第5話_模擬戦
後日、私たちは再び冒険者ギルドに呼び出された。
「あ、この前のバカ狼」
「んだとこのあまぁ!?」
「まあまあお二方とも落ち着いて」
「ふん、貴様らも懲りないな」
部屋には餓狼隊が全員集合していたが奥の机に狼ではない人物が座っている。
「ギルマス、今回は何の用だ。餓狼隊までいるじゃねえか」
こいつはこの街のギルドマスターで名前をガインと言う。
見た目は40代くらいだろうか、筋骨隆々としていてまさに歴戦の戦士と言った風貌をしている。
「実はな、お前たちに指名依頼がある。受けてくれるな?」
「断る」
「おいカナデ」
「どうせつまらん依頼じゃろう。こいつがこう言ってくるものはたいていそうじゃ」
「話だけでも聞いてみよう。たいてい報酬は弾んでくれるじゃないか。なあギルマスさん?」
「それもそうじゃ、話を聞こうじゃないか」
「おぉ……助かる。依頼内容は貴族のお嬢さんの護送任務だ。ここから北にある村に向かってほしい。そしてそっちのギルドにはもうすでに連絡済みだ」
「なるほど、それで私達ですか。しかしなぜ私達に頼むのでしょうか?他にも適任者はいそうなものですが……」
「それなんだが、先方の希望でな。メインの護衛は餓狼隊に頼んでいるが、お嬢様には同姓の護衛をつけたいそうだ。お前さんらなら強さも申し分ないだろう」
「そういうことか。カナデ、どうするんだ?」
「わしは構わん。こやつらは信用できるじゃろうし、何より退屈しないからのう」
「ガルム、あんたはどうなんだい?受けるのか、断るのか」
「俺はあんたらを信頼している。だから受けた。それだけじゃだめなのか」
「十分だよ。しかしまあ一度喧嘩しただけの女をどうしてそこまで信じられるのかねぇ」
「あんたはただの女じゃないだろう?あんたからは何かを感じるんだ。きっとあんたも凄腕の冒険者なんだろう?」
「はぁ、まいったね。降参だ。この依頼を受けるよ」
「おお、そうか!ありがとう。」
こうして私達の新たな旅が始まったのである。
出発は一週間後であるとの事だったので、今日はもう帰ろうかと思っていると─
「ちょっと待てや。白狼女」
「なんだ?」
ミルコとかいったか?この前のバカがまた絡んできた。
「俺は納得してねえんだよ。こんな小娘が俺らと合同だと?ふざけんな!」
「おぬし、まだそんなことを言っておるのか。いい加減諦めたらどうじゃ」
「うるせえ!おい、白狼女。俺とタイマン張れや。俺に勝てたら俺も文句言わずに認めてやるよ」
「ほう?面白い。それなら、わたしが負けたらお前の言う事なんでも聞いてやるぞ」
「ちょ、ちょっと二人とも」
「止めても無駄じゃぞレイラ。ハクもなんだかんだこういうの好きじゃからな」
「いい度胸じゃねえか。その言葉忘れるんじゃねえぞ」
「おまえもな」
「はい、ストップ。ハクちゃん、ミルコくん、ギルド内での戦闘行為禁止ね」
「チッ……」
「むぅ……」
「裏に演習場があるからね~。ヤるならそこでね」
「おお!あそこ使っていいのか!?ギルマス、たまにはいいこというじゃないか」
「まったく、お前らは血の気が多いな。表で暴れられるよりはよっぽどましさ」
「うちのミルコがすまんな、なんでこんなことになったんだか」
「別にかまわんよ。それにガルム、おぬしも内心見たかったんじゃろ?」
「……さすがにわかるか。確かに興味はあるな。あの白狼の嬢ちゃん、ハクだったか?獣人の魔導士は珍しい。どういう風に戦うのか見てみたかった」
「あいつはかなりトリッキーじゃからな。よく見とくといい」
「おーい!準備できたぜ、早く来いや」
「わかった。今行く。じゃあ行ってくるかな」
「ああ、行ってこい。くれぐれもやりすぎるなよ?」
「わかってるよ」
「では、これより模擬戦を始める。相手を戦闘不能にするか降参で勝利だ。審判は俺、イノーバギルド、ギルドマスターのガインが務める。双方異論はないな?」
「問題ない」
「大丈夫だ」
「よし。では始め!!」
「先手必勝!!<アクセル>」
「<ウィンドカッター>」
ミルコは私の魔術をかわしながら突っ込んでくる。そのまま上段の蹴りを入れてくる。
「おらああああ!!!」
「甘いな」
私は杖で受け止める。
「ちっ」
「<ファイアボール>」
「うおっ!くそっ」
至近距離で魔術をぶっぱなす。
「<アクアバレット><アイスニードル>」
「ぐあっ!……舐めんな!!」
「まだまだいくぞ」
「魔術に有利な遠距離戦はさせねえぞ」
「ふん、それはどうかな?」
「なんだと?」
「<アクセル>」
一瞬で距離を詰める。
「<ダークランス>」
杖に闇属性をまとわせた突きだ。威力も高い。
「なにぃ!?」
「おらぁ!」
「うわぁ!」
なんとかガードされるが問題ない。あえて吹き飛ばない程度に加減してある。
「はあっ!」
体勢が崩れたところへ連撃を加える。
「クソがぁ!」
「遅い!」
ミルコもカウンターを入れようとするがすべて受け流す。
「<オーバーヒート>」
「何!?ぐわっ!!!!」
高熱をまとわせた蹴りで吹っ飛ばす。なかなか起き上がれないようだな。
「なんだ、もう終わりか?」
「うるせぇ!まだ終わってねえぞ」
「そうか、ならこっちから行くぞ」
「なにぃ?」
「<アイスバレット>」
「ちょ、ちょっと待て!おい!聞いてんのか!」
「待たねえよ」
ミルコに向かって氷の弾丸が降り注ぐ。
「ちょっ!やめっ!ぎゃあああ!!!」
「そこまで!勝者、ハク!」
「ふぅ、こんなもんか」




