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異世界心霊奇譚 第三話 異世界召喚の勇者たち 2

 田中かずやは地球という星の『日本』という国で、高校生と呼ばれる学生だったということだった。その星には剣も魔法もなかったが、かわりに魔法のような機械を作りだし、空を飛んだり、遠くのひとと話をしたり、火の魔法を使ったりしていたという。

 田中もそんな魔法のような機械に囲まれて、不自由のない学生生活を送っていたらしい。

 

 だが、なんの前触れもなく、それは起きた——

 いつものように授業を受けている時、突然クラス全員の頭のなかに、何者かが語りかけてきた。


『あなたがたを勇者として召喚します。最強勇者となって、どうか魔王を倒してください』


 当初、生徒たちは意味がわからずざわついていた。

 が、耳をろうするような地鳴りがしたかと思うと、ふいに窓の外に見慣れない風景が現われた。

 室内はパニックになったが、やがて自分たちが校舎ごと、異世界に飛ばされたと認識するようになった。おかしなことに、校舎がまるごとあるにもかかわらず、自分たちのクラス36人以外の生徒は、どこにも見当たらなかった。さきほどまで教壇に立っていたはずの、先生もいなかったという。



「召喚されてきたときに、ぼくらはひとりひとり、スキルや魔法をひとつづつ授かってたんです」

「全員にですか?」

「ええ。そうなんです。そりゃ、みんな浮かれましたよ。マンガやアニメでみる『選ばれし者』になったんですから」

「マンガ? アニメ?」

「ああ、失礼。まぁ、空想の世界の主人公になれた、ということです」

「なるほど。それはたしかに興奮しますね」


「でもね。強力な武器を授かったのに、ぼくらは校舎から一歩も出られなかったんです」

「出られなかった?」

「ええ、授かったどんなスキルや魔法を使ってもです」


「では、田中様はどうやってこちら側にでてこられたのです?」


 田中は上半身を前にのりだして、ひそひそ話でもするように声をひそめた。

「ルキアーノさん、『蠱毒(こどく)』って知ってますか?」


蠱毒(こどく)? いや、知りません」


「ぼくらの星のある国で行われていた呪術で、『入れ物の中に大量の生き物を閉じ込めて共食いさせて、最後に残った一匹を神霊として(まつ)る』っていうものなんですけどね……」

 田中は嘆息するように言った。

「召喚されてきたぼくらは、まさにこの蠱毒(こどく)だったんです」


「は?」


「与えられた能力を使ってお互いを殺し合い、最後に残ったひとりだけが、勇者としてこの世界の魔王と戦う権利を得ることができたんです」

 

『お互いに競いあってください。最後にひとり残った者が勇者となります』

 全員が能力を得て、浮かれているさなかに、そのアナウンスが頭に響いたという。



 ルキアーノは唖然とした。

 校舎という限られた建物内で、36人の友人同士が殺し合った——?



「殺しあった……のですか……?」

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