表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

天ヲ炸

作者: 織田弥

赤木秦(あかぎしん)…ノリが良くバカになれる。幼い頃から持病持ちで咲にはお世話になっている。

蒼井咲(あおいさき)…馬鹿正直なお人好し。性格は控えめだが根暗なわけではない。花火やイルミネーション、綺麗なものが好き。

白鳥政宗(しらとりまさむね)…底無しに明るい。友情に熱い。いじられキャラ。

緑川環(みどりかわたまき)…元気っこ。良く他の三人に可愛がられる。

黄江俊弥(おうえしゅんや)…四人の保護者的存在。決め事は基本俊弥が主導する。


豪雨の音。

放課後の教室、四人が集まって話している。


政「あー!ジメジメする!こんな天気じゃ俺の純粋無垢な心まで暗くなっちまうよ!」

秦「お前の心は元から純粋無垢じゃないだろ。」

政「秦!?なんて失礼な!俺はいつだって純粋だ!な、咲ちゃん!」

咲「そうだね…雨…全然止まないね…」

政「俺の話聞いてた?」

俊「まぁしょうがない、梅雨の時期だからこう言うこともあるよね」

環「もー!みんなで学校帰り何処か行きたかったのに!」

政「え、無視?無視なの?ねぇ!?」

秦「うーんなんだろう。少し黙って貰ってていいですか?」

政「辛辣ぅ!」

環「政宗君今日も元気だねぇ〜!」

政「お前らのせいだからな?」

咲「秦、体調は大丈夫?辛くない?雨土砂降りだけど…」

政「俺の心配もしてくれよ…」

秦「あぁ、大丈夫だ。ありがとう、咲。」

環「帰りどうしようねー!何処か雨でも楽しめる場所ないかな〜!」

政「あ、無視ね?」

俊「僕だけは一応心配してるからね?」

政「俊弥…まじでいつもありがとう…てかよぉ!こんな雨じゃ移動するのも辛いよなぁ!!」

環「うーん…じゃあ暇潰しに何かしようよー!」

咲「暇潰しって言っても…何かあるかな?」

政「ふっふっふ…!こんな時もあろうかと!」

俊「政宗のその笑顔…なにか嫌な予感がするね」


何かを取り出す政宗


政「俺は暇潰しの道具に、こんな物を持っているのだよ!」

秦「出来上がったものがこちらです。」

咲「そんな料理番組みたいに…」

環「じゃーーーん!!」

政「トランプ!これでポーカーでもしようぜ!」

秦/咲/環/俊「ポー…カー…?」

秦「なんだぁ?それ。」

咲「首につけるやつのこと?」

政「それはチョーカー!」

秦「違うぞ咲。物を閉まっておくやつだぞ。」

政「それはロッカー!」

環「もー二人とも知らないのー!?私知ってるよ!!あれだよね!!トランプの中にニ枚入ってる悪そうな顔してる――」

政「それはジョーカー!誰も知らねぇじゃねーか!!」

秦「でもよ?トランプの中にあるならそれはもう正解と言っても過言じゃな――」

政「過言だよ!何も合ってねぇじゃねーか!」

咲「でも韻は踏めてるよ?」

政「関係ねぇだろ!何が韻は踏めてるよ?だ!お前らはラッパーになりてぇのか!?」

秦/咲/環「どうもありがとうございましたー!」

政「コントしてねぇから!お前らほんといい加減にしろ!」

俊「あはは…息ピッタリすぎて入る隙もないね」

秦「でも、暇は潰せたろ?」

政「おかげさまで疲れたがな!」

環「みんなでお喋りするの楽しいね!!」

咲「ほら、環ちゃんも楽しいって言ってるよ?」

政「なら…許す!」

環「えへへ〜!!」

秦「環にだけ妙に甘いなぁ…」

咲「ほら、政宗君環ちゃんのこと狙ってるから――」

政「狙ってねぇよ!」

秦「あ、もう既に付き合ってたか。」

政「なんでそうなるんだよ!可笑しいだろ!」

環「そんな、政宗君、私のこと嫌いなんだ…」

秦「やぁねぇ、見ました?奥さん?」

俊「環ちゃんのこと泣かすだなんて…」

政「違うそうじゃない!俊、お前までそっち回ったらツッコミきれん!頼むからボケを渋滞させないでくれ!」

俊「あはは!そうだね、ごめんごめん」

秦「全く、しっかりしてくれよ〜?」

政「お前が原因だろうが!ていうか、付き合ってるって言うなら秦、お前の方なんじゃねぇのかよ!?」

秦「は、はぁ!?おいおいおいおい!!さっき散々弄られたからって仕返しかー!?」

政「ち、ちげぇよ!誰から見てもお前と咲ちゃんは付き合ってるようにしか見えねーって言ってんだよ!」

俊「ふふふ、確かにそうだね」

環「え?二人とも付き合ってたの!?私初耳だよ!!」

秦「え!?い、いやいや!そそ、そんなことねぇよ!」

咲「そ、そうだよ!私と秦はそんなんじゃないよ!」

政「そうか〜?いっつもピッタリくっ付いてる気がするが...」

咲「そ!それは秦は体が弱くて私が居なくちゃ困っちゃうから私が居てあげないとって思ってるだけで…!」

秦「そ、そうだぞ!体が弱い俺の為に色々やってくれてるのは凄い感謝してるけど、そんな関係じゃないからな!?」

環「色々って例えば〜?」

政「もしかしてあれか!?お前が学校休んだり早退した時に陰でお前のこと悪く言ってる奴に注意してやってたりするところとかか!?」

環「そんなことがあったの!?咲ちゃん、秦君のことになるとつい止まらなくなるところあるもんね〜!!」

咲「ち、ちょっと環ちゃん!」

秦「ま、まぁ、それもあるな。俺は全然慣れてるのに、秦にはいいところだって沢山あるのに何も知らないくせに悪く言われるのは許せないって言って、自分の為にムキになってくれるところとかもす…」


あからさま恥ずかしそうな咲

それを見てにやける環、政宗、俊弥


秦「って!何言わせてんだよ!危うく変なことまで言うところだったじゃねーか!」

政「何言ってんだ、お前が勝手に喋ってたじゃねーか」

環「あ、咲ちゃんの顔!赤くなってるねー!!」

咲「え!?嘘!そんなことないよ!?」

秦「とにかく!俺は好きとかそんなんじゃ――」

俊「咲ちゃんは好きって言って欲しいかもしれないね?」

秦「な!?俊弥!?お前まで!」

環「ふふふ!へーんなの!」

秦/咲「ちょっと環!/環ちゃん!」

俊「ふふふ、僕は応援してるよ?」

秦「あーもう…!お前らはよぉ…」

政「あー面白い!あ、てか秦お前、今日病院とか言ってなかったか?」

秦「あ、やべ!そうだった!今日検査の日だから遅れられないんだった!行くわ!じゃあなみんな!」

環「ばいばーい!!!」


秦、捌ける。

それを不安そうに咲が見つめる。


政「不安なら追っかけてきな?」

咲「べ、別に不安なんかじゃ――」

環「顔にそう書いてあるけどなー?」

俊「そうだね、如何にも心配してますって感じだね」

咲「う、うぅ。途中で倒れたりしないか心配で…」

政「心配しすぎだと思うけど、取り敢えず行ってきな!」

咲「う、うん。じゃあね!みんな!」

環「じゃーねー!」


咲、秦を追って捌ける。


環「秦君、本当に咲ちゃんのこと好きなんだねー!」

政「お互い様だろ」

環「周りから見たらあんなにバレバレなのにね!!」

政「お互いあそこまで気づかないもんかねー?」

俊「実は内心気付いていたりするのかもね?」

環「告白しないのかなぁ〜!!」

政「勇気がないんだろ、勇気あったらもっと早く付き合ってるだろうよ」

環「私、秦君咲ちゃんカップル見たいなぁ〜!!」

俊「実現はなかなか難しい物があるね。」

環「なにかいいきっかけが起きればいいのにな〜」

政「そうだな…例えば…二人の間に大きな障害が現れ!二人でそれを乗り越える!そしてその先には計り知れぬ大きな愛が…!とかな!」

俊「政宗は意外とロマンチストだよね」

政「意外とってなんだよ!俺がこう言うこと言っちゃ悪いかよ!」

俊「いやいや、そんなことないよ」

環「でも!もし、そんなロマンチックなことがあったら2人ともすぐ付き合っちゃうだろうなー!!」

俊「でも、そんな都合良くは起きないだろうね」

政「だよなぁ…」

俊「まぁ、その時が来るのを暖かく見守るしかないね。あ、雨、止んだみたいだよ?」

政「お!また雨が降り出さないうちに帰るぞ!」

環「政宗君ー!私傘ないから入れて欲しいなー!」

政「しょうがないな!入れてやろう!!」


捌ける二人


俊「僕からしたら、君たち二人もお似合いだけどね…」


俊捌ける。



秦「先生、どうでしたか?…はい、そうですか…わかりました…」



咲「秦、どうだった?」

秦「…」

咲「秦…?聞いてるの?」

秦「あ、あぁ!ごめん!どうした?」

咲「大丈夫…?お医者さんに何か言われたの?」

秦「い、いや!大丈夫だよ!良くなってきてるからこの調子で!ってさ!?」

咲「本当…?」

秦「あぁ、本当だ。心配かけてごめんな。」

咲「…うん…」

秦「本当に大丈夫だからさ!元気出してくれよ、お前がそんなんだと俺まで気が滅入っちゃうから。」

咲「ごめんね…心配しすぎだね…」

秦「いや、いいんだよ、ありがとう。」

咲「うん…」

秦「…あ、そうだ、さっき花火大会のポスター見てさ!」

咲「花火、大会?」

秦「あぁ!咲花火とかイルミネーションとか、そう言うの好きだろ?」

咲「うん…」

秦「だから、政宗達も誘って行こうぜ!」

咲「…わかった、政宗君達にも話しておくね」

秦「おう、楽しみだな!」

咲「うん…」


先に捌ける秦


咲「本当に、大丈夫なのかな…」

秦「咲ー?早くしねーと置いてくぞー!?」

咲「ごめん…!今行くね!」



暗転



環「秦君、どうしちゃったんだろう…」

俊「秦が学校に来なくなってから今日で2週間になるね」

政「咲ちゃん、何か知らないのか?」

咲「ただの体調不良だって、言ってたけど…」

俊「それが、今までとは比べ物にならないものだったら…」

政「お、おい俊弥!」

環「もしかして…命に関わる病気だったりして!」

政「環まで!やめろよお前ら!本当にそうだったら洒落になんないだろ!?」

咲「…」

環「咲ちゃん…?」

咲「今思い返せば、病院について行ったあの日、急に元気がなくなってた…」

俊「その時には何か言ってなかったのかな?」

咲「…うん、良くなってるってだけ…」

政「そうか…」

咲「けど、凄い慌ててて…」

政「これは、裏がありそうだな…」

俊「そうだね、これは本人に一度聞いてみるしか――」

秦「おーっす。久しぶりー。」


秦入ってくる


政「し、秦!?」

秦「どうした?そんなに驚いてよ。」

環「最近、秦君が全然学校に来てくれないからどうしたのかなって!」

秦「あー、ごめんな。めっちゃ体調悪くてさー、本当にしんどかったんだよ。」

俊「今は大丈夫なのかい?」

秦「あぁ、おかげさまでな!」

咲「…」

秦「咲?どうかしたか?」

咲「本当に…大丈夫、なの?」

秦「あぁ、しっかり休んだからな、俺は元気――」

政「嘘つけよ!」

秦「は?」

政「今までお前こんな長く休むことあったかよ、何か隠してるんじゃねぇのか?」

秦「おいおい、心配はありがてぇけど、俺は全然大丈夫――」

咲「前、病院について行った時も凄い焦ってた、何かを誤魔化すみたいに…」

環「たしかに、何かあった時はいつも咲ちゃんが知ってるはずなのに」

俊「その咲ちゃんが何も知らないどころか、何かあったと疑うんだからね…」

秦「ど、どうしたよ!心配かけたのは本当にごめん!けど俺は――」

政「謝罪が欲しいわけじゃねぇ、答えろよ、何か隠してんじゃねぇのか?」

秦「…」

咲「秦…お願い…」

秦「…心配してくれるのは本当にありがとう。けど、本当に何もないんだ、信じて欲しい。」

政「…わかった、信じてやる…だが!何かあったら俺たちに言えよな、水臭いのは無しだ、わかったか?」

環「暗い話はここでおしまい!元気出して行こ〜!!」

秦「あ、あぁ!そうだな、ところで俺が休んでた間の授業のノート、誰か写させてくれないか?」

咲「あ…私貸すよ!」

秦「お、サンキュー!いつもありがとうな!」

咲「ううん、大丈夫、私は好きでやってるから」

政「ん?好きでやってる?」

咲「へ!?あ、いや!私、勉強意外と好きだからさ!?」

環「うそだ〜!本当に好きなのは秦君でしょ〜!?」

政「本当秦はいい彼女持ったよなぁ〜!?」

俊「あはは、そうだね、こんないい子なかなかいないね」

秦「だ、だから!彼女じゃねぇって!」

政「そんな意地張らなくてもよぉー?早く付き合っちゃえよ!」

秦「意地なんか張ってねぇよ!ただ、俺たちはずっと昔からの幼馴染なんだ、そんな感情はねぇってだけだよ!」

咲「…」

俊「咲ちゃんはあるみたいだけど?」

咲「へ!?わ、私だってそういうのは――」

環「ふっふふ!咲ちゃんはほんとーにわかりやすいよね!!」

咲「ち、違うってば!」

政「本当か〜?」


騒ぐ咲、環、政宗


俊「ふふふ、微笑ましいね、そう思わないかい?秦」

秦「あ、あぁ、そう…だ……」


倒れる秦

シルエット


俊「し、秦!大丈夫かい!?」

政「どうした?そんな大きな声で――」

咲「秦!?大丈夫!?」

環「保健室の先生読んでこないと!!」

政「あ、あぁ俺行ってくる!お前らは秦を見といてくれ!」

咲「秦!ねぇ!返事してよ!秦!」



暗転



祭囃子の音。

政宗、咲、環、俊弥が四人で話している。


政「本当に来るのか?あいつ」

咲「来るとは言ってたけど…」

俊「あの日からまた学校頻繁に休むようになったからね…」

環「やっぱり、何か隠してるんだよ!」

咲「私たちにも言えないことだったりするのかな…」

政「わからない…けど、どうにかして、聞き出さなきゃな」

俊「そうだね…ただ四人で問い詰めるようにするのは良くないんじゃないかな」

環「じゃ、じゃあどうやって聞けば…」

政「じゃあよ!俺――」

咲「私が…私が聞き出してみる!」

政「え?咲ちゃんが?でもなぁ、咲ちゃん相手だとあいつのことだから素直に言わない気がするんだよなぁ」

咲「確かに秦のことだから、また誤魔化してくるかもだけど、それでも私、秦に何かあったなら、力になりたいの!」

俊「そっか…」

環「…やっぱり咲ちゃん、秦君のことになると凄い一生懸命だね!!」

咲「へ!?そ、そうかな…?」

俊「ふふ、そうだね」

咲「そんな!俊弥君まで!」

政「ほんと、その想いの強さは誰にも負けないだろうよ!」

咲「やめてってば!恥ずかしいから!」

環「あ、そうだ!!咲ちゃん!咲ちゃんは秦君のどこが好きなの?」

咲「そ!それは!えと…」

政「そうだな!あいつとの話し合い、咲ちゃんに譲ってやるから、代わりに教えてくれよ!」

俊「何げに聞いたことないから気になるね」

咲「えと、なんて言うか、私はずっと昔から秦のこと見てて、秦は学校ではいつも明るくて優しくて…」

俊「そうだね」

咲「けど、学校から一緒に帰ってたりすると、その日の疲れが全部来たように元気がなくって、それ見ると、ほんとは辛くても頑張ってるんだなって思って」

環「うんうん」

咲「それに、これは秦自身がいつも体調悪かったりするからかわからないけど、私が元気ない時に一番最初に声をかけてくれるのが秦で…」

俊「…」

咲「そんな秦の優しいところが好き、かな、軽いかもしれないけどその優しさが私には輝いて見えたの」

政「いい話だなぁ!」

咲「ちょ、ちょっと!」

環「うんうん!好きに軽いも重いもないよ!自信持って!」

咲「ちょ、ちょっと!2人とも!」

政「ごめんごめん!でも、こんなに秦を思ってくれる子がいるんだ、あいつに気づかせてやらねぇとな!」

俊「うん、そうだね」

秦「おーい!お前らー!」

環「あ、秦君来たよ!」

政「とりあえず最初は普段通りに行こう!」


秦、入ってくる。


秦「ごめん!準備に時間かかってよー?」

環「もー!遅いよ〜!」

政「本当だわ!五分前行動って学校で習わなかったのか?」

俊「まぁまぁ二人とも、花火まではまだまだ時間があるんだからさ。」

秦「後でなんか奢るから許してくれ?って、咲?どうかしたか?」

咲「ううん…なんでもない…」

秦「本当か?明らかに元気なさそうだぞ?」

政「あー!それよりも!屋台沢山でてるんだし、早く回ろうぜ!…そうだな、誰が1番うめぇもん持ってこれるか勝負しようぜ!」

環「いいね!やろうやろう!」

俊「ふふ、楽しそうだね」

政「だろうー?あ、秦と咲ちゃんはとりあえず花火見れそうな場所取っといてくれ!後から交代しよう!」

咲「う、うん」

秦「了解」

政「てことで、解散!」



政宗、環、俊弥捌ける



秦「じゃあ、行くか。」

咲「そうだね」


二人、前の三人と逆に捌ける。

また入ってくる。


咲「ここら辺で、いいかな?」

秦「いいんじゃねぇか?」

咲「…ねぇ、秦?」

秦「ん?どうかしたか?」

咲「体調はどう?」

秦「今日か?今日は今んとこ大丈夫だ、いつも心配ありがとうな。」

咲「最近、一人で抱え込んでない?」

秦「…おいおい、また暗い話かよ。」

咲「お願い!真剣に聞いて!」

秦「…」

咲「…秦が思ってるより、周りのみんなは、秦のことを心配してる、私だってそう、政宗君、俊弥君、環ちゃんだって」

秦「わかってる、だからみんなには感謝してるよ。」

咲「違う!」

秦「え?」

咲「私たちが欲しいのは、そんな誤魔化す為の感謝じゃない!」

秦「そんな、俺は誤魔化してなんて――」

咲「私に、秦のことずっと見てきた幼馴染に、そんな嘘通じると思ってるの!?」

秦「…」

咲「今までは秦のためって思って黙って信じてたけど、もう我慢の限界!何か隠してるなら言ってよ!」

秦「…ごめん」

咲「ねぇ、お願い…お願いだから、ね…?」

秦「わかった…全部言うよ…」

咲「…」

秦「今から言うことは全部本当のことだ。」

咲「うん、しっかり聞く、受け止めるね」

秦「…実は、体の方が思ったより悪化してきててさ。」

咲「やっぱり…」

秦「それで、手術が必要らしくて、色々学校休んだりしちゃってさ」

咲「…うん、大丈夫、なの?」

秦「わからない、最善を尽くすって言ってたけどさ。」

咲「そっ…か…」

秦「本当は俺も、言わなきゃって思ってたんだ、けど――」

咲「言えなかったんだよね」

秦「え?」

咲「きっとそれは私たちを心配させたくなかったから」

秦「…バレてたか…」

咲「うん、だから最初の方は黙ってたの、秦には秦の考えがあるだろうし、秦なりに頑張ってるんだって思ったから」

秦「そうだったんだな…」

咲「けど、長い間学校を休むようになったり、いきなり目の前で倒れられたりして、不安になっちゃって」

秦「そう、か…」

咲「うん、確かに気を遣ってくれるのはありがたいよ、けど、私だって、私たちだって秦の力になりたい」

秦「…うん」

咲「私たちはお医者さんじゃないから、体の事は何もできない、けど秦の心を元気づける事はできる、だからさ、頼っていいんだよ?」

秦「…ありがとう…」

咲「確かに、今それを伝えられたことで、動揺してないって言ったら、嘘になる、けど私は、何も言ってくれずにいなくなられる方が嫌だから!」

秦「…」

咲「だから、私に教えてよ、今の秦の気持ち」

秦「…怖いよ」

咲「怖い?」

秦「あぁ、もしうまくいかなかったらどうなっちまうんだろうって考えるとさ」

咲「…うん」

秦「今まで何気なく過ごせてきた日々が、全てがなくなるんじゃないかって思うと」

咲「秦…」

秦「この世から俺って言う存在がなくなったら、どうなるのかなって、いつか咲や政宗、俊弥も環だって俺のこと忘れちゃうんだろうなって考えたくもないのに頭に浮かんできて、それで俺、怖くて!」

咲「…」

秦「俺はまだ死にたくない、生きてたいよ、まだまだ楽しい思い出たくさん作って――」

咲「大丈夫だよ!」


咲の後ろで花火が打ち上がる

咲は花が咲いたように笑う


秦「さ、き…?」

咲「秦の手術は絶対成功するし!もし、秦が居なくなったって私たちの思い出から、心から秦がいなくなる事は絶対にないよ!」

秦「成功するかなんてわからな――」

咲「私にはわかるんだよ!」

秦「なんで…」

咲「私は、秦の1番の味方だから!秦は手術成功させて、また私たちと一緒に笑って過ごせるようになる!」

秦「そう、か…」

咲「うん!秦のことずーっと見てきた私が言うんだもん!絶対に大丈夫だよ!」

秦「…すごいな、咲は、怖くないのか?」

咲「私?怖くない訳ないじゃん、ずっと一緒にいた幼馴染が居なくなった生活なんて想像もできないししたくもない」

秦「…」

咲「でも、私は秦を助けてあげたい、秦の力になりたい、なのに私が弱音吐いてちゃダメでしょ?」

秦「…やっぱり、敵わないな、本当」

咲「でもね?秦、助けたいって思ってるのは私だけじゃないんだよ?」

政「そうだぞ!秦!」


政宗、環、俊弥、入ってくる。


秦「お、お前ら!?いつからそこに!?」

俊「おいおい、また暗い話かよ、ぐらいからかな」

秦「割と最初じゃねーか!」

環「酷いよ!秦君!私たちにこんな大事なこと隠すだなんて!」

秦「…本当にごめん!」

政「まぁそれは一旦置いといて!おい秦!」

秦「な、なんだよ?」

政「勝手に決めつけるんじゃねーぞ!?」

秦「え?」

政「俺らが心配するとか、だから言わない方がいいんだって、勝手に決めるな!俺たちがいつそんなこと言ったよ!」

秦「…」

政「確かに俺らはお前のことを心配するさ、だって俺たちはお前の親友だからよ!」

俊「そうだよ、秦、僕たちはずっと君と過ごしてきた仲間だろう?だから、今更そんなこと気にしなくていいんだよ」

環「うんうん!秦君は一人じゃないよ!私がいるよ!俊弥君も政宗君もそれに咲ちゃんだっている!」

政「お前の仲間はお前が思ってるほどヤワじゃねぇよ」

俊「だから、心配させてよ、迷惑かけてよ」

秦「お、お前ら…」

俊「それにね、秦、手術に失敗したって成功したって秦はいつかは死ぬんだ」

秦「…」

俊「秦だけじゃない、人間は遅かれ早かれいつか死んでしまう、人生という夜空に大きな花火を打ち上げたように綺麗で儚く散っていくんだ」

秦「そう、だな…」

俊「だから、みんな一生懸命に生きているし、その姿がなによりも美しく目に写るんだ」

政「それなのに秦!お前ときたらよくもまぁそんなうじうじ悩んでよぉ!一度きりの人生なんだ、勿体ねぇよ!」

環「秦君の体の辛さは私たちにはわからない、けど、辛かったら私たちがそばにいて支えてあげる!だからさ、私たちと…」

環/政宗/俊弥「今を生きてよ!/ろよ!」

政「ふっ、決まったな!」

俊「まさに阿吽の呼吸だね」

環「うんうん、すっごいかっこよかった!大成功だね!」

秦「…今を、生きる…」

咲「秦、わかった?秦には心強い仲間がこんなにいる、秦なら絶対大丈夫だよ!」

秦「あぁ…本当に、ありがとう」

環「少し元気になった!?」

政「そんじゃまぁ!気を取り直して花火観るとすっか!」

俊「その前に、秦と咲ちゃんの食べたい物とか買ってきてないだろう?」

環「そうだね!行かなきゃだ!」

政「じゃみんなで行くか!」

秦「よーし、食べまくっぞ!」


捌けていく5人


咲「ねぇ、秦!」

秦「ん?」

咲「なんで私が花火が好きかわかる?」

秦「え!?い、いきなりなんだよ!?」

咲「いいからー!考えてよ!」

秦「う、うーん、色が綺麗だから?」

咲「違いまーす!」

秦「わっかんねーよ!いきなり聞かれたってよ!」

咲「私が花火を好きな理由はね?打上花火でも手で持ったりする花火、線香花火でもそうなんだけど、短い時間の中で精一杯光ってるのがかっこよく見えるからなんだだよ!」

秦「そー、なんだな…」

咲「うん!でもそれは人でも同じで…」

秦「結局、何が言いたいんだ…?」

咲「秦はちっさい時からずっと、どんなことにも一生懸命でそれを見てると私まで頑張りたくなって」

秦「そ、そうか?」

咲「うん、ずっと勇気をもらってたの、私はそんな秦が好きなの」

秦「…俺の聞き間違いか…?」

咲「もう!な訳ないでしょ!」

秦「ご、ごめん、いきなりのことで信じられなくて…」

咲「好きだよ!秦」

秦「え!えと!その、俺もさ咲のことが好き――」

咲「ストップ!」

秦「へ?」

咲「その続きは、手術成功させて、秦が元気に戻ってこれた時に聞きたいな」

秦「…わかった、俺、頑張るよ。」

咲「うん!ありがとう、約束だよ?」

秦「あぁ!約束だ。」

咲「これで手術失敗できなくなったね!」

秦「そ、そんなにプレッシャーかけるなよ!」

咲「ふふ、ごめんごめん!それじゃあ、行こうか!」

秦「おうよ」



捌ける二人

暗転



環、政宗、俊弥が三人で集まっている。


政「あー、まじで熱いな今日!」

俊「気温は30度後半にも上るらしいからね」

環「今日は何して遊ぼうね〜?」

俊「相変わらず環ちゃんは元気だね…」

政「そうだなぁー!二対二に別れてテニスでもやるか!」

俊「あれ?それじゃあ一人審判に…て…そうか、秦…はもう…」 



政「くそ!なんであいつが!」

俊「残念だけど、もう過ぎてしまったことだから嘆いたって――」

秦「おい!俺を勝手に殺すんじゃねぇよ!」


秦、咲が入ってくる


政「すまんすまん!ついな!」

秦「全くよー!」

俊「まぁまぁ、秦も晴れて退院できたことだし、どこかでお祝いの会でもしたいね」

環「楽しそう!!私やりたいー!!」

咲「そー言えば、ここら辺に新しいカフェができたとか!なんでもそこのパンケーキが凄い絶品らしくて――」

環「そうなの!?みんなでいこーよー!」

政「たまにはそういうのもいいかもな!」

俊「じゃ決まりだね!」

環「お店まで競争!」

政「最下位はみんなに奢りな!」

俊「ま、待ってくれよー!」

環「咲ちゃーん!秦くーん!早くしないと置いてっちゃうよー!?」

咲「まっててー!すぐ行くからー!」


環、政宗、俊捌ける。


咲「よかったね?秦」

秦「あぁ、ありがとう、咲」

咲「どういたしまして!それより、何か言うことあるんじゃないのー?」

秦「そ、そうだな、咲!」

咲「はい!」

秦「好きだ!俺と…」


おしまい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ