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第3話_討伐

「ちっ、めんどくせえな。多すぎるだろ」

私は目の前のゴブリンを吹き飛ばす。

「カナデ、こっちは終わったぞ」

「こちらももうすぐ終わりじゃ」

カナデが最後の一匹を切り捨てる。

辺りには静寂が訪れた。


「ふう。やっと片付いたか」

「うむ、それにしても数が多いの」

カナデの言う通り、数時間でかなりの数の魔物と遭遇していた。

「ハク、カナデ、大丈夫でしたか?」

レイラが駆け寄ってくる。


「問題ない」

「わしも平気じゃ」

「二人ともかすり傷一つないですね。流石です」

レイラは治癒術師だ。回復役がいないといざと言うときに困るからな。

「それでは、そろそろ日が落ちますし今日はここで野営をしましょうか」

「了解した」

「賛成じゃ」

そうして私達三人はキャンプの準備を始めた。


「さて、テントはハクとカナデで張ってください、その間に食事を作ってしまいます」

「分かった」

私とカナデが設営を終えるとほぼ同時に料理もできたようだ。とてもいい香りがする。

「それではいただきましょう」

まずは一口

「美味しいな」

「当然ですわ!私の作った食事なんですからね!」

満更でもなさそうだ。

実際とてもおいしい。野営なので簡素なものではあるが活力がわいてくる。

「ごちそうさま。とてもおいしかったよ。レイラ」

「ふふん!もっと褒めなさい!」

「ご馳走になったのじゃ。感謝するぞ」

「はい!お粗末様です!」


「ところで明日はどこまで行くかの?」

「そうですねぇ。とりあえず、もう少し奥まで行ってみませんか?」

「ああ、分かった」

そして次の日。

私達は昨日よりもさらに深いところに来ていた。


「これは・・・何かいるな」

「ああ、わしにも分かる」

「どうやらそのようですね」

周囲を警戒しながら進む。いつの間にか野生動物がぱったりと姿を消していた。


「あれは・・・」

前方から大きな影が近づいてくるのが見える。

「どうしました?・・・ッ!!」

「カナデ、レイラ下がっていろ」

現れたのは熊の魔獣。それもかなり大きい。


「カナデ、あいつは何て名前なんだ?」

「確か、グリズリーとか言ったかな。まぁただのでかいクマじゃな」

「なるほど」

「グオオォオオッ!」

雄叫びを上げ威嚇してくる。しかし、妙だ。グリズリーといえばもっと森の深いところに生息しているはずなのだが・・・。


「とにかくやるしかないな」

「うむ、そうじゃな」

私達は武器を構え臨戦態勢に──

「ハク!!」

カナデが私を突き飛ばす。一瞬遅れて私たちがいた場所が熊もろともえぐられていた。


「大丈夫か?」

「ああ、助かった…けど」

見るとカナデの左腕が血に染まっている。どうやら怪我をしたらしい。

「カナデ、腕を見せろ」

「あ、ああ……」

カナデの腕はひどい有様だった。

骨こそ見えてはいないものの、肉は裂け、大量の出血をしている。

「レイラ、カナデの治療を頼む。その間私が引きつける」

「分かりました。任せてください」

「すまない。頼んだぞ」

レイラはカナデに駆け寄り治療を始める。

私はそれを横目に、敵と対峙する。


「まさかこんなのがいるとはな」

私の目の前には巨大なドラゴンがいた。クマの死体を一口で食べてしまった。詳しいことはわからんが魔物が増えたのもこいつのせいだろう。

「なんにせよお前を倒せばその素材が高値で売れる。それに仲間を傷つけた報いを受けてもらう」

杖を構え魔力を流す。


「かかって来い」

挑発するように言い放つ。すると、その言葉を理解したかは分からないが、こちらに向かって突っ込んできた。

「遅いな」

相手の動きを見切り最小限の動きで回避する。

すれ違いざまに魔力弾を何発か撃ち込む。

「ガアァアッ!?」

手応えありだ。相手は振り向き様に爪を振り下ろしてきた。

「そんな大ぶり当たるか」

難なくかわし、後ろに回り込み追撃をする。

「これで終わりだ」


再び、魔力を流し詠唱する。

「風よ、我が敵を切り裂く刃となれ」

「ウィンドカッター」

魔法を発動すると同時に、杖を振る。

「グアアァアアッ!!」

風の刃がドラゴンの首を切り落とす。


「ふうっ」

息をつく間もなく、私は後ろを振り返る。そこにはレイラとカナデの姿があった。

「ハク、すごいです!」

「流石だな」

「ああ、二人とも無事で良かった」

二人と合流し、倒したドラゴンを確認する。

「これは、高く売れそうですね」

「そうだな。これだけあればしばらくは困らないはずだ」

「よし、じゃあ解体するか」

カナデがそう言うと、私達は黙々と作業に取り掛かった。


私達はその後森の奥でドラゴンの巣を見つけた。魔物が増えたのはこの場所にドラゴンが住み着いたからだろう。巣の中には卵がいくつもあった。


私達はドラゴンの討伐に成功したのだ。

そして、町に戻りギルドに報告した。

報酬を受け取り、宿に帰る。


「ふふふ、これでお金には余裕ができますね」

「そうだな」

「ああ、それとレイラ。ありがとうな」

「いえ、私こそいつも助けられてます」

「そうだな。私達は仲間だからな」

「そうですね」

「これからもよろしくな」

「はい!」

こうして私達の依頼が終わった。


────────────

「ハク、いつものやつ買ってきましたわよ」

「おお、ありがとうな」

袋の中には乾燥させた葉っぱが入っていた。魔法薬の一種である。それを手持ちの薬草と混ぜたばこを作る。それをパイプにつめ火を付ける。


「やっぱりこれが無いと落ち着かないんだよな」

「まあ、あなたの場合薬として吸っていますので、嗜好品と言うよりは医療行為に近いですからね」


私は性奴隷だったころに彫られた刺青のせいで肌感覚が異様に敏感になっている。このたばこにはそれを抑える効果がある。

「やっぱ魔法薬は教会から買うのが一番だな。多少高いが信頼できる。なにより味がいい」

「まったく、贅沢な話ですわ」

「まぁな、でもおかげでお前達にも不自由させなくて済む」

「そうですか、なら良いのですが……」

「ん?どうした?」

「い、いえ!なんでもありません!」


「そっか、そういえばカナデはどうしている?」

「カナデさんは、今頃部屋で寝ていると思います」

「そうか、あいつも大変だよな。目が見えないのに前衛だからな」

「私達がサポートしてあげないといけませんね」

今回だってそうだ。あいつは視覚がないから耳や鼻がいい。そのため遠くからのドラゴンの攻撃にいち早く気づけたのだ。

「カナデは頼りになるからな。今後も期待できる」

「はい、そうですね」


フーっとたばこの煙を吐き出す。

「今日は疲れました、少し早いですが私もそろそろ寝ますわ」

「ああ、お休み」

「ええ、お休みなさい」


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