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第二十六章:誰かのために、立つ
数ヶ月後、美由紀はサロンで初めての“講座”を持つことになった。
テーマは――「自分で選ぶ、私の性とスタイル」。
受講者の中には、自分と同じように“女装”や“性別違和”に悩む若者もいた。彼女は、かつての自分のような目をした子たちに、静かに語りかける。
「性別も、恋も、誰かの型に合わせる必要はない。あなたが“何者であるか”は、あなたが決めていい」
その夜、講座を終えて帰ると、慎が玄関で待っていた。
「見てたよ。……すごく、綺麗だった」
「ううん。まだ怖いよ。でも、今の私は、ちゃんと“自分で選んだ私”だから」
慎は黙って、美由紀を抱きしめた。
「愛してるよ、美由紀」
その言葉に、美由紀は、もう迷わなかった。




