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高校生  作者: 三浦
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2年生7月〜終業式〜

シノとは校門で、蒼馬とは駅前で別れホームに向かって改札を抜けると、「真尋」と背中を叩かれた。



「うわっ!びびった」

「真尋おつかれー」



千尋もちょうど同じタイミングで帰っていたらしい。後ろにいたから気づかなかった。



「暑いー、暑すぎるぅー」


「おい、やめろそれ」



ホームに着いて電車を待っていると、隣で千尋が派手にスカートパタパタし始めたからすぐ止めた。

普通に見えそう。



「だって暑いんだもん、真尋にはわかんないよ」



長ズボンの俺の方が絶対暑い。


けど、それを言うとまた『はぁー?』とかスイッチ入りそうなのでやめといた。

こう言う時の千尋様は刺激しないに限る。



「ね、見て、真尋」

「んー?」

「終業式の日、祭りだわ」


千尋が指差した方を見ると、壁に掲示された広告。


学校の近くの神社での、毎年恒例の祭りだ。

神社の目の前の国道が歩行者天国になって、結構大規模に屋台もたくさん出る祭り。

最後には小さな花火も上がるので、学校の生徒はほぼ全員行くんじゃないかってくらい、みんな行く祭り。



「あー、去年お前が一緒に行く人いないからって俺らが一緒に行ってやったやつか」



くくく、とわざとらしく笑ってやると、千尋は拳骨をちらつかせて笑顔で『黒歴史、思い出させないで?』と言ってきたので、千尋と全く同じ笑顔で返しておいた。



「今年は一緒に行ってくれる友達、いんの?」

「同じクラスの友達と行くと思うけど」

「ならいいけど。ギリギリに『一緒に行こうよー』って泣きついてきても知らんぞ」

「そうならないことを私自身祈ってる」





終業式当日


進学校だからなのか、なんなのか。

終業式の日なのに午後まで授業があって。


学校が終わったのは夕方ではあるけど、祭りの時間には少しまだ早くて。



またしても大量に出た夏休みの課題を教室で蒼馬とシノと少し消化して。



「ほな、祭り行こかー」



屋台が出始めたであろう時間に学校を出た。

シノは誰か他校の女子と行くかなって思ったけど、「今日は2人と行く。俺と祭り一緒に行きたいでしょ」って。

…まあ行きたいからいいんですけど。



「去年は、真尋は千尋ちゃんと一緒に回ってたよな」



蒼馬が歩きながら言う。

去年のこの時期にはもう蒼馬やシノとかなり親しくなってた。


祭りに一緒に行こうと話していたけど、直前に千尋に泣きつかれて、

さすがにほぼ初対面の千尋を蒼馬とシノと一緒に祭りに行かせるのは違うかなってなって、千尋と2人になったんだっけ。



「今年は友達と一緒に行くらしい」

「そうなんや。誰やろ?」



蒼馬は人当たりが良く、めちゃくちゃ顔が広いので、きっと名前を言えば、「あぁ、○○部の子よな?」とか「○○中出身の子やな」とか言ってくるんだけど。



「名前忘れた」



俺たちが電車通学で家が近くないから友だちを家に招き辛いのもあって、千尋は蒼馬とシノのこと知ってるけど、俺は千尋の友達をよく知らない。

顔はわかるけど、名前は繋がらないことが多い。


多分いつもの友達の誰かと一緒に行くんだろうけどって感じ。



「あひゃひゃ、忘れたんかい」



蒼真は笑い、シノは見えてきた屋台の食べ物に夢中の様子だった。



「ま、千尋にどっかで会えば隣にいるだろうし、誰か分かるだろ」

「こんなでかい祭りで人も結構多いのに、会えん可能性の方が高ない?」

「確かに」





とは言ったものの。


まあ双子だからなのかなんなのか。

俺と千尋は性格や見た目こと違えど、好むものは割と似ていて。



「あ。真尋」

「おー」



すぐに屋台の前で出会うことになった。


祭りで食べるもののお決まりメニューが俺にはあって。

千尋と照らし合わせたことはないけど、きっと千尋もそういうのがあって、中身もほぼ同じなのだ。



だって、手に持っているものが同じだ。

それに気づいた相馬が「待って!あひゃひゃ!双子すごすぎん!?」と爆笑していたし、シノは俺の肩を押して千尋の横に並ばせ、ニヤニヤしながら写真を撮ってきた。


おい、千尋。ポーズ決めんな。



「千尋ちゃん、友達は?」



蒼真が聞いて気付く。


確かに千尋は1人だった。



「あぁ、さっき転んで膝擦りむいたから、ベンチに座って待っててもらってる」



その子の分も買って持ってくの。って千尋は買ったものを再び掲げて見せてくるけど、どう見ても千尋好みのものしかない。


千尋にベンチがまだあいているから一緒に食べないかと誘われ、蒼真とシノも了承したので一緒に千尋の友達が待つ場所に向かった。


ベンチが見えてくると、千尋がうちの制服を着た子に手を振る。



「秋!」

「千尋ちゃん…?」



1人で屋台を見にいったはずなのに、4人になって帰ってきたから、困惑している様子。


顔を見たら誰か思い出した。俺も顔と名前を知っている子だった。

岡田秋。陸上部でよく表彰されてるすごい子。



「ほんとやん。膝、擦りむいてるー。結構ひどいやん。洗ってきたら?」



蒼真が岡田さんの膝を見て言う。



「ほんとだ、結構血が出てきたね」

千尋がそう言い切ったのが早かったか、どっちだったか。


普段女子の胸ばかり見ていて、頼まれないと何かしたりしないし自分から誰かに絡みにいったりしないシノが、岡田さんに近寄り、岡田さんの手を引くもんだから。




「え?」



俺も千尋も蒼真も、そして岡田さんも、シノの予想外の行動に驚いた。



「あっちに水道あったから、俺、一緒に行くわ」


岡田さんの手を引いて立ち上がらせ、そのまま水道のある方に歩いていく。



「えぇ……?」



千尋の声はガヤガヤとした人混みにかき消された。



「え、なんでシノ?どういうこと?」



シノたちが去った方から目線を蒼真に向け、頭の中の疑問を吐き出す。



「え、俺もわからん…」



千尋を見ると、少しは驚いたものの、今は空いたベンチに座ってイカ焼きを食べようとしている。



「千尋、シノと岡田さんって面識あった?」

「知らない。でも、待ってたら帰ってくるんじゃん?真尋も蒼真くんも、食べて待ってようよ」



千尋は事の重大さが全然わかってない。


シノは女子に自ら関わりに行くこともないし、特別扱いなんてしたことがない。


教室では基本女子の胸の観察、男子とは一緒に遊ぶしふざけるしバカもするけど、女子に話しかけられたらカッコつけながら胸を見たりクールなふりをしてる。



帰りは彼女と一緒に帰って行く。どんな会話をしているかは不明。


学校の女子と1対1になるようなことは、呼び出しされて告白される時以外見たことがない。


千尋が爪楊枝に刺したたこ焼きを差し出してくるから、それを口で受け取ってもぐもぐしながら、蒼馬に話しかける。



「あれは、どういうことだろう…?」

「分からん…」

「昔の知り合いとか?」

「シノは南中で、岡田さんは確か西中だったから同じ中学ではないなぁ」

「なんでそんなこと知ってんだよ」


中学まで日本にいなかったくせに。



「俺、顔だけは広いんよね」



千尋、俺、蒼馬の順でベンチに並んでしばらくもぐもぐしていたら、『このまま帰る。千尋ちゃんにも知らせて』というシノからのメールが俺と蒼馬に届いて。



「千尋。シノ、岡田さんお持ち帰りしちゃったかも」



かもしれないという事実を千尋に告げると、「えー、今年も私1人!?」と、友達の心配より自分の心配をしてた。



「岡田さんの心配しないのかよ」


「秋?大丈夫大丈夫。膝痛かったけど帰りづらかったなら、帰ってくれた方が安心だし、秋、シノくん推しだからもし何かあったならそれはそれでオッケー。よくないことがあれば連絡くれるだろうから心配してないよ」



嗜めたつもりだったけど、思ったより大人な返事が返ってきて少し感心した。



「千尋ちゃん、大人やなぁ」


蒼真も同意見のようだった。





結局千尋は俺たちと一緒に祭りを楽しみ、帰宅した。


その日の夜はシノから特に連絡はなく。

千尋に確認したけど、岡田さんから連絡も来ていないようだった。





終業式でそのまま夏休みに入ってしまったから、シノに学校で会うことはもちろんできないはずだが、俺たちは用事がなければほぼ毎日集まっているので。



翌日も蒼真の家にとりあえずの課題を持っていくと、シノも着いたところだった。



「シノー。昨日のこと説明しろよー?」



いつも学校外の人と何しているかなど、特に聞くことはしていないが、さすがに昨日のことは不可解すぎたので聞いてみた。


蒼真の部屋でいつもの場所に座って長い脚であぐらをかいて座るシノ。



「あー…一目惚れ?」





『一目惚れ!?』





蒼真と声が重なる。



「ま、まだ何もしてないから。長い目で見て…」

「シ、シノに春がきたー!ちょ!母さん!赤飯!」



蒼真があまりにも慌てるから、グッと肩を抑えて落ち着かせた。



「まあ落ち着け」

「ま、そういうことだから」



どういうことだよ!とは思ったけど、元々自分の話はしたがらないシノだから、話したくなれば話してくれるだろうと言うことで、深く聞くことはやめた。


シノは昼飯として、本当にお母さんに頼んで赤飯を出してもらってて笑った。


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