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お父さん、どうして?

 それはそれはもうもうぶったまげたぼくは、一目散に茶トラ先生の家へと爆走した。

(お父さんが死んだお父さんが死んだお父さんが死んだぁ~~~~~~~~)

 頭の中が真っ白。

 走りながら何度も腰が抜け、足ががくがくし、途中で何度も転び、最後ははうようにして、やっとの思いで茶トラ先生の家へ近づいた。

 するとなぜか、少し心配そうな茶トラ先生が庭に立っていた。

 それでぼくは、

「たたたたたたたた、大変だ大変だ大変だ~、茶トラ先生ぇ~~~おおお、お父さんがぁ~~~~、お父さんがぁ~~~、死んじゃったよぉ~~~。ぼぼぼぼ、ぼくんちで、おおおお、通夜をやっているんだ!」

 それからとりあえずぼくは、たった今ぼくの家で見たことを、渇いた口でしどろもどろに、でも何とか茶トラ先生に報告した。

 すると茶トラ先生は一瞬驚いた表情を見せたが、なぜかとても冷静にぼくの話を聞いてくれ、そして冷静にこう言った。

「ともあれ、まあ落ち着け。実はわしも何故か、妙な予感はあった」

「妙な予感?」

「とにかく落着け。それなら、あ~、調査をせねばなるまい…」

「…分かったよ。おおおおお、落ち着くよ。ででででで、ちょちょちょ、調査?」

「とにかくお前さんは、あ~、これからただちにタイムエイジマシンに入れ。これからお前さんを、う~ん、三十歳の姿にするとしよう」

「どうして?」

「いいからいいから」

「いいからいいから?」

「ともあれいいからいいか…、おおそうだ、大事なことを忘れておった。おまえさんすぐに服を脱げ。パンツまで全部だ」

「え~、パンツまで?」

「そうだ!」

「どうして?」

「いいからいいから…、いやいや、あ~、いまからお前さんを三十歳の姿にするんだ。だからそんな小学生の服のままだと…」

「ぼくが大きくなって、服がはち切れちゃう?」

「そういうことだ」


 そういうわけでぼくはタイムエイジマシンのカーテンをばっちり閉め、服を全部脱いだ。

 少し恥ずかしかったけれど、状況はそれどころじゃないし。

 脱いだ服は全部、マシンの床に何となく置いてあった小さなかごにいれた。

 すると茶トラ先生が、

「パンツぐらいはいておけ。わしのパンツだ。ちゃんと洗濯してあるから変なものがうつる心配はない。これは木綿のパンツで、イカした柄だろう?」とか言って、カーテンを少し開け、大人のサイズのパンツを投げ込んでくれた。

 それでぼくが恐る恐るはいてみると、ずり落ちそうなくらい大きくて、黄色に黒のストライプが入っていて、すご~くダサかった。

「ねえ先生、これって『茶トラパンツ』じゃん!」

「いいからいいから」

 それから少しして、機械がブーンとうなって、赤いランプが光り、ぼくは生暖かくなって、そしてぼくは予定通り三十歳の姿にされた。

 ちなみに茶トラパンツは、三十歳の姿になり大きくなったぼくには、ぴったりのサイズになっていた。

 そしてぼくはタイムエイジマシンの鏡で、自分の姿を見た。

 すると思い切りおじさんになっていたのでぼくはとても驚いた。

 それに、しゃべってみると大人の声だった。

 それからぼくが茶トラパンツ一枚で外に出ると、茶トラ先生は、

「さてさて、喪服を二着用意せんといかんな」とか言い出し、家の奥の方へ行き、しばらくごそごそと探し物をしていたけれど、やがてスーツとズボンを二組持ってきた。

 だけどそれらのスーツは…、一着は真っ赤、もう一着は真っ白だ。

「お前さんを三十歳にしたのは、これから通夜へ行くためだ。こどもじゃ少々都合が悪かろうと思ったのだ。しかしいくらなんでも、こんなスーツを着て通夜へは行けまい…」

「そうなんだ。お通夜に来てくれるんだ。それはありがとう! でも、こんなお揃いの紅白まんじゅうみたいなおめでたいスーツ着てお通夜へ行ったら、ひんしゅくものだよ!」

「だから、今からこれを真っ黒に塗装する」

「塗装? スーツを?」

「お前さんは『染めQ』という塗料を知らんのか?」

「知らないよ」

「まあいい。スーツだって立派に塗装が出来るのだぞ」

「え~~?」


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