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EP1 元JKの私が生きる道 それはラーメンから始まった!

 元JKが選んだ人生は、令和の時代では珍しい。

人生は金。それは間違いではないけれど、お金が全てではなかった。

それを教えてくれたのは......なんと!

屋台に集ういろいろな人達と、謎の人物との関わりが何を変える。


挿絵(By みてみん)


______草木が眠るにはまだ早い19時。

「デビューの出だしからなんなのさ。丑三つ時なら真夜中でしょ?」

 ヒョォォ~

10月のひんやりし出した夜風が、汗をかいた肌には気持ちいい。

 へ、へ、へくしょい ブシィ


「なんだアレは?」

家路を急ぐ人達に、この辺りでは奇異な物が目に入った。

それは一つの黒い人影が、リヤカーを曳く姿だった______


ぷひャララァ~ぷす チャララララ ブヒぃ~♪

「まだ駄目だぁ~うまく吹けないなぁ。でもこれ間接キッスになるんだよね。熱湯消毒で殺菌しまくったけどさ」


 夜は帰宅した多くの人達が、家庭でくつろいでいる時間。

『しかし仕事を家に持ち帰る人......いるんだろうな。父みたいに......人生は金、幸せは金で買えるんだ』

 ぷひャララァ~ぷす チャララララ ブヒぃ~♪

昭和という時代を生きて来た人達なら、おぉッと懐かしさを感じるかもしれないのがチャルメラの()


「マジにこんな音では、騒音撒き散らしているだけかもね。苦情が来て(さつ)が来たらどうするべ。リヤカーって免許いらなよね、確か馬と一緒」

 木製レトロな屋台を曳き、まるで慣れないチャルメラを吹きながら、私は始めたばかりのラーメンを売り歩いているのです。


 私は麗美。新藤麗美(うるみ)。まだ今年、高校を卒業したばかりの美少女です。(お客さん、言うだけならタダでっせ)

唯一の欠点と言えば、言葉が悪い事だろうか。なにしろわっち名古屋だで。

「18歳のピッチピチなJKが卒業しても、まず選ばないよね、この商売は」

 華のOLとは違う道だけれど、慣れればこの商売、やってみればなかなか奥が深いんです。

何故か......それは話を進めながら明らかにしていきましょう。



挿絵(By みてみん)

ラーメン屋台を曳く父の姿 By DDBANK様 free素材


◇人生の分岐点が突然来た◇

______2020年1月

 私の父は、務めていた会社を四十二歳で途中下車。それ以降、心に温めてやりたかったラーメン屋台を曳いていました。この時の私はまだ中学生で、高校進学を前にしていた微妙にデリケートな時期。

『父は日頃ラーメンの研究をしてた。早い時からやりたい事を見つける。私は、人生は人それぞれなんて思ってた』

 でもラーメンで利益が出るまで、どれだけ時間とお金がかかる事か。


「父がブラックな会社を辞めたから、生活の為に私は中卒で社会人ってのも人生、私が大学まで行く必要なんて______ないよなぁ。うん、まずない」

 私は早くから人生の目的を見つけたと思っている。父の転職は、有難い神様の啓示に違いないとまで。

私はずっと父と母を見て育ったので、早くから人生を達観していたのかも。

『両親は優しい人だ。そこに不満はないよ』


◇現金は偉大である◇

 父が稼いだ月給という、それはそれは有難くも眩しい収入を失ってから、母も近所のスーパーのレジ打ちパートに出たのでした。

「母もキーを叩いて頑張っているのです! 私もフンドシをギュっと締めなければ! あはん おフンが食い込むぅ______馬鹿な妄想をしている場合じゃない。私は女だけどさ。じゃぁそこはTバックで......そんなもん中学生が穿くかぁ? 紅茶のティーバッグでも飲んで頑張るべ!」


 父は本当に不器用な人だった。会社組織の中で成績を残せず、そのせいで出世などする筈もなく、次第に若手の部下に追い越されていくのを、非常にプレッシャーに感じていたのでした。

「父上、人間、得手不得手があって当然でっせ! 出世がなんぼのもんじゃ!」

私は父の出世街道などに全く興味がなかったし、私だって女一匹、人生なんでも出来るだろうと思っております。


「お父さん、どうせやるなら笑顔や満足が得られる仕事がいい。屋台ラーメンに転職したいのは、その為なんでしょ?」

私は思った事をはっきり言えるタイプです。

「麗美、それが茨の道かもしれない。しかし父さんはやってみたいんだ」


 母も毎日、仕事で思い悩む父に怒る事はなく「自分のやりたい事をすればいいじゃない」と言って、私同様に父の転職の後押しをしたのです。


「......そうかお前達、俺は本当に屋台ラーメンを始めてもいいんだな?」

「あなた当たり前でしょ。人生は一度きり。だったらやりがいのある仕事をすればいいじゃない?」

「だけど※夕子(たこ)、俺の我儘で家族の生活が......俺はそれが辛いんだ」

 ※父は母の事をそう呼んでいました。


「お金の事? 何を言ってるの。贅沢しなければなんとかなるでしょ。幸せって何かは、それは人それぞれよ、あなた。だけどね、好きなお酒は止めなくていいから。息抜きも必要よ.....ただし安い焼酎にしてね」

 お おぅ

 ♪なんでもないよな事がぁ~ 幸せだったと~

「トラブルのロード、いい歌じゃん」


「ありがとうお前達ぃ。焼酎飲んでもいいんだな」

 うっ

 私はその時、父の涙を初めて見たのです。

『男だって泣きたい時には泣く。涙は女だけの武器じゃない。私が泣いたのは滑って転んで、頭にたんこぶを作った時くらい』



______両親の仲が良かったからとは言え、始めたばかりの屋台ラーメンがすぐ軌道にのる訳もなく、私の家計は質素倹約生活にドドーンと突入。

 おぉ貧乏神さんいらっしゃい。でもあんた仮にも神だよね。まさかあんたが私に人生の啓示をくれた神? 


 「お父さん、お米が高いならパンの耳、もやし、ヒエやアワでもいいし、おかずも減らせばいいんだから。歴史で習った昔の人の生活を経験できる一石二鳥。そして何よりダイエット!」


「いや......麗美、そんな生活なんか、俺のせいでさせられない。あのな、ヒエとアワなんか食べた事ないだろ。俺だってないんだぞ。いまは戦後じゃないんだ」

 ヒエ~ アワワワ

 と、馬鹿な事言っている場合ではないのです。


 さすがにこれではと思った父は、短時間交通整理の旗振りを始め、家計を支えてくれました。

『私も無理しないで......とは言えないんです。本当に生活が苦しくなったから。流石は貧乏神! しっかり仕事するじゃないか』


______2020年4月

 そんな状況でも、私は無事なんとか学費の安い公立高校に進学。

「ふぅ、まずは第一段階クリア!」


 何がって高校生なら夏休みは、よく食べに行っていた中華飯店でバイトをし、ついでにラーメンの作り方を盗み見してと。それで家計の足しに出来るでしょ。

「携帯でっか? 持ってませんよ。友達には、持たないのは私のポリシーだとやせ我慢。今時、JKが携帯を持ってないと不便なんだけどぉ~実際。Z世代にゃ理解できないだろうね。サザエさんの磯野家に出て来る黒電話は知ってると思うけど、北の金と言う指導者のヘアスタイル、クリソツだよ。あっ、私もZ」


 さてバイト先の中華飯店では、JKの私の愛想の良さが評判に。大将と晴子奥様も満足し、土日も来てくれないかと言われていました。その秘密は。

「ふふッ、秋葉メイド服を提案してよかった! 前から着たかったんだよね」

『そのせいで私は、ルンルン気分だったんよ』


 提案した中華飯店でメイド服は、大うけで客足が伸びて売り上げに貢献したのです。

若い人から年配の方まで。ちょっとばかし、モデルになろうかなんて思ったりして。いえね、流石にグラビアは無理ですけど。

「成せばなる! 美容整形がある! だが断る! 金がない!」


 私がバイトをしない日は、なんと小太りの晴子奥様(五十五歳)が私のメイド服を着たそうな。その華麗な姿はパンパンでお肉がはみ禁。ついでにほんわか加齢臭付。

 それでガラッと扉を開けたお客さんが一瞬、青ざめたらしい。

「げッ」

と言って後ずさりした笑い話があるそうな。


「あのぉ、営業を妨害してません? それ私用のSサイズなんですけど。大将も止めろって言ったんですけどねぇ。いくつになっても女は乙女ですわ」

今から思えば、もうこの時から自分の進むべき道を決めていたんですね......そんな気がしていました。

______「以上、イントロダクション終わり。次話に続くかな~? まぁ、こまけぇこたぁいい。いざとなりゃ短編に変更するだけさ」



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