救助用宇宙スワンボート
それからしばらくして、例のケイタイ風無線機がダサく鳴ったので、たまたまひまだったぼくは、さっそく茶トラ先生の実験室へ行った。
するとタイムエイジマシンの隣に、観光地の池なんかにあるスワンボートが置いてあり、そしてその隣に、喜色満面の茶トラ先生が白衣姿で立っていた。
「足こぎ救命スワンボートだ!」
「これどうしたの? まさかどこかの池からかっぱらってきたの?」
「人聞きの悪いことを言うな。払い下げてもらったんだ。そしてトラックをレンタルして、ここまで持ってきた」
「持ってきたって…、ああ、茶トラ先生は怪力だからね。で、これをどうするの?」
「だからこれは足こぎ救命ボートだ。これから開発する」
「開発して、どこへ行って、誰を救命するの?」
「火星だ」
「火星?」
「そうだ!」
「で、誰を?」
「お前さんだ」
「ぼく?」
「お前さんは今から五十年後、火星のオリンポス山の噴火で大変な目に遭う。だからその時に備えて、今から救命ボートを開発するんだ。わしはこれで真っ先に火星まで行き、お前さんたち四人全員を救出する」
「何だって?」
「幸い、このスワンボートは定員五人だから、わしと合わせて五人全員乗がれるんだ」
「だけど、こんなので火星へ行けるの?」
「だからこれから開発すると言っただろう」
「ところで五十年後、茶トラ先生は百十五才だよね」
「そうだ」
「え~、で、生きてるの?」
「だからわしは毎日毎日、毎年毎年の健康診断を受けまくったのだ。百二十歳までだ」
「そうだったんだ!」
「とにかくわしは、それまでにかかりうる全ての病気の治療もしたし、手術の予約もした。だからわしは百二十歳でも、ばっちり健康でいる『予定』なのだ!」
「すげえ!」
「とにかく、これからあと五十年ある。それまでに、きっとこのスワンボートを火星まで行ける救命ボートに改造するつもりだ」
「ええ! こんなものを、火星まで行けるように魔改造するの?」
「魔改造? いいか、わしは証明写真の機械をタイムエイジマシンに仕立て上げたんだぞ。スワンボートを火星行き救命ボートにするくらい…」
「ちょちょいのちょい?」
「そう簡単ではなかろうが」
「そうだよね」
「だが、わしはがんばるのだ。だからイチロウ、お前さんも一生懸命勉強して、がんばって立派な科学者になるんだ」
「うん!」
「そしてもし、本当にオリンポス山が噴火したら、わしはこのスワンボートで真っ先に駆けつけてやる。だから、がんばってってNASAで活躍し、そして火星へ行くがよい」
タイムエイジマシン 火星の危機 完
次回から、書き下ろし新エピソードへ入ります。
乞うご期待!




