16/27
第十六章:重ねられる距離
慎との関係は、ゆっくりと近づいていった。
プレイの相手としてではなく、まずは“話し相手”として。だが、何度かサロンで会ううちに、互いの存在が“安心”として日常の中に染み込んでいく。
慎は美由紀のことを、女装子としてではなく、「美由紀」として見ていた。
「……てつっていう名前があるけど、私はやっぱり、美由紀でいる方が、自分でいられる気がする」
「うん。俺は、美由紀さんが笑ってると、ホッとする。どっちの名前でもいいけど……今のあなたが、すごく自然に見える」
その言葉が、心に静かに沁みた。
やがて慎は、そっと美由紀に言った。
「もし、美由紀さんが望むなら……君のことを、“預かってみたい”」