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EP5 怪しさ100%の福山電池 。おめぇは何もんだ!


______「それにしても、なんでお客さんが口を揃えて、これじゃないって言うんだろうね? それほどのラーメン通だけが私の屋台に来たって言うのかい? まさかそれはないでしょうよ」

 すると


  バタム

   バタム

 「急いで急いで。放送に間に合わんぞ」


 そして何日かが経過すると、慌ただしく器材を積んだ撮影クルーのワゴン車が、マイ屋台の前に止まったのでした。

「おっ あれだあれだ。キャメラ レディ?」


 どうやら、威勢のいい変態美少女メイド屋台の噂を訊きつけた、地元TV局の食レポらしい。


 3.2.1

 Q

「はい私は今、最近話題の変態メイド屋台ラーメン前からお送りしています。早速、メイド少女にインタビューしてみましょう」

 地元小TV局のGEP(げっぷ)だ。


『おい、おねぇちゃん。どうして私が変態扱いになってるんだよ。それにスタッフのあれって何だよ失礼だろがよ。ギャラが出るなら我慢するけどさ......ラーメンは食っていくんだろうな』

この手の取材には金が出ないのだ。


 それに私はアポなしで、くどくどあーだこうだ訊かれるのは好きではない。

当たり前のような顔をして、GEPマークが付いた赤いマイクとカメラを向けられると、余計にイライラしてくるんだよ。

何故なら、いろいろあってうら若い元JKの私が、必死で屋台を曳いているからです。


「あのよ、こちとら遊びでやってないんで。あんた達みたいに、安定垂涎の月給やボーナスが貰える身分じゃござんせんので! 取材は断固NG!」

と、威勢のいい啖呵で追い返してやったのです。


「チィなんだ、折角来たのに女やくざ屋台かよ。おい撤収だ、撤収」

ぶつぶつ言いながら、GEPクルーは引き上げていきました。

すると

  ぱち 

   ぱち

 と拍手が鳴ったのには驚きました。


◇屋号は<麗美組(うるみぐみ)>どうしてそうなった!◇

______「いやぁ~お見事! 嬢ちゃん、俺ら嬢ちゃんが益々気に入った。あ、俺、醤油ラーメン大盛、メンマとチャーシュートッピングで」


「あ、あいよ~」

「じゃ、俺っちは味噌で大盛。でもさ、キンキンに冷えたビールも飲みたいんだよな」


 うへ!

『だよねぇ~』

 ラーメンに酒は必須。私はそこまで頭が回っていなかった訳では無いのですが。この二人は貴重な準常連さんで、少し特殊な人達だ。


「ほ~らね」

聞き覚えのある声に振り向くと案の定、嫌な男がまた沸いて出た。

「げ、福山電池! おめぇか!」


「酒やビールを提供するにしても、冷蔵庫は必要でしょ。だからさ、ボクの提案を訊いてよ」

 ム

  ム


 一瞬で屋台が不穏な空気になったのです。

「おいあんちゃん、あんた俺達のお嬢に、なに因縁をつけてんだよ」

 へ? お嬢? 誰が? いつからそうなった?


「なんだい君達は? ボクはただビジネスの話をしているだけだよ」

「はぁぁ? 馬鹿か、お嬢が迷惑だと言ってるだろうが! なぁお嬢」

 ん、まぁ確かに......。

 私はこの男の粘着質には迷惑をしている。それとお嬢と呼ばれる筋合いもないのだ。


「あのな、俺達は屋台ラーメン<麗美組>の舎弟だよ青二才!とっとと帰りな」

知らない間に、準常連の(まさ)さんと(てつ)さんが舎弟? それに屋台の屋号が<麗美組>になっているし。

 この二人はアパートの住人で、工事現場で働いているそうだ。

でも正規社員ではないらしい。


 夜の赤ちょうちんは、そんな人達のいろんな愚痴や悩みの相談場所にもなっているのです。

 『父も、いろいろな人の話を訊いてあげていたんだと思う』


「いやだぁ政さんと鉄さん、それじゃぁ、私が親分みたいじゃないですかぁ」

「お嬢、違うんですかい?」

「ちげーよ!」

「それそれ! その威勢のいいとこが堪らんのよ」


 ......。

「あのぉ、笑えないコントは終わりにして、ボクの話を検討して貰えませんかね?」

「なんだぁ? 青二才おめぇまだいたんかよ!」


すったもんだも面倒なので、私は福山電池の話だけは訊いてやる事にしました。

「おう、あんちゃん、ラーメンは大盛、各種トッピングで頼めよ」

「じゃ、醤油でネギ大盛、チャーシュー3枚追加で」

「あいよ~!500円追加ぁ!」

『ふっ、売り上げ1000円』


◇これは渡りに船なのか?◇

______福山電池の話はよく訊けば、結構有難い話だった。

①電池とモーターのアシストで、屋台を曳く力が軽くなる。

②電池は赤ちょうちんや冷蔵庫の電源になる。

③酒やビール、椅子などを積んで曳いても軽い事。


 確かにビンビール1ケース、冷蔵庫、それにガスボンベを積めば、美少女一人の非力ではかなりシンドイのだ。

屋台と言えば、ビールはキレジのラガー。それもビンが玄人だ。

訊けばそれらのアシストを、広告バナーを貼ってくれるだけでOKと言う、実に怪しい申し出だった。


 今は中華飯店のロゴ一つだけれど、スポンサーがついたラーメン屋台なんて恐らく世に存在しない?

『F1マシンじゃあるまいし......でもそれも面白いかも』


「お嬢、こんな話にゃ裏がある。のっちゃいけないぜ」

『確かに話が上手すぎる。しかし騙されたとして、こんな美少女に何がある? はっ、まさか東南アジアに売り飛ばすか、それとも臓器売買で金にするつもり?』

 ジト


「また物騒な事考えなかった? あのね、ボクの名前は昭和元(しょうわ はじめ)。名刺に書いてあったでしょ? 会社の所在も電話も本物。疑うならちゃんと調べてよ」


 確かに名刺は貰ったような。しかしそんな怪しい名刺なんぞ、私はとっくに捨てたのだった。

私一人ではと、結局、中華飯店の大将と私の母親を同席させ、後日また話合う事になりやした。


                =====では、こんてにゅう!?



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