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異世界心霊奇譚 第三話 異世界召喚の勇者たち 1

 わたしどもとは文化も文明を異なる世界から、神のいたずらで召喚されてきた勇者がいることを、みなさまはご存知でしょう。

 巧みに剣をあやつり、多彩なスキルと、おそろしいほどまで強力な魔法をもつあの勇者ですよ。あの勇者がどうやって、勇者たるかご存知でしょうか?

 魔王にたちむかうあの凛とした勇気が、どこから湧き出るのかを知れば、みなさまがたは勇者にたいして、ちがう感想をいだくことでしょう


「ルキアーノさん、いったいぼくになんの用なんです?」


 ソファに座るなりその男は、こちらを値踏みするような目をむけてきた。

「情報屋って聞いてるけど、ぼくはなんの情報も持ち合わせちゃいませんよ」


「勇者|田中かずや様……」


 ルキアーノは落ち着きを感じさせる、低いトーンで彼の名前を呼んだ。これまで男や女だけでなく、亜人さえも信用させてきた、ルキアーノ自慢の美声だ。


「よしてくださいよ。ぼくはもう引退した身ですよ。それに勇者なんて呼ばれるほど、活躍しちゃあいませんし……」

「なにをおっしゃいます。魔王の三大軍師のルシフェルドを倒して、右腕と呼ばれる元帥ベルゼルルをも葬った方が」


「でも魔王は倒していない」


 田中はわざとらしく肩をすくめてみせた。

「途中で放りだしちゃったからね」


「ええ、たしかにそうですが、この世界ではいまだにあなたは勇者ですよ」


「で、なにを聞きたいんです?」

 田中は口元がゆるんだ様子で尋ねてきた。こころなしか気分をよくしたようだった。


「はい……」


「勇者田中様、あなたには異世界から召喚された、別世界の人間という噂があります。神のような存在によって、無理やりこの世界に連れてこられて、あらゆる高等スキルと、賢者級の強大な魔法を与えられたと……」



「だれから聞いたんです?」

「田中様、それはご勘弁を。わたしたち情報屋はソースが命で……」


「バイアスだろ?」

 田中は意地悪げな笑みを口元に浮かべて言った。


「ぼくがパーティーを解散することを、彼はずいぶん怒っていたからね。腹いせ……いや……自分のパーティーを作るって言っていたから……たぶん、情報を売・っ・た? そうだろ?」

 

 ルキアーノは内心びくりと震える思いだったが、そんなことはおくびにも出さず、落ち着き払った声で答えた。

「ソースは明かすわけにはまいりません」

 田中はうれしそうに、にんまりと笑いながら、鼻をならした。


「はん、バイアスはずいぶんよい取引きをしたのだろうね。パーティーの起ち上げ金の足しになったのなら、ぼくもわるい気はしない。彼にはずいぶん助けてもらったからね」

「そうですか? 田中様のパーティーは、ほぼあなたが活躍した、と聞いておりますが?」


「まぁね…… だけどひとりでパーティーを名乗るのも、格好悪いだろう? それにぼくひとりだと、なんの苦難もおとずれないし、ちっともピンチに陥ったりしない。つまんないじゃないか」


「ま、まさか……そんな理由でパーティーを……パーティーを率いていたのですか?」


「そうさ。きみの持つ情報では、ぼくは異世界から来た勇者なんだろ? それくらい圧倒的な力をもっていても不思議じゃないはずだ。そうだろ?」

 田中はルキアーノの目を覗き込むようにして言った。


「その情報を高く買いたい、という方がいらしゃいましてね」


「へぇー、変わった趣味の方がいるもんですね」

「まぁ……」


「ずいぶんいいお金になるんでしょうね」

「そりゃあ、もちろん……」

「あなたのそのだぶついた身体をみたら、すぐにわかりますよ」

 ルキアーノは自分の腹に目をやった。たしかに連日の酒宴がたたって、でっぷりとしてきているのは確かだ。

 彼は苦笑した。

「まぁ、ちょいとした贅沢をするくらいは、稼がせてもらってます」


「じゃあ、謝礼もはずんでもらえそうだ」

「はい。それはもちろん。破格の金額をご用意させていただいております」

 ルキアーノは勇者田中の前によどみない仕草で、革製の巾着袋をさしだした。

 田中はそれを興味なさそうに持ちあげて、一、二度上げ下げして重さを確認すると、室内をみまわした。


「盗み聞きされるような心配はないですよね?」


「ご安心ください」

 ルキアーノはとびっきりの美声で答えた。 

「この場所は王族も利用する隠れ家でしてね。盗み聞きどころか、わたくしと田中様がこの部屋にいた証拠すら残りはしません」


「ずいぶん抜かりがないですね」

「第一線で活躍する情報屋は、これくらい細心の注意をはらうものです」



「で、どこから話せばいいんです?」

 田中が椅子の背もたれに深くからだを沈めながら言った。

 

 ルキアーノはほくそ笑みそうになるのを抑えて、さりげなく巾着袋を田中のほうに押しやると、机の上に帳面をひろげた。


「では、勇者田中様がこちらに召喚される前、あなたさまがいらした異世界の話から、お聞かせ願えますか?」



「ああ……いいですよ」

少しでも

「面白い!」

「続きが気になる!」

「更新がんばって!」


と思ってくださったら、

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