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第十八章:名前を呼ぶその声で
それから数週間、美由紀は慎との関係に揺れていた。
恋愛感情なのか、依存なのか、安心なのか。そのすべてが入り混じり、彼と会うたびに胸が締めつけられる。
ある晩、美由紀は勇気を出して言った。
「私……本当に“恋をしてる”のか、分からない。でも、あなたの前では、美由紀でいたいって思う。それだけは、確か」
慎はしばらく黙っていた。そして、穏やかな声でこう答えた。
「じゃあ、それだけでいい。俺も、今すぐ“恋人になろう”とは言わない。けど、美由紀としての君を、ちゃんと見ていたい」
その言葉に、美由紀は静かに笑った。
「ありがとう。……名前を呼んでくれて、ありがとう」