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第五章:信じた分、痛みも深く
レナとの出会いから、美由紀の世界は大きく広がった。毎週のように女装カフェに通い、そこで出会う仲間たちと笑い合い、時には涙をこぼし合うこともあった。
レナはその中でも特別な存在だった。優しくて、気さくで、美由紀のメイクも服選びも褒めてくれた。まるで姉のように慕っていた。
そんなある日、レナに誘われて、とあるバーに行った。
「美由紀なら、きっと気に入るわよ。大丈夫、私がいるから」
けれどその夜――美由紀は、自分が**“場違いな場所”**にいることに気づいた。
雰囲気が違った。店の男性客は、どこかじろじろと品定めするような目でこちらを見ていた。レナは楽しそうに振る舞っていたが、美由紀は心のどこかで警鐘が鳴っていた。
「レナ……ここ、本当に“そういう”お店じゃないよね?」
「なに言ってるの、美由紀。ちょっと話すくらい、いいじゃない」
そして、レナは「大丈夫よ」と微笑んだ。
でも――
美由紀は、その夜の出来事を、誰にも語ることができなかった。