第6話 三つ首ドラゴン襲来
「操っていた?。はて?」
「しらばっくれないで!。あなたがあのバケモノを追いたててた。わたし、見たモン」
「それは誤解じゃな……」
その時、ぼくらの頭上に黒い影がおちた。
「わしはそいつを倒そうと追いかけてきたのじゃから」
ロランのツエがぼくらのうしろ、いや上空をさしていた。
おそるおそるふりむく。
そこに三つ首のドラゴンがいた。
森の木のうえから、首がつきでている。
4階建ての大聖堂より、ぜったいおおきい。たぶん、二十メルトはある。
三つの長い首の真ん中に獰猛な顔の『竜』が牙をむいていた。
だけど、左側の首はたぶんキリンだったし、右側の首は、どうみてもダチョウにしか見えなかった。またもわけのわからん組み合わせ——。
なぜ、爬虫類と哺乳類と鳥類のミックス??。
しかもさっきのクマのカイブツとちがって『アレ』に見えるオチャメさもないっつ!!。
「キマイラじゃ」
「ベクトール。さっきみたいに『ケンジュウ』で倒して!」
アリスがぼくの肩をつかんでゆさぶった。
わがまま勝手きわまりない。
「あんなちっぽけなヤツで、あのデカブツ、倒せる気、まったくしないんですけどぉ」
「なによ。あんた、アリ・トール・パーティーのリーダーでしょ」
うそでしょ。
都合のいいときだけリーダーって——。
ぼくはケンジュウを取り寄せして、フックをひいた。
パン、パン、パン!!。
さっきとおなじように威勢のいい音がした。
でも三つ首のドラゴンにはまったく効いてなかった。
「ほ、ほら、やっぱ無理じゃないか。逃げたほうがいい」
「あ、そ。じゃ、わたし逃げるわ」
そうだね。きみは逃げられる——。
あの逃げ足だ。
でもぼくは——。
「やれやれ……」
ロランがため息をついた。
と、次の瞬間、ひょーーいと空に舞いあがった。そしてそのままキマイラの首まで飛んで行くと、ツエで竜の頭を『コツン』とたたいた。
パァァァァァァァァァァァァァァァァン
それだけで、キマイラのからだが弾けとんだ。
まるでからだのなかでなにかが爆発したように、四肢が四方八方にとびちる。
「ま、こンなもんじゃろ」
空からおりてきたロランは、そう言ってそのまま森の奥へあるきだした。
すごい!!。すごい!、スゴイ!、凄い!。
この子も手放しちゃだめだ。
「ロラン!」
「ぼくらのパティーに加わってくれないか?」
「おぬしらのパーティー?。死ぬほど弱いパーティーにか?。というか、たぶんわしが来なんだったら、ほんとうに死んでるパーティーじゃったがな」
「だから助けてほしい。今はまだぼくらしかいないけど……」
「ふむ。そうじゃのう。おぬしの不可思議なスキルに興味があるし、わしのいたパーティーは、先ほど全滅したところだからのう。まぁ、いいか」
「全滅?。全滅ってどういうことぉ?。ロラン、きみほどの力を持っているメンバーがいるっていうのに、なぜ全滅?」
「そりゃ、わしが『専守防衛』の誓いをしておるからな」
「専守防衛の……誓い?」
「そうじゃ。じぶんたちが手をだされてからじゃないと、こっちからは仕掛けない、という誓いじゃ」
「ちょ、ちょっと待ってぇぇぇ。全滅したんですよね」
「ま、今回は最初の一撃でみんな死んでしもうてな。まぁ運がわるかったわい」
あぁ、なるほど、そりゃ……
ーーーーーじぇねぇし!!。
なに、これ、チョー使えないンですけどぉ。
「どうしよう。アリス」
「ベクトール。安心して。最初の一撃さえ、喰らわなければいいンでしょ」
「うん」
「あたし、逃げ足だけは、だれにも負けないから」
あんただけな!!。