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第十七章:契約と、感情の狭間
その夜、美由紀は慎の部屋を訪れた。
特別な器具も道具もなかった。ただ、ベッドと椅子と、あたたかい灯り。
「美由紀……今日はプレイじゃない。俺は、君がただここに“いる”ことを、大事にしたい」
慎の手は、支配するためのものではなかった。肌に触れるのではなく、心に触れるような距離で寄り添ってくれた。
キスを交わすこともなかった。ただ、慎の胸に抱かれながら、美由紀は泣いた。
「……こういうのが、いちばん苦しいんだよ……好きになっちゃいそうで、怖い」
慎は答えなかった。ただ、背中に手を回して、抱きしめた。