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第六章:沈黙の夜、こぼれた涙
その夜、美由紀は、家に帰ってもメイクを落とせなかった。
鏡の中には、いつもなら自信をくれるはずの美由紀の顔があった。でも、今は違った。アイラインは少しかすれ、リップももうほとんど落ちていた。どこか虚ろなその顔を見て、ふっと笑ってしまった。
「……何やってるんだろ、私」
信じた人に、期待してしまった。自分が誰かに“女の子として”見られたことに、どこかで浮かれていたのかもしれない。甘かった。浅はかだった。だけど、美由紀は、ただ「誰かとつながりたかった」だけだった。
涙は気づけば、スッと頬をつたっていた。