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第十一章:信頼の輪郭
最初のプレイは、目隠しだけだった。
何も見えない状態で、ただ黒澤の言葉に耳を傾ける。柔らかな声が近づいたり、少し離れたり。その気配だけで、心臓が高鳴る。
「美由紀さん。ここでは、あなたの“嫌”は絶対。“いや”と言えば、すべて止まります。それがこの世界のルール」
その声が、背中に温かい手のように触れる。
「怖くない……ですね」
「うん。あなたはここで、ただ“感じて”いればいいの。何者かになろうとしなくていい。ただ、美由紀として、そこにいればいい」
そう言われたとき、美由紀は初めて、自分が女装子だとか、元は男だったとか、そんな“外のレッテル”をすべて忘れていた。ただ、自分という存在が、今ここに「在る」こと。それが、心の底から愛おしく思えた。