第6話_カナデの剣
「いや、強すぎだろ……」
「あれで本気じゃないのか?」
「マジかよ……」
「あんな強いの見たことねえ…」
周りの餓狼隊のメンツがざわついている。まあ無理もない。あいつは普通の魔導士ではないからの。
「驚いた。まさかここまでとはな」
「ふん、当たり前じゃ。わしのハクは最強じゃからな」
「しかし、魔導士なのに距離をとらないんだな。普通は射程距離を活かしてアウトレンジから撃ちこむのがセオリーだと思うが」
「あいつは呪いのせいで殴る蹴るができないだけで本来は近接型じゃからな。そもそも魔法は補助としてしか使わんしの」
「そうなのか?」
「ああ、あいつの杖は魔術の補助媒体としての機能のほかに、なぎなたやこん棒のように使うことも想定されておる。自分の長所を伸ばすためにカスタマイズしておるんじゃよ」
「ほぅ……」
「カナデ、しゃべりすぎだ」
いつのまにかハクが戻ってきた。
「おっと、すまんのう」
「まったく…。それよりガルムさんよ。このあとはどうする?ほかにやりたいやつがいないならもう解散でいいと思うが…」
「ああ、そうだな。それでは解散…」
「ちょっと待ってくれんか、ガルム」
解散しようとしたガルムを制止する。
「どうした?カナデ?」
「…わしとやらんか?」
「ええ?いや、俺は……」
「なんじゃ、逃げるのか?」
こんな楽しそうなイベント、ハクだけに味わわせるのは我慢ならん。
「いや、そういうわけじゃ……。」
「おいおい、餓狼隊のリーダーは部下の仇もとれんのか?」
「そこまでいわれちゃしかたねえ、上等じゃねぇか。やってやるよ!」
「「「ええええええええ!?」」」
「準備はできておるか?」
「ああ、いつでもいいぜ」
「では、始めるとするかな。審判はイノーバギルド、ギルドマスターのガインが務める。両者異論はないな?」
「問題ない」
「大丈夫だ」
「よし。では始め!!」
「おらああ!!!」
ほうまっすぐ突っ込んでくるか。そのまま上段から振り下ろし…悪くない…が
「ふっ…!!」
ガギイィン!!と金属同士がぶつかり合う音が響く。
「なに!?」
「なかなか大きい剣のようじゃな?だが軽いぞ」
「くそっ!」
さらに斬りつけてくる。今度は下段からの切り上げか。
「はあっ!!」
「無駄じゃ」
<アクセル>
「なにっ!」
一瞬で背後に回り込む。
「<抜刀術・一閃>」
ガアァン!!という音とともにガルムが数メートル飛ばされる。さすがに倒れはしない。
「ぐっ…!!!!さすがは鬼人だな!!小さい身体でよくそんなでけえ刀振り回せるもんだ!」
「いいじゃろ?気に入っておるのじゃ。邏卒桜火。この目と引き換えに手に入れた妖刀じゃよ」
「ちっ!しゃらくせぇ!!!!」
ガルムが大ぶりの攻撃をしてくる。今度は横薙ぎに払うつもりのようだ。
「おっと、そうはいかんぞ」
刀ではじこうとした。が…わしの刀は空を切った。
「!!」
「もらったぁ!!!!」
「なにっ!?」
「<剣技・残影>!」
「うぐっ!!」
ギャリィと不快な金属音が響く。かろうじて防御が間に合った。
ドン!
腹部に蹴りを入れて距離を取る。
「くそっ!」
「まだまだ行くぞぉ!」
一気に距離を詰められ、連撃を浴びる。
「ぬおおおぉ!!」
こやつ、強い!図体のでかさのわりに動きが速い。
「しっ!!」
「ちっ!」
すきを見てカウンターを入れるがかするだけである。
そのまましばらく応酬が続いたが互いに決定打にならない。
「はあ…はあ…。お前ほんとに目クラかよ。見えてねえのになんでそんな正確に合わせられる?」
「才能。と言ったらどうする?」
「はっ、言ってろ」
「まあ、冗談じゃよ。それはわしの特技みたいなものじゃ。戦闘中に相手の呼吸を読み、次に何をするか先読みをしておるだけじゃ」
「そんなことできるわけ……」
「できるんじゃよ。なにも特別なことではない。それに、お主の癖は見抜いたぞ」
「なんだと?」
「お主、力任せに攻撃しすぎじゃ。もっと頭を使うがよい」
「それは挑発のつもりか?」
「いいや、忠告じゃよ」
「へっ、言うじゃねぇか。後悔しても知らねえぞ!」
「お主に負けるようではわしもまだまだじゃからな…。次で決めるぞ。防げるもんなら防いでみせい!」
「なに?……なっ!」
わしはガルムに向かって走り出す。
「なにぃ!?」
「なんじゃ、この程度か?」
「なめんじゃねえ!!」
ガルムが渾身の一撃を繰り出す。
「そこじゃ」
「<剣技・黒炎斬>」
わしが放った一撃はガルムの剣をすり抜け、その巨体を切り裂いた。
「な、んだと……」
「勝負ありじゃ」
「勝者、カナデ!」
「はぁ、はぁ、ふうぅ……久しぶりに骨のある相手じゃったのう…」