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ちょっと未来をのぞきにいったら

 とにかくそういうわけで、早速ぼくらは未来へ行くことになり、二人でタイムエイジマシンに入り、カーテンを閉めた。

 茶トラ先生はテレビのリモコンみたいなものを持っていて、パチパチとそれを操作して、最後に8・2・4とボタンを押した。

 それから少しして機械がブーンとうなり、今度は鏡の両側にある青い方のランプが光り出した。

 そして何と、機械のカーテン越しに、窓からうっすらと見えていた西日がゆっくりと動き始めた。

 それはどんどん速くなり、やがて機械の外がめまぐるしく明るくなったり暗くなったりした。

 昼と夜がどんどん過ぎているんだと、ぼくは思った。

 そして三十回ほどちかちかしたところで動きが遅くなり、やがて機械は止まった。

「よしよし。八月二十四日に到着だ」

 茶トラ先生はそう言うと恐る恐るカーテンを少し開け、すきまから外をのぞいた。

 実験室は薄暗く、外には誰もいないようだった。

「しめしめ。わしはおらん。わしは八月二十四日からは物理学会に出席中しておるのだ」

 そういうと茶トラ先生はカーテンをがばっと開け、外に出た。

 ぼくも後に続いた。

「だけど茶トラ先生は、物理学会から追放されたんだろう?」

(そのことをぼくは前から知っていた)

「いやいや、わしを追放したのは大学の大バカどもだ。物理学会にはわしを崇拝しとる者もたくさんおるのだ」

「へぇー、そうだったんだ」

 それからぼくらはマシンの外へ出て明かりを点けた。

 時計を見ると夜の八時半だった。

「それじゃちょっと見てくるよ」

「いいか、見るだけだぞ。決して軽率な行動は取るな!」


 茶トラ先生にそう言われ、ぼくは先生の家を出て、庭にぼくの自転車はあるのかなぁ、なんて思って見てみたけれど、やっぱりなくて、それでぼくは夜道を歩いて自分の家へと向かうことにした。

 夜道はあぶないかも知れないけれど、デビルに出くわす可能性は(多分)低いので、こっちの方がかえって安全かも…なんてことを考えながら、とにかくぼくは、てくてくと夜道を歩いた。

 そして家へ着いたら、九時のニュースを見るつもりだった。

 ところでテレビなら、茶トラ先生の家で見たらいいと思うかも知れないけれど、茶トラ先生は「テレビは嘘ばかりだし、くだらん!」とか言って見ないんだ。

 だからテレビがない。(受信料も払っていない)

 それからもしも家に「八月二十四日のぼく」がいて、鉢合わせしたらどうするか?

 でもその日のぼくはすでに、タイムエイジマシンのことを知っているはずだから、ぼくが過去から来たと「ぼく」に説明すれば済むはずだ。

 とにかくぼくがニュースを見るか、「ぼく」に見てもらえばいい。

 いや、いっそ「ぼく」にきけばいい。

 何を? 

 甲子園の優勝校はどこかってこと♪

 とにかくぼくがそんなことを考えているうちに、ぼくの家へ着いた。

 だけど見てみると、ぼくの家の様子がおかしかった。

 門のところに立派なちょうちんが二つも置いてあり、「御霊前」と、怖い雰囲気の字が書いてあったんだ。

 そして玄関前に明かりが灯り、どういうわけかテーブルも置いてあり、そこに誰かが座っていた。

 受付でもしているみたいだった。

 庭には何人かの人影も見えたし。

 いやいや、だけどそんなことより何より、玄関先に『喪中』って書いた紙が貼ってあり、その横に看板のようなものがあり、それには、

 故 鈴木耕介 儀 式場

と、怖い漢字で書いてあったんだ。

 鈴木耕介はぼくのお父さんだ。

 

 何てこった!

 これって、お父さんのお通夜じゃないか!


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