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第十九章:触れ合うことの重さ
慎の部屋で、二人が初めて唇を重ねたのは、ほんの小さなきっかけだった。
映画を見ながら、隣に座っていたとき。ふと手が触れ合い、見つめ合って……慎が、美由紀の頬に触れた。
「キス、しても……いい?」
その問いかけが、美由紀にはたまらなく優しかった。
「……うん」
慎の唇は、温かく、そして驚くほど繊細だった。強引に求めるでもなく、ただ、美由紀がそこに“いる”ことを確かめるようなキスだった。
その夜、美由紀は初めて、**「自分から身体を預けたい」**と思った。
脱がされたのではなく、脱いだのは自分だった。男としてではなく、女装子としてでもなく、“美由紀”として。
慎は、すべてを受け止めてくれた。言葉も、姿も、震えも、涙も。
けれど、それと同時に、美由紀の心に小さなざらつきが生まれた。
「これって……私が“特別だから”抱いてくれたんだよね……?」