番外編〜蒼馬の話し方〜
とある日の昼休み。
昼ごはんを蒼真とシノと食べようと弁当を持っていつものように蒼馬の机に集まって食べていると。
「そういえばさ、」
もぐもぐしている蒼馬の方を見ながら、シノが口を開く。
「ふん?」
「なんで蒼馬、訛ってんの?」
…シノがついに聞いた。
俺たちが親しくなったのは、1年生の4月、入学してすぐ。
その時になんか聞きそびれてて、その後は時間が経ちすぎて聞くに聞けなくなってた疑問。
『蒼馬はなぜ訛っているのか?どこの言葉なのか?』
「あー、言ってなかった?」
蒼馬はもぐもぐしながらキョトンとシノを見た。
ちょっと蒼馬のもぐもぐを見て、ごくりと飲み込むのまで見守って。
「俺さ、中学までアメリカに住んでてん」
「え?」
蒼馬の声に反応したのは俺だった。
返事が予想外すぎた。
「あれ、真尋も知らんかったん?」
「いや知らん知らん」
「ずっと英語圏で暮らしててんけど、家では関西弁、外では英語的な感じで。家では両親が訛ってて。父さんが関西、母さんが九州やから、どこ弁喋ってるかは正直分からん。標準語知らんとかいう訳じゃないんやけど、まあこっちが慣れてるし」
蒼馬が言ってからまた弁当を口に入れてもぐもぐする。
「あー、だから国語の点数はクソだけど、英語は先生よりできるんか」
シノも購買のパンをもぐもぐしながら言った。
「クソとか言わんとってー」
蒼馬が笑う。
確かにシノの言う通り。
蒼真は国語(特に古文)が全然できない。漢字も強くはない。
でも、英語はめっちゃ発音がいいし、テストも満点かギリギリ満点じゃないかくらいのレベルでいつも先生と「こうゆう言い回しもあるやーん」とか言い合ってる。
「俺がなんでもできちゃうのは、そういうわけですよ」
蒼真がめっちゃ胸張って言ったけど、すぐに「英語以外は俺の方ができるけどな」ってシノに一蹴されてた。