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ロボロボの休暇

作者: 夜汽車

これから、童話投稿をしていこうと思います。

この作品ではありませんが、冬の童話祭2022にも投稿できればと考えています。


『ROBOT X2は人間のかわりに屋外の掃除をする屋外清掃用ロボットです。』


 これが役所に記録されているロボロボの簡易説明でした。『』内のように本当はROBOT X2(ロボエックスツー)という製品名なのですが、街のみんなからは親しみをこめてロボロボとよばれていました。


 またロボロボはたいへんな働き者でもありました。雨の日も雪の日も嵐の日も休まずロボロボは働き続けたのです。ロボットだからとはいえ、これほど働くロボットは他にはきっとなかったでしょう。そしてそんなに働くのはロボロボに組み込まれたプログラムのせいだろうと、街中のみんなが思っていました。


 ロボロボの基本のプログラムを次にあげますと、


 1、ロボロボの周囲5キロ以内で、ある汚染レベル以上のゴミをサーチする

   (街はほぼ半径5キロ以内でおさまる)

 2、街中に点在するゴミを回収するのに効率の良いルートを割り出す

 3、ゴミを回収しながら移動すると同時に、ロボロボ内部でゴミ処理を行う

 4、以後1、2、3を繰り返しながら街中を巡る


と、このようなプログラムで、ロボロボはある汚染レヴェル以上のゴミがなくなるまで働きつづけるのでした。


 そんなロボロボは街中のみんなに本当に愛されていました。それはきっと街中を移動している間、ロボロボが出会う人々それぞれに、心地よい挨拶をかけてくれるからでしょう。


 ある日の事です。街の人たちはロボロボに休暇を与えようと言い出しました。それはメーデーの集会をきっかけに起こりましたが、このことは遅かれ早かれ、いずれ誰かが言い出すだろうと思われました。それで具体的にどうするかということで、いろんな意見がでましたが、結局ロボロボにクリーンルームを提供するということに意見がまとまったのでした。プログラム上ゴミがないと働かないはずなのでゴミも何もないところへと考えたのです。


 そしてついにロボロボの休暇の日がやってきました。ロボロボは大人子供も関係なく、たくさんの街の人たちに声援をうけながら市長の先導で特設のクリーンルームへと入っていきます。それはまるでどこかの王様でもやってきたかのようでした。

 さてどうでしょう。クリーンルームは期待どうりにロボロボに作用しました。静かなクリーンルームの中にはロボロボの人工知能がサーチしているスゥィーという音がかすかに聞こえていましたが、確かにロボロボがいくらサーチしてもゴミは見つからず、ロボロボは全く動かなかったのです。しかし、休暇であるにもかかわらずロボロボはどこか寂し気にみえました。それはときどきなにか動こうとしては、まわり応答のなさにその動作をやめている。そんなロボロボにさみしさを感じ取る事が出来たからでした。しかしそれも誰かみていたらの話ですが…。


 もし、そのときに誰かが見ていたとしたなら、ロボロボの異常にすぐに気付いたでしょう。しかしこのときばかりはゆっくり休ませようとする、街の人の優しさが裏目にでたのでした。そしてロボロボは静かにその機能を停止したのでした…。


 最初みんなは、何が悪かったのかわかりませんでした。クリーンルームになにか欠陥があったのだろうかとの意見もでました。しかしはっきりした事はわかりません。そこでロボロボのボディを開けてみることになったのでした。


 そして、代表の技師がロボロボのボディを開けました。するとどうでしょう。ロボロボを人工の頭脳の中では、吐き出されなかった会話がロボロボのメモリーをオーバーフローさせていたことがわかったのです。みんなは驚きました。だって清掃用のロボロボが発言を臨機応変につくり出していたのですから。でもそのことで街の人たちはロボロボの親しみやすさの秘密が少しわかったような気がしたのでした。


 幸いなことにロボロボの故障はすぐに直すことが出来ました。細かいメンテナンスの後、ロボロボはまたいつものように街を掃除しだしたのでした。そしてまた休むことなく昼も夜も街で働きつづけるのでした。



 ちょうどその頃から街には新しい習慣ができました。それはゴミを拾うという習慣でした。

とはいえそう簡単には完全にゴミのない街にはなりません。でもロボロボが街の人とゆっくり会話する時間だけは出来たのでした。もしかしたらこうなることをプログラマーは意図していたのでは?と思う人もいましたが、しばらくするとそんな事ははどうでもよい事として忘れ去られました。



 そののち、役所に記録されているロボロボの簡易説明が、以下のように書き換えられたのでした。


『ロボロボは市民といっしょに屋外の掃除を行い、会話を楽しむ友人です。』と…


おしまい。

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