですってば!」

 堪らず福山電池が机を叩いた。


「しかしなぁ麗美ちゃん、俺も一応調べてみたけど、真っ当な会社だったぞ」

「でもさ、屋台にロゴ貼るだけで、私の屋台を改造してくれるなんて.....どう考えても怪しいじゃん。やっぱり美少女の私を東南アジアに売り飛ばすんつもりなんじゃ。顔がいいから、そうやって美少女を騙しているんだよ」

「確かにマサハルに似ているわ」

 ポッ


「母ちゃん、なんで顔が紅いんだよ! これがこの男の手口なんだってば!」

「あの~、いい加減、ボクの話を訊いてもらえませんか?」


 呆れた顔をしているのは福山電池だ。

「今や自転車、キックボード、シニアカーなどモーターでアシストする分野が増えていまして、屋台は実験モデルなんです。この先電動台車、電動小型リフトなど、我が社は生活に密着した製品を開発しているところでして」


「だけどラーメン屋台では、あんまり宣伝にならないのでは?」

『呪縛が解けたかGJ母、もっと言ったれ。この粘着変態男に』


「宣伝とは何か。TVCMや広告ばかりがCMではないのです。屋台は人が集まる場。そこでは珍しい電動屋台の話題も出る筈。まず知って貰う事が大事なんです。私の会社はまだまだ知名度が低く、お嬢さんの屋台に言わば投資したいのです」


「ま、理屈は通るけどな、しかし屋台の電動化なんて需要があるのか? それを全部ロハでやるってんなら、俺は反対はしないがよ」

早くも大将が折れた。


「勿論ロハです。しかも冷蔵庫まで付けると言う出血大サービス。さぁこのチャンスをお見逃しなく。受付は今から30分間!お電話お待ちしています」


『まるでシャバネットじゃねぇかよ、福山電池! それでどこから血ぃが出るんだよ』


 疑惑は兎も角、会社はちゃんとあるしネットの評価もいい。私は意を決して屋台の電動化を頼む事にしたのですが、改造には屋台を会社まで持って行かれてしまうので、この際、福山電池が代替えを用意してくれる事にまでなったのです。

『何故、そこまでする福山電池......やはり目的は、この美少女のカラダか!』


 閑話休題


 それでリニューアル屋台が出来るまでは、仮物の屋台で営業となりました。

「一か月待って貰えます?」

「しゃぁねぇなぁ」

『上等だ。それくらいなら待ってやるけど』

 タダで作って貰うのに、武士の商法も真っ青な私の態度である。よくこれで福山電池が激怒しないものだ。


 父の形見の屋台を盗られる訳じゃなし。私に損はないのでした。

「福山電池さんよ、やっぱり目的は私だよな」

 ギク


『今、完全に目が泳いだぞ』

それから毎日が平穏に過ぎていったのですが、それでも昭和の味とは何か、研究は続けてたよ。


◇初号機納入の儀◇


______あれから福山電池が顔を出す事はなかった。

ラーメンの売り上げは、なんとか30杯を完売出来る程になりました。

「上出来だけど、でも昭和の味って何が違うんだろう。誰も教えてくれないしさ」

 世の中、人から教えられない物は沢山ある。ゼロから試行錯誤して立派な人物になった人は多いのだ。

「例えばソーイチロウ・オンダとか」


______約束の一か月が経過。

 納品は定休日の中華飯店の前だ。

横付けしたトラックのクレーンから、カバーで覆われたままの屋台が降ろされた。


「大変お待たせしました」

『福山電池が妙にニコニコしているけど、余程の自信作なのか? 一般的な屋台を電動にしただけだろうに。まぁ折角だし見るだけ見て、ケチ付けて返品したろか』


 では!

トラックのスピーカーから、ドラムロールの音まで出しやがった。

 バーン

それに合わせて、福山電池の子分達がカバーを捲った。

 おぉ

ちょっと全長が長くなっていて、それに四輪仕様だった。


「どうです? 四輪なので安定しますし、お客さんが四人は座れる長さですよ。ちゃんと収納折り畳み椅子も付いてます。目玉はこの屋台は四輪駆動でタイヤはオールシーズン、アイスバーンでも安心なのです」

 ほぉ~

『ジムニィかよ! それに凍結してたら休業するぜ普通』


 新屋台は雰囲気を壊さない為の木製を維持、赤ちょうちんや照明を点灯すれば、屋台として不満はない。


 よく見ると、屋台後部裏には鉄板で<新昭和電池>の看板が付いていた。

「でかい。それよりこの赤い暖簾は?」

「フッ、屋台の屋号ですよ」

 福山電池はさらりと言ってのけた。


<歌うメイドラーメン屋台麗美組>


 「何ですの? これ」

 母も怪訝な顔をしていた。

「いや、政さんや鉄さんの要望でね、即採用したんですよ。そうしたら意気投合しちゃいましてね。いやー良かった良かった」

『って事は福山電池も<舎弟>になっちまった? なんだよそれ』


「いやね、お嬢の屋台ラーメンはね、<麗美組>でもう有名ですから。メイド姿で気風がいいと、その筋の人にジワジワと評判なんですよ」

「どの筋だよ! 腹筋か?」


「それでその暖簾まで作ったんかい? そんな看板背負ったら、お客人が寄り付かないんじゃ?」

「大丈夫、大丈夫。モーマンタイ!」

「福山電池おめぇ、中国人だったんかい」

「いえ、生粋の日本人です」

「本当におめぇ、謎まるけだな、おい」

「お褒めに預かり恐悦至極です」

 もうええ。


 私の心配をよそに、(しんぞうやたい)はもう出てしまったのです。

「固定のお客人はなんとかMAX30人。これ以上増えても......私が困る。うん、これ位が私には丁度いいんだ。地道にいこう」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ