第四章
第四章 香と華
「・・・・」
「・・・・」
放課後、校庭の隅で。
沈黙に耐えられなくなった栞は口を開いた。
「晶・・・?」
「やっぱり、なにも知らないんだな・・・」
晶は溜息をついた。
「何・・・?」
「はっきり言っとく」
栞は一瞬背筋に寒気が走るのを感じた。
「うちは、お前を殺す」
時を遡ること、数年。
この学校には、二人の親友がいた。
一人の名は、愛島香。
もう一人の名は恋崎華。
二人は互いを信用し、信頼しあっていた。
しかし、ある日の放課後、香が陰湿な虐めに悩んでいた親友の華を呼び出して言った。
『華を虐めるようにみんなに指示したのは、私だよ』
そうして、戸惑う華にこんな話をして聞かせた。
時を遡ること、十数年。
この学校には、二人の親友がいた。
一人の名は、愛島縁。
もう一人の名恋崎雪。
二人は互いを信用し、信頼しあっていた。
しかし、ある日の放課後、雪が陰湿な虐めに悩んでいた親友の縁を呼び出して言った。
『あたしがあんたを虐めたの』
そうして、戸惑う縁にこんな話をして聞かせた。
時を遡ること、数十年。
この学校には、二人の親友がいた。
一人の名は、愛島紫。
もう一人の名恋崎紅。
二人は互いを信用し、信頼しあっていた。
しかし、ある日の放課後、紫が陰湿な虐めに悩んでいた親友の紅を呼び出して言った。
『あなたを虐めてたのは私』
紫が紅を虐めて、紅は死んだ。
雪が縁を虐めて、縁は死んだ。
香が華を虐めて、華は死んだ。
恋崎紅は。
愛島縁は。
恋崎華は。
自分で、自分を殺した。
そこまで言った時、晶はしっかりと栞を見据えた。
「愛島と恋崎の女は、呪われている」
もう、こんな呪いはうちらの代で終わらせよう。
晶は言った。
「お前を殺すだけじゃ駄目なんだ。もう、隣に祖先の霊が来てる」
その唇は、わずかに震えていた。
「さよなら」
その言葉の意味を捉えた瞬間、栞は気を失った。