第27話 信じられない光景
ぼくらはケンジュウを構えると、ワーラットにむけて発砲した。
パン!。
はい、一匹目——。
パン!、パン!。
二匹目、三匹目——。
パン!、パン!、パン!、パン!、パン!、パン!、パン!、パン!——。
ばたばたとワーラットが倒れていく。
しかも一発で——。
ずうたいがデカイので、撃ち損じもすくない。
剣だと通らない厚い毛も、まぁ……、まったく問題ない。
ぼくは、ぼくらのまわりを取り囲んでいるワーラットを——。
アリスは洞穴からでてくるところを狙いすまして——。
そして腕利きのパケットは、崖の上のいるやや離れた場所のやつらを撃ちまくった。
ワーラットはおもしろいように、倒れていった。
あたりに硝煙と焦げ臭い臭いがたちこめはじめる。
盗賊団の連中は、あんぐりと口をあけていた。
まぁ、自分たちが殺そうとしていた連中が、とんだ武器を隠し持っていたんだから当然だ。
クランツェは剣を構えるのをわすれて、こちらに見入っていた。
自分の剣でも手こずった敵を、いとも簡単に倒しているのだから驚くはずだ。
シノビ・スレーヤーたちは一応、防戦の布陣を崩さずにいた。
が、彼らの驚愕の様子はよくわかった。目しか見えていないのに、その目がこっちがドン引きするほど、おおきく見開かれていた。
子供や、か弱そうな若い女が凶暴な猛獣を、手ぎわよく処分していく様は——。
プロのアサシンとしちゃあ——、たぶん、おもしろくないはずだ。
たぶん、20分くらいは撃ちまくっていた、と思う。
あたりは煙っていてよく見えなかったけど、うごいているワーラットはいないようだった。
「ヘタくそだな、ベクトールは!」
撃ち終わると、いの一番にパケットがそう叫んだ。
「そういうなよ、パケット。これでもほぼ当たったんだよ」
「ブーー。頭とか心臓を一発でぶち抜いてないじゃん。アリスのほうがうまかったぜ」
「あ、いや……。まぁ、そうだけど、アリスは洞穴から出てくるとこ、狙ってンだから楽勝じゃないか」
「あら、ベクトールったら、女の子にハンデもくれないの?」
「いや、そーいうわけじゃない……けど……」
「あの〜〜」
盗賊団の頭目がおずおずと声をかけてきた。
「あの、それって……」
「あぁ、これ。これって簡単になんでも殺せる『ケンジュウ』っていうレア・スキル……」
ぼくは頭目の頭に照準をむけた。
「で、だれが、ぼくを暗殺しにきたって言ってたっけ……」
うわぁぁぁぁぁ——。
じつに悪党らしい悲鳴をあげながら、盗賊団は森のほうへ一目散に逃げていった。
「ベクトール殿。ありがとうございます」
クランツェがぼくの前にひざまずいた。
「あなたさまがいなければ、わたくしは命を落としておりました」
「いや、べつにそんなにかしこまらなくていいよ」
「その『ケンジュウ』というスキル、わたくしははじめて見ました。あまりの威力にこのクランツェ、不覚にも呆然としてしまいました」
「ま、このワーラットとは相性がよかっただけですよ。じつを言うとこいつはデカイ怪物には、あまり効果がないんだ」
ぼくはこちらをじっと見ているシノビ・スレーヤーのほうへ近づいた。
さきほどのワーラットとの戦いで、全員がどこかしらのケガをしていた。深手をおっている仲間がひとりいて、その治療にかかりきりになっている。
顔をかくしているのでだれが、だれやらわからない——。
ぼくはこちらに鋭い目をむけているシノビ・スレーヤーに言った。
「きみらもぼくらのちからを見たよね。わるいけど、きみらには殺されない」
「まさか、これほどのレアスキルがあったとはな……」
「わるいね。4000万ボゾン、手に入れそこねて」
「だが、その『ケンジュウ』というスキルの弱点も知れた。大きな怪物にはきかぬのだな」
と、そのとき、地面がまた揺れた。
さきほどのような地鳴りじゃない。
まるで地震のような、地響き——。
ドーーーーーン。
崖の上に、土柱があがった。
そこに20メルトはある、大型のワーラットが現われた。




